ジロ・デ・イタリア：第9ステージ速報 グッビオ→シエナ

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田 健一です。

さて、皆さんも注目しているであろうジロ・デ・イタリア。今年の大会も、中盤戦に向けていよいよ目が離せない展開になってきました。特に、明日迎える第9ステージは、例年とは一味違う、いや、二味も三味も違う、非常に興味深いコース設定となっています。私もイタリアの地で、このステージの雰囲気を肌で感じながらレポートをお届けします。

ジロに現れた「白い道」の誘惑

日曜日の第9ステージは、グッビオからシエナまでの181km。この区間と聞けば、ピンと来る方も多いはずです。そう、春のクラシックレースで絶大な人気を誇るストラーデ・ビアンケを彷彿とさせるコースなのです。まさに、ジロの中に突如として現れた、もう一つのクラシックレースと言っても過言ではないでしょう。

トスカーナ地方の美しい丘陵地帯を駆け抜けるこのステージは、一見すると牧歌的な風景が広がっています。しかし、その美しさとは裏腹に、選手たちを待ち受けるのは「白い砂利道」、そう、「sterrato（ステッラート）」と呼ばれる未舗装路です。彼らのテクニック、そして何よりもメンタルが試される、過酷な一日となるでしょう。

砂利道（グラベル）セクターを徹底分析

今回のステージには、合計で約29kmに及ぶ砂利道区間が設定されています。これが勝負を分ける最大のポイントとなることは間違いありません。特に注目すべきは、レース終盤に待ち構える4つの主要セクターです。

まず、ピエーヴェ・ア・サルティ（8.0km、最大勾配11%）、そして2025年大会で新たに登場するセッラヴァッレ（9.3km、最大勾配11%）。これらのセクターは距離が長く、集団が分断される可能性を秘めています。さらに、お馴染みのサン・マルティーノ・イン・グラニア（9.4km、最大勾配12%）が選手たちを苦しめるでしょう。クレテ・セネージと呼ばれるトスカーナ特有の丘陵地帯に位置するこれらのセクターでは、急なアップダウンと視界の悪さが、落車やメカトラブルのリスクを高めます。

そして、最もドラマチックな展開が予想されるのが、ゴールまで残りわずか6.5km地点から始まるコッレ・ピンズートです。わずか2.4kmの短いセクターですが、最大勾配は驚異の15%！ここは、昨年のストラーデ・ビアンケでPogacarがライバルを引き離し、独走勝利を飾った場所でもあります。記憶に新しいあの激闘が、ジロの舞台で再現されるかもしれないと考えると、胸が高鳴りますね。

シエナ、そしてピアッツァ・デル・カンポへ

コッレ・ピンズートをクリアしても、ステージは終わりません。シエナの街に入ると、選手たちを待ち受けるのは、これまたストラーデ・ビアンケでお馴染みの激坂、ヴィア・サンタ・カテリーナです。最後の500mで最大16%という急勾配の石畳は、すでに疲労困憊の選手たちの脚に容赦なく襲いかかります。ここで最後の力を振り絞れるかが、フィニッシュラインでの明暗を分けるでしょう。

そして、フィニッシュは世界遺産にも登録されているシエナの美しい広場、ピアッツァ・デル・カンポ。独特の扇形の石畳が敷き詰められたこの広場でのフィニッシュは、他のレースでは決して味わえない特別なものです。テクニック、パワー、そして何よりも度胸が求められるこのステージフィニッシュは、まさにオールラウンダー、特にクラシックハンタータイプの選手にとって最高の舞台と言えるでしょう。

このステージは、総合争いを大きく動かす可能性を秘めています。白い砂利道の上で、いったいどんなドラマが生まれるのか？有力選手たちの走り、そして彼らの表情から、私は明日も目が離せません。皆さんもぜひ、画面越しに選手たちの激闘を見届けてください。