WE Wuyts氏、ログリッチを評価も「巻き返しを見たことがない」
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ログリッチの真価は劣勢でこそ問われる？ 名物解説者が指摘する「巻き返しの経験不足」
ジロ・デ・イタリアは灼熱のイタリアを北上し、早くも中盤戦に突入しました。個人タイムトライアルを終え、総合成績争いは新たな局面を迎えています。このタイムトライアルで、グランツール覇者であるプリモシュ・ログリッチは持ち前のTT力を見せつけ、タイムを縮めることに成功しました。しかし、マリア・ローザを着用するイサーク・デルトロ Toroや、強力なライバルであるフアン・アユソ Pesqueraに対して、まだ差をつけられている状況です。果たして、彼はこの劣勢から巻き返し、頂点に立つことができるのでしょうか？ ここで、ベルギーのサイクルロードレース界でその辛口ながら的確な分析で知られる名物解説者、サンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Wuyts氏の興味深い見解をご紹介しましょう。彼の言葉は、ログリッチという選手の知られざる一面、あるいは脆さすら示唆しているように私には聞こえるのです。
タイムトライアルで挽回も、総合首位とは1分18秒差
ピサへの個人タイムトライアルは、総合上位陣にとっては重要なタイム差を生む機会となりました。プリモシュ・ログリッチはここで力強い走りを見せ、クラスマン（総合系選手）の中では最も良いタイムを記録しました。これは彼のTTスペシャリストとしての能力を改めて証明するものだったと言えるでしょう。しかし、総合成績リストを見れば、そのタイム差はまだ十分に縮まっていないことが分かります。現在、ログリッチはトップのイサーク・デルトロ Toroから1分18秒遅れの総合5位につけています。そして、最大のライバルと目されるフアン・アユソ Pesqueraに対しても、53秒のビハインドを負っています。もちろん、ジロはまだ先が長く、山岳ステージがいくつも控えていることを考えれば、このタイム差は決して絶望的なものではありません。しかし、ログリッチがこれまでのグランツールでどのように勝利を重ねてきたかを振り返ると、ある傾向が見えてきます。
名物解説者サンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Wuyts氏の指摘
その傾向について、サンミシェル・プレフェンスホーム・オベール93 WE Wuyts氏はポッドキャストの中で非常に興味深い指摘をしています。「ログリッチが、一見して負けそうなポジションから巻き返すことに成功したのを、皆さんはこれまでに経験したことがありますか？」彼はそう問いかけます。そして、「ログリッチは常に、特に彼が勝利した4度のブエルタでは、トップポジションからレースを進めていました。しかし、戻って打ち返す、カウンターを仕掛けるといった動きは、私は彼に一度も見たことがありません」と断言するのです。これは非常に示唆に富む言葉だと私は思います。ログリッチの強さは、圧倒的な力でライバルをねじ伏せること、あるいは不利な状況に陥る前に主導権を握ることにあったのかもしれません。しかし、一度劣勢に回った時、彼は本当に泥臭く、粘り強く、そして何よりも大胆に逆転を狙うことができる選手なのでしょうか。
グラベルステージでの「臆病」な姿
Wuyts氏はさらに、先日のシエナでのグラベルステージを振り返り、ログリッチが見せた「臆病」な姿に言及しています。「まるで我々がそうなるように呼び込んでいるかのようだ。あのシエナへのステージでは、彼は臆病者になっていました」と、手厳しい評価を下しています。そして、その時のログリッチの様子を具体的に描写しました。「自転車に乗っている時の彼の姿勢を見れば分かります。脚が少し開き気味になる。左右をきょろきょろ見回す。そこから不安が飛び散っているのです」。これは、私が特派員として現場で多くの選手を見てきた経験からも、非常に共感できる描写です。選手のわずかな身体の動きや視線、声のトーンには、その時の心理状態が如実に表れることがあります。シエナのグラベルという特殊な状況だったとはいえ、あの時のログリッチから自信や落ち着きが感じられなかった、というのはWuyts氏だけでなく、多くのファンや関係者が感じたことかもしれません。
それでもログリッチを総合優勝候補から外せない理由
Wuyts氏はログリッチのそうした一面を指摘しつつも、「いやいや、彼は粘り強い男ですよ」と、彼を総合優勝候補から完全に外すことには否定的です。確かに、これまでのキャリアで彼が見せてきたタフさ、そして何よりもグランツールで3度も頂点に立った実績は伊達ではありません。タイムトライアル後、ログリッチ自身も「残りの厳しいステージに向けて少し回復することが自分には求められている。選択肢はない、ここにいる以上、前に進まなければならない。まだ多くのことが起こるだろうし、ベストを尽くすだけだ、それほどシンプルなことだ」と語っています。この言葉には、多くを語らずとも、内に秘めた闘志と、どんな状況でも諦めないというプロフェッショナルとしての覚悟が滲み出ているように感じられます。
ジロはまだ後半戦を迎えていません。山岳ステージが本格化すれば、総合成績争いはさらに激化するでしょう。Wuyts氏が指摘する「劣勢からの巻き返し」という課題に、ログリッチがどう立ち向かうのか。彼の「粘り強さ」が、不安を乗り越える力となるのか。そして、マリア・ローザを守るイサーク・デルトロ Toroや、虎視眈々と逆転を狙うフアン・アユソ Pesquera、さらにはサイモン・イェーツやアントニオ・ティベーリといった強豪たちが、どのような戦略でログリッチを迎え撃つのか。今後の展開から、一瞬たりとも目が離せません。
