ジロ・デ・イタリアのスペイン勢：ベローナの歓喜、ビルバオの闘志、アユソとランダの苦戦

2025年ジロ・デ・イタリア：スペイン勢の明暗、ベローナの輝きとエースたちの試練

2025年のジロ・デ・イタリアは、スペイン勢にとってまさに明暗が分かれる大会となりました。総合エースとして期待されたフアン・アユソとミケル・ランダが相次いでリタイアを余儀なくされるという、多くのファンにとって衝撃的な展開。しかし、その一方で、カルロス・ベローナが見せたステージ優勝の輝きや、ペリョ・ビルバオの不屈の闘志は、我々の心に深く刻まれましたね。果たして、彼らはこの「ローザのレース」で何を学び、次なるグランツールへと繋げていくのでしょうか。

闘志のペリョ・ビルバオとコフィディスの苦戦

バーレーン・ヴィクトリアスの一員として、ペリョ・ビルバオは今大会も「戦士」の異名にふさわしい走りを見せてくれました。今年のジロは、逃げ集団がゴールまでたどり着くのが難しいステージが多かったにもかかわらず、彼は数多くの逃げに乗り込み、その存在感をアピールしましたね。総合30位という結果は、チームメイトのダミアーノ・カルーゾが総合5位に入ったチームの中で、彼がアシストと逃げの双方で貢献した証と言えるでしょう。特に第19ステージでは、カルロス・ベローナと共に逃げに加わるなど、その戦闘意欲は最後まで衰えることはありませんでした。彼のような選手がいるからこそ、レースは単調にならず、常に予測不能な面白さを秘めているのです。

一方で、コフィディス勢は今大会、全体的に苦戦を強いられました。ヨナタン・ラストラは第3ステージで19位に入るのが最高の成績で、総合65位。セルヒオ・サミティエルも第8ステージの25位が最高で、総合52位。チーム全体としてステージ優勝を飾れなかったのは、彼らにとっても大きな課題として残ったはずです。グランツールという舞台で勝利を掴むことの難しさを改めて感じさせられる結果となりました。

ベテランの意地と新世代の台頭

イネオス・グレナディアーズのジョナタン・カストロビエホは、今回のジロで引退を発表しましたね。10回のツール、5回のジロ、5回のブエルタ。長きにわたりトップレベルで活躍し、特にタイムトライアルスペシャリストとして、そして献身的なアシストとしてチームを支え続けた彼のキャリアは、まさに「プロフェッショナル」の一言に尽きます。最終的に総合61位という結果でしたが、第19ステージで21位に入るなど、最後のジロでもその存在感を示してくれました。彼の引退は、一つの時代が終わりを告げるような、どこか寂しさも感じさせる出来事です。

そんな中、今大会のスペイン勢で最も輝いたと言えるのが、Lidl-Trekのカルロス・ベローナでしょう。彼のチーム、Lidl-Trekは今大会、総合争いではなくステージ優勝に徹底的にフォーカスするという明確な戦略を持っていました。そして、それは見事に成功したのです。マッズ・ピーダスンが序盤から大活躍を見せ、その勢いをベローナが引き継ぎました。アジアーゴで独走勝利を飾った第14ステージの走りは圧巻でしたね！逃げからアタックし、後続を振り切っての勝利は、彼のコンディションの良さと勝負勘の鋭さを物語っていました。さらに、山岳ステージでも逃げに乗り、総合54位、そして山岳賞部門で5位に入るなど、そのオールラウンドな才能を遺憾なく発揮しました。彼こそが、今大会のスペイン勢における最高のサプライズだったと言えるでしょう。

モビスター チームにとっても、今大会は厳しいものとなりました。ヨン・バレネチェアは逃げに絡むことで存在感を示そうとしましたが、最高で22位。総合も92位に終わりました。エシュボルン・フランクフルトでの3位という好成績を引っ提げての初ジロ参戦だっただけに、彼自身も悔しさが残る大会だったかもしれません。ベテランのアルベルト・トレスは、今回が5回目のジロ参加。エネル・ルビオやナイロ・キンタナといったリーダーたちを支える役割を担っていましたが、彼らも期待通りの活躍ができなかったため、トレスもその持ち味を十分に発揮する場面は少なかったように見受けられます。総合127位という結果は、彼の経験を考えると物足りなさを感じるかもしれませんが、チームの状況を考えれば致し方ない部分もあったでしょう。

期待と試練のエースたち

今大会のスペイン勢で最も「もしも」を考えさせられるのは、UAEチームエミレーツ・XRGのフアン・アユソとAGインシュランス・スーダル チーム Quick-Stepのミケル・ランダでしょう。

フアン・アユソは、開幕ステージでの小さなトラブルを乗り越え、徐々に調子を上げていきました。そして、第7ステージのタリアコッツォでの独走勝利は、まさに彼のポテンシャルを世界に見せつける最高の瞬間でした。しかし、その後の「ストラーデ・ビアンケ」のような未舗装路区間を含む第9ステージでの落車。膝の痛々しい傷は、彼がどれほど苦しんでいたかを物語っていました。タイムトライアルではよく耐えましたが、終盤に集中した厳しい山岳ステージで遂に力尽き、第18ステージでリタイア。虫刺されという不運も重なり、まさに満身創痍でした。「もしあの落車がなければ…」「もし虫刺されがなければ…」と、多くのファンが彼の完全な走りを見られなかったことを残念に思ったに違いありません。彼はまだ若く、この経験が必ずや彼を強くするはずです。

そして、ミケル・ランダ。彼のジロは、わずか初日で終わってしまいました。アルバニアでの落車は、あまりにも不運なものでしたね。縁石に衝突し、街灯を避けきれずに数メートル下の段差に転落。映像を見てもゾッとします。幸いにも重傷には至らず、ブエルタ・ア・エスパーニャへの復帰も視野に入っているとのこと。プリモシュ・ログリッチやフアン・アユソがリタイアする中で、もし彼が最後まで走り切れていれば、総合上位争いに食い込む可能性も十分にありました。「そうだったのか！」と驚くような彼の活躍を期待していただけに、本当に残念でなりません。

UAEチームエミレーツ・XRGのイゴール・アリエタは、グランツール初出場ながら、フアン・アユソの最高のアシストとして、またイサーク・デルトロのアシストとしても、素晴らしい働きを見せてくれました。特に第8ステージでの4位は、彼自身のポテンシャルを示す結果です。チームのリーダーたちが苦しむ中で、アシストとして最後まで全力を尽くした彼のデビューは、十分に評価されるべきものでしょう。

プロチームの存在感と今後の展望

UCIが主催者に与えた特別招待枠で参戦したプロチームの選手たちも、今大会でその存在感を示しました。Q36.5のXabier Mikel Azparrenは、逃げに積極的に加わり、チームのスポンサーをテレビに映すという役割をしっかりと果たしました。さらに、タイムトライアルでの才能も開花させ、第1ステージでは24位、第2ステージでは10位と好成績を収めました。総合125位という結果以上に、彼の能力がグランツールで通用することが証明された大会だったと言えるでしょう。

Polti VisitMaltaのフランシスコ・ムニョスは、第5ステージでスタート直後から130km以上もの単独逃げを敢行し、その名を轟かせました。結果的にステージ優勝には繋がりませんでしたが、Pro Teamにとって、あの長時間にわたる単独逃げは、チームのジャージとスポンサーを世界にアピールする絶好の機会となりました。最終ステージで36位、総合144位という結果でしたが、彼の「見せる走り」は多くのファンの記憶に残ったはずです。

今回のジロ・デ・イタリアは、スペイン勢にとって、期待が大きかっただけに悔しさも残る大会だったかもしれません。しかし、カルロス・ベローナのステージ優勝や、ペリョ・ビルバオの不屈の闘志は、日本のサイクルロードレースファンにとっても大きな希望を与えてくれたことでしょう。フアン・アユソやミケル・ランダといった次世代、そしてベテランのエースたちが、この経験を糧に、次のグランツールでどのような走りを見せてくれるのか。私は今からその日が待ち遠しくてなりません。...