Ayuso、ギアを上げる

フアン・アユソ、待望のグランツール初勝利！ 若き才能がPrimoz Roglicを退け、総合へ狼煙

イタリア、アブルッツォ州での激しい山岳ステージ。ここで遂に、長らく「プロミシング」という言葉で語られてきた一人の若者が、その殻を破る勝利を掴み取りました。UAEチームエミレーツ・XRGのフアン・アユソ、22歳。彼にとってグランツールでの記念すべき初勝利です。そしてこの日、総合争いでも大きな動きがありました。Primoz Roglicがマッズ・ピーダスンからマリア・ローザを奪還。アユソはPrimoz Roglicに対し4秒の差をつけましたが、総合ではPrimoz Roglicが再びリーダーに。この日の戦いは、今後のジロ・デ・イタリアの行方を占う上で非常に興味深いものでした。

長く待ち望んだ瞬間

フアン・アユソがグランツールでステージ優勝を飾る――多くのサイクリングファンが待ち望んでいた瞬間が、ついにタリアコッツォで訪れました。22歳にして既にグランツールで総合表彰台（2022年ブエルタ総合3位）に上った経験を持つ彼ですが、ステージ優勝はこれが初めて。「ずっと待ち望んでいたグランツールでの初勝利だ」と語るアユソの表情には、喜びと安堵が入り混じっているように見えました。

彼はこれまでも、ブエルタや昨年のツール・ド・フランス（ヴァロワールでのステージで、Tadej Pogacar、レムコ・エヴェネプールに次ぐ3位）で勝利に迫るシーンを見せてきました。しかし、あと一歩が届かない。「プロミシングな選手」という評価は光栄である一方、彼にとっては重圧でもあったのでしょう。「いつも『もう少しで勝てた選手』として名前が挙がるのはもううんざりだ。次の段階に進む時が来た」と、アルバニアでの大会前に彼は私に語っていました。今回の勝利は、まさにその言葉通りの「次の段階」への扉を開ける一撃だったと言えるでしょう。

Primoz Roglicとの心理戦

フアン・アユソにとって、この日の勝利は単なるステージ優勝以上の意味を持ちます。それは、彼がこれまでグランツール、特にブエルタで幾度となく勝利を阻まれてきたPrimoz Roglicという大きな壁を乗り越える第一歩だからです。Primoz Roglicはアユソにとって、ある種の「宿敵」のような存在だったと言っても過言ではありません。

両者の関係は表面上は友好的ですが、その間には常にピリピリとした緊張感が漂っています。35歳のベテランであるPrimoz Roglicは、若き才能であるアユソをからかうかのように、彼の神経を逆撫でするような走りを見せることもあります。しかし、この日は違いました。アユソは最後の400mで渾身のアタックを敢行。タイムトライアルでPrimoz Roglicに16秒、さらに第4ステージで2秒失った借りを返すかのように、彼に4秒の差をつけました。

「Roglicに失ったタイムを取り戻したかったんだ」と、晴れやかな表情でアユソは語りました。「この勝利は自信を持つために絶対に必要なものだった」。2021年シーズン途中に19歳を待たずにUAEチームエミレーツ・XRGに加入した頃から、彼はその才能ゆえに大きな期待を背負ってきました。彼の両親の近しい人物はこう明かします。「彼は時々、期待されすぎていると不満を漏らしていたが、一方で最初のレースから全てを破壊するつもりだと豪語していたのも彼自身だった。一度挫折も味わったが、それが彼に多くのことを学ばせたのだろう」。今回の勝利は、まさにその学びの成果が結実した瞬間だったと言えます。

UAEチームエミレーツの完璧な戦略

この日のフアン・アユソの勝利は、彼自身の力だけでなく、UAEチームエミレーツ・XRGの完璧なチーム戦略の賜物でもありました。チームはエースであるTadej Pogacarに提供するのと同様の、至れり尽くせりのアシスト体制をアユソのために敷いたのです。

最後の登坂区間の麓から、35歳のベテラン、Rafal Majkaが強力な牽引を開始。その後にアダム・イェーツが続き、最終的なアタックの準備を整えました。さらに、メキシコの若手有望株、イサーク・デルトロも2位に入る活躍を見せ、チームの層の厚さを見せつけました。チーム総力でアユソを勝利へと導いたのです。

アユソは、おそらく早すぎたアタックだったEgan Bernalをカウンターし、Primoz Roglicを振り切りました。Primoz Roglicに4秒差をつけただけでなく、ボーナスタイム10秒も獲得し、合計14秒のアドバンテージを得ました。しかし、Primoz Roglicは予定通りマッズ・ピーダスンからマリア・ローザを奪還。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのリーダーである彼が、このステージを本命視していたかは定かではありません。真の総合バトルが始まるのは、第3週の厳しい山岳に入ってからでしょう。

タデイ・ポガチャルの影から

フアン・アユソにとって、この勝利がもたらす最大の付加価値は、間違いなく「タデイ・ポガチャルの影」から抜け出すきっかけとなることです。UAEチームエミレーツ・XRGでは、Tadej Pogacarが文字通り全てのスポットライトを浴びています。チームメイトであるフアン・アユソも、その圧倒的な輝きのそばでは、どうしても「ポガチャルのチームメイト」という見られ方をしてしまう側面がありました。

アユソは今回の勝利が、自身の才能を証明するためではなく、Tadej Pogacarの影から抜け出し、自分自身の存在を確立するために必要だったと語っています。爆発的なフィニッシュについて情熱的に語る彼の姿から、この瞬間が彼にとってどれほど待ち望んだ、そして彼だけのものとなった勝利であったかが伝わってきました。

「どうアタックすればいいかは分かっていた。こういうフィニッシュでは、使える弾は一度きりなんだ。だから、他の選手たちが疲弊するのを待って、適切なタイミングで自分の力を出し切った」と、冷静な戦術眼を語りました。

次なる目標はマリア・ローザ

この勝利に満足することなく、フアン・アユソは既に次なる目標を明確にしています。それはマリア・ローザの獲得です。彼は翌日のステージ、ストラーデ・ビアンケの一部区間を含むコースで「マリア・ローザを取りに行く」と宣言しました。「目標は月曜日の休息日までに総合首位に立つことだ」。

この自信に満ちた発言は、彼の若きレジェンドにふさわしいものです。勢いに乗るフアン・アユソが、Primoz Roglicやその他のライバルたちを相手にどのような戦いを見せるのか。そして、UAEチームエミレーツ・XRGはTadej Pogacarだけでなく、フアン・アユソというもう一人の総合エース候補をどのようにマネジメントしていくのか。ジロ・デ・イタリアは、まだ始まったばかりです。

ジロの総合争いは、これからさらに熱を帯びていくでしょう。特に、ロマン・バルデが第7ステージでの落車後、「レースを続けられることを願っている」と語っていたように、不測の事態も起こり得ます。フアン・アユソのこの勝利が、今後の展開にどう影響してくるのか、目が離せません。