2025年ジロ：レース妨害デモ、Israel-Premierチーム参加に抗議

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。山田健一です。

グランツール真っ只中、連日熱戦が繰り広げられているジロ・デ・イタリアですが、残念ながらレースそのものとは異なる、ショッキングなニュースが飛び込んできました。レース終盤、選手たちが勝利を目指して最後の力を振り絞るまさにその時、コース上で起きた出来事について、私の視点からお伝えしたいと思います。

ジロ・デ・イタリアを襲った衝撃

ピンクのジャージをかけた熱い戦いが続くジロ・デ・イタリアで、思わぬアクシデントが発生しました。レースも残りわずか3kmという緊迫した局面、逃げ集団の先頭を走っていた タコ・ファンデルホールン と エンゾ・パレニ の目の前に、突然、デモ隊がコースに飛び出してきたのです。

彼らはケーブルやリボンで道を塞ぎ、選手たちは急ブレーキをかけ、コースを避けることを余儀なくされました。幸いなことに、この一件で選手に怪我はありませんでしたが、まさに間一髪。勝利を目指して限界まで追い込んでいる選手にとって、これは非常に危険な行為であり、レースの流れを完全に断ち切るものです。現場にいた私は、思わず息を呑みました。

抗議活動の標的はチームか

なぜ、彼らはこのような危険な行為に及んだのか。現地メディアの報道によると、逮捕されたデモ参加者の目的は、イスラエルとパレスチナの紛争に関連した抗議活動だったことが明らかになりました。彼らは「イスラエルをジロ・デ・イタリアから排除せよ」といったスローガンを叫び、 Israel-Premier チーム ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ の参加に反対していたといいます。

デモ隊側は、このチームが「ガザでの虐殺に責任があると考えられる国家を代表している」と主張しているようです。スポーツイベントを政治的なメッセージ発信の場とする行為は過去にも見られましたが、このようにレースを物理的に妨害し、選手を危険に晒すやり方は、決して容認できるものではありません。チームは純粋にスポーツとして参加しているわけですから、その活動を妨害されるというのは、選手たちにとって理不尽極まりない出来事でしょう。

法的措置と今後の懸念

この妨害行為を行ったナポリ出身の67歳男性は、傷害未遂と公務執行妨害の容疑で逮捕・起訴されたとのことです。前科がある人物だったという情報もあり、単なる衝動的な行動ではなかった可能性も考えられます。当局は共犯者の存在についても捜査を続けるとしています。

今回の事件は、レースの安全確保という点で大きな課題を突きつけました。グランツールのような大規模なロードレースは、広範囲にわたる公道を使用するため、コース全体の完全な封鎖は極めて困難です。しかし、だからといって選手たちの安全が脅かされて良いわけがありません。運営側は、こうした事態を想定したさらなる警備体制の強化が求められるでしょう。

山田健一の視点：スポーツと政治の交錯

私が長年グランツールを取材する中で、スポーツと政治が交錯する場面に遭遇することは少なくありません。しかし、今回のように、選手が文字通り道を塞がれ、レースが物理的に妨害されるというのは、非常に衝撃的な出来事です。

スポーツは、国籍や思想を超えて人々を熱狂させ、感動を与えるものです。その舞台が、特定の政治的主張の道具として利用され、選手たちがその犠牲になるというのは、見ていて非常に辛いものがあります。デモ隊には彼らなりの主張があるのでしょうが、その方法が選手やレースファン、そしてレースそのものへの敬意を欠くものであるならば、共感を得ることは難しいのではないでしょうか。

今回の件は、改めてスポーツイベントにおける安全確保の難しさ、そして、スポーツが持つ「政治とは切り離された中立性」をいかに守っていくか、という問いを私たちに投げかけているように思います。皆さんは、この出来事についてどうお考えになりますか？

レースは続く、選手の安全を願う

今回の事件は、レースの雰囲気に暗い影を落としましたが、ジロ・デ・イタリアは続きます。選手たちはプロフェッショナルとして、困難な状況でも最高のパフォーマンスを発揮しようと努めるでしょう。

私たちは、彼らが再びこのような危険な目に遭うことなく、無事にレースを走り終えられることを心から願うばかりです。そして、スポーツがスポーツとして、純粋にその魅力をもって私たちを楽しませてくれる日々が続くことを願ってやみません。今後のジロの展開、そして選手たちの走りに注目していきましょう。