ジロ・デ・イタリア：ステージプロフィール

山田 健一です。グランツールを追い続けてきた私から、日本のサイクルロードレースファンの皆さんに、ジロ・デ・イタリア第12ステージの展望をお届けします。

水曜日の山岳ステージを終え、ジロ・デ・イタリアは束の間の休息……いや、総合勢にとってはそうかもしれませんが、スプリンターたちにとっては今日こそが「勝負の日」です。第12ステージは、スプリンターたちの喉から手が出るほど欲しがっている勝利のチャンス。グランツール担当として、私はこの平坦ステージが単なる「移動日」では終わらない、独特の緊張感を孕んでいると感じています。特に、ポイント賞チクラミーノジャージを狙うLidl-Trekのマッズ・ピーダスン、そしてジロの歴史が息づくモデナの地から、どのようなドラマが生まれるのか、今から胸が高鳴りますね。

第12ステージ：束の間の休息、しかしスプリンターは虎視眈々

5月20日（火）の雨中のタイムトライアル、そして翌5月21日（水）の厳しい山岳ステージと、ここまで激戦が続いてきたジロ・デ・イタリア。選手たちの疲労はピークに達しつつあるでしょう。そんな中で迎える第12ステージは、距離172kmの平坦基調。総合上位を争う選手たちにとっては、まさに「休息日」と位置付けられるかもしれません。しかし、コースプロフィールを詳細に見ると、ただの平坦ステージではないことがわかります。序盤にはバイソ（5km）とボルセア（4.1km）という二つの3級山岳が設定されていますが、これらは標高差も小さく、総合タイムに影響を与えるようなものではありません。むしろ、序盤の逃げ集団形成を促すための「丘陵地帯」といった趣です。

私が現地で取材する中で感じるのは、このような「休息日」と見なされがちなステージこそ、思わぬドラマが生まれる可能性を秘めているということです。特に、中盤から終盤にかけての70kmが完全に平坦であるという事実は、スプリンターチームにとっては垂涎もの。「今日を逃せば、もうチャンスはないかもしれない」という焦りにも似た期待感が、彼らの表情から見て取れます。果たして、総合勢が静観する中で、誰がこのチャンスを掴み取るのでしょうか。

チクラミーノを巡る熱い戦い：マッズ・ピーダスンに注目

この平坦ステージで最も注目すべき選手の一人は、Lidl-Trekのマッズ・ピーダスンでしょう。彼はポイント賞のチクラミーノジャージを狙っており、このステージでポイントを稼ぎ、そのリードを盤石にしたいはずです。スプリンターの勝利は、単にステージ優勝だけでなく、ポイント賞争いにも直結します。Lidl-Trekは彼のポイント獲得をアシストするため、献身的なトレインを組んでくるに違いありません。彼らのチームワークと、ピーダスン自身の勝負強さが試される瞬間となるでしょう。

ピーダスンは、クラシックレースでも強さを見せるパンチャータイプであり、厳しいレース展開の中でもタフなスプリントができる選手です。彼がチクラミーノジャージを着続けるためには、このような純粋なスプリントステージでの着実なポイント獲得が不可欠。ライバルスプリンターたちとの駆け引き、そしてゴール前の位置取り争いは、まさに息をのむ展開となることでしょう。彼の表情からは、「絶対にこのジャージを守り抜く」という強い意志が感じられます。

歴史が息づく地から未来へ：モデナとジロの絆

第12ステージのスタート地点は、イタリアのモデナ。この地は、かつてイタリア自転車界のレジェンド、ファウスト・コッピが初めてマリア・ローザを獲得した場所としても知られています。「そうだったのか！」と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。歴史ある場所からスタートするというのは、ジロ・デ・イタリアという「コルサ・ローザ（ピンクのレース）」の奥深さを改めて感じさせます。過去の偉大な選手たちが残した足跡を辿りながら、現代の選手たちが新たな歴史を刻んでいく。そのコントラストもまた、サイクルロードレースの魅力の一つです。

前日の第11ステージでは、リチャル・カラパスが素晴らしい勝利を収めました。彼の勝利は、これまでのジロの展開に新たな風を吹き込んだと言えるでしょう。モデナからヴィアダーナへと向かう今回のステージは、一見すると静かな流れに見えるかもしれませんが、そうした過去と現在のドラマが交錯する中で、選手たちはそれぞれの目標に向かってペダルを回し続けるのです。Movistarのエンリク・マスやUAEといった総合上位を狙うチームの選手たちは、ここで体力を温存しつつ、集団内で位置取りを意識するでしょう。

終盤の駆け引きと放送情報

ステージの終盤、特に最後の3kmは、スプリンターチームにとって非常に重要な局面となります。ヴィアダーナのフィニッシュ地点に向けては、最後のカーブが一つだけというシンプルなレイアウト。これは、純粋なスピード勝負になりやすいことを意味します。各チームのスプリンターが、いかにこの最終盤で理想的なポジションを確保できるか。そして、リードアウト役の選手たちが、どれだけ完璧な発射台を築けるか。そのわずかな駆け引きが、勝敗を分けることになるでしょう。

日本のファンの皆さんも、この興奮をリアルタイムで体験できます。第12ステージは、5月22日（木）の13時15分にスタート予定。日本ではユーロスポーツ1、DAZN、MAXといったプラットフォームで13時00分から中継が始まるようです。ぜひ、画面越しに選手たちの息遣いを感じ取ってください。そして、MARCA.comやラジオMARCAでも、現地の詳細な情報が随時報じられるはずです。私は現地特派員として、そうしたメディアの報道から、選手たちの心理状態やチームの戦術の微妙な変化を読み解くことを心がけています。

ジロ・デ・イタリア第12ステージは、総合争いが一時的に小康状態となる中で、スプリンターたちが主役となる一日です。しかし、グランツールは常に予期せぬ展開が待っています。果たして、マッズ・ピーダスンはチクラミーノジャージをさらに盤石にするのか、それとも新たなスプリンターが台頭するのか。そして、この平坦ステージが、今後の山岳ステージやタイムトライアルに向けて、どのような伏線を張るのか。次なるドラマが待ち遠しくてなりませんね。