バルデ：「再び主役になれるのはいつもうれしい」

ロマン・バルデ、最後のジロで魅せた意地のアタック！「主役になれるのはいつだって嬉しい」

ジロ・デ・イタリア第13ステージ、ゴールまで残り9km、下り区間で電光石火のアタックを仕掛けたのは、フランスのベテラン、ロマン・バルデでした。チーム ピクニック・ポストNL PostNLのジャージをまとい、これが「最後のジロ」と公言している彼が見せた渾身の走りは、マッズ・ピーダスンが勝利を掴んだこのステージに、もう一つのドラマを刻み込みました。惜しくも残り500mで集団に吸収されたものの、その表情には充実感が漂います。「レースの主役になれるのはいつだって嬉しい」――その言葉の裏には、ベテランの意地と、最後まで全力を尽くす覚悟が垣間見えます。ヴィチェンツァの地で繰り広げられた熱戦の舞台裏を、彼の言葉から深掘りしていきましょう。

本能か、計画か？バルデのアタックの真意

ゴールまで残り9km、下り区間でのロマン・バルデのアタック。これは、果たして事前に計画されたものだったのでしょうか、それとも彼の本能が導いた一瞬の閃きだったのでしょうか？ 私のリアルタイム解析では、その両方の要素が絡み合っていたと見ています。

彼自身、「少しは両方」と答えていますね。その言葉の奥には、「ここ数日、レースを動かす機会を探していた」という彼の積極的な姿勢が読み取れます。今のジロは、まさに「レベルが均一」な状態。だからこそ、ちょっとした隙間、一瞬のチャンスを逃さずに掴み取るセンスが問われるのです。チーム ピクニック・ポストNL PostNLの戦略も興味深い。通常であれば、スプリンターのキャスパー・ファンウーデンのためにスプリントを狙うところを、この日はマックス・プールのサポートを優先し、そしてロマン・バルデ自身が「チャンスを掴む」という選択をした。これは「なるほど！」と思わせる戦術転換です。彼が「レースの主役になれるのはいつだって嬉しい」と語るように、そのアタックは、単なる脚試しではなく、彼自身のプロとしての矜持が込められた、まさに「主役」たるための行動だったと言えるでしょう。

ヴァチェクとの共闘、そして平坦での苦闘

アタックに成功したロマン・バルデは、Lidl-Trekのマティアス・ヴァチェクと二人で逃げを打ちました。この連携は、集団から抜け出す上で非常に効果的でしたね。しかし、バルデの言葉からは、その逃げがどれほど過酷だったかが伝わってきます。「平坦では本当に全開で、彼は私を苦しめた（笑）」――この「笑い」の裏には、マティアス・ヴァチェクの平坦での圧倒的なパワーと、それについていくロマン・バルデの尋常ならざる消耗が見え隠れします。

「想定以上に厳しい一日だった」という彼の振り返りは、ジロのステージが一つとして楽なものがないことを改めて教えてくれます。それにしても、「Lidl-Trekの選手と一緒だったのは、前方に出るのに良いチームだった」という彼の発言は「へぇ～」と唸らされますね。これは単なる偶然ではありません。Lidl-Trekのような強力なチームの選手が逃げに乗っていると、メイン集団、特に総合系チームはむやみに追走しない傾向があります。なぜなら、そのチームの選手が前にいることで、他のチームが追走するモチベーションが下がるからです。そう、「確かに！」、これはロマン・バルデの経験と戦術眼が光る選択だったと言えるでしょう。

勝負の行方と、迫る最終週への期待

しかし、プロのレースは甘くありません。ロマン・バルデは、メイン集団の猛追を肌で感じていました。「最後の登りの手前で、大きなリードが必要だったのは分かっていた。登りはとても厳しかった」と語る彼の言葉からは、自身の限界と、集団の勢いを冷静に分析していたことが分かります。そして、「500mで横に逸れた」という表現。これは、もはや勝負が決したことを潔く認め、無理な抵抗をしない、ベテランならではの判断です。

それでも、今大会のロマン・バルデの走りには、後悔の念は少ないようです。「プラップが勝った第8ステージの逃げ（カステルライモンドでの単独勝利）以外は、今のところ特に後悔することはない」と語る彼の言葉は、彼が今大会、自分の持てる力を出し切っている証拠でしょう。そして、いよいよジロは最終週へと突入します。彼にとって「最後のジロ」となる今大会、総合上位は難しい状況ですが、ステージ優勝への執念は燃え盛っているはず。「非常に厳しくなるだろう。だがチャンスはある。非常に強くなければならない」――その言葉に、彼の決意と、最終週の激しい戦いへの期待が込められています。

ロマン・バルデがこの「最後のジロ」で、どのようなドラマを私たちに見せてくれるのか。彼のキャリアの集大成ともいえる走りに、私はこれからも目を離すことができません。最終週の山岳ステージで、彼の新たなアタックが見られることを心から期待しています。さあ、ジロはここからが本番ですよ！