チッコーネ、ティフォージに希望を返す：「今が最強」

ジロ・デ・イタリア：ジュリオ・チッコーネがティフォージに希望を呼び戻す！「今、かつてないほど強い」

キエーティ出身のクライマー、ジュリオ・チッコーネが、今年のジロ・デ・イタリアで母国のファンに大きな希望を与えています。昨年2024年は、会陰部の嚢胞摘出手術によりシーズン前半を棒に振り、このジロも欠場せざるを得ませんでした。しかし、2025年、彼は満面の笑みを浮かべています。特に、自身の真価が問われる大山岳が目前に迫る今、その自信は揺るぎないものがあるようです。

リード文に触れた通り、彼は「今、かつてないほど強い」と語っています。これは単なるリップサービスではありません。今シーズン、リエージュ～バストーニュ～リエージュで2位、UAEツアーでも総合2位と、並み居る強豪の中でその存在感を示してきました。さらに、ツール・ド・アルプスではステージ優勝を飾り、コンディションの良さは疑う余地がありません。

「最高の状態にあるのは分かっています。身体的にも非常に好調ですし、チームも素晴らしい。今シーズン、我々リドル・トレックが見せた進化は目覚ましいものがあります。仲間たちの助けに応えるためにも、全力を尽くすつもりです」と、彼は私に語ってくれました。その言葉の裏には、チームへの深い感謝と、母国でのグランツールにかける並々ならぬ決意が感じられます。彼の表情から、かつてない集中力と自信が伝わってきましたね。

復活を遂げたイタリアの星、ジュリオ・チッコーネ

ジュリオ・チッコーネのキャリアは、浮き沈みの激しいものでした。特に、ジロ・デ・イタリアでは過去3度のステージ優勝を飾るなど、輝かしい実績を持つ一方、総合争いにおいては常に怪我や不運に見舞われてきました。2019年のモルティローロ峠での勝利、そしてマリア・ローザ着用は、今でもイタリアンサイクリング史に刻まれる名場面です。しかし、そこからもう一歩、総合表彰台には手が届かないシーズンが続いていました。

昨年、2024年のジロを欠場したことは、彼にとってキャリア最大の挫折の一つだったことでしょう。しかし、その苦しみが彼をさらに強くしたのだと、今回のインタビューで確信しました。手術からの完全復活を遂げた彼は、今シーズンに入ってから一貫して高いパフォーマンスを維持しています。リエージュ～バストーニュ～リエージュでの2位は、彼が単なるクライマーではなく、クラシックでも戦えるオールラウンダーとしての進化を示していますし、UAEツアーでの総合2位は、タデイ・ポガチャルが席巻する現代ロードレースにおいて、彼が総合争いのトップレベルに食い込める実力を持っていることを証明しました。

彼の言葉通り、リドル・トレックというチーム全体の進化も目覚ましいものがあります。マッズ・ペデルセンのようなスプリンター兼クラシックハンターから、総合エースまで、バランスの取れた選手層と、それを支える強力なチーム戦略が、チッコーネの好調を後押ししているのは間違いありません。チームメイトとの信頼関係が、彼のパフォーマンスを最大限に引き出している。まさに「チームが素晴らしい」という言葉が、その全てを物語っているのです。

UAEチームエミレーツの「力学」とチッコーネの視点

現在のジロ・デ・イタリアの総合争いは、UAEチームエミレーツが支配的な状況を作り出しています。イサーク・デルトロを筆頭に、フアン・アユソを含む4人もの選手が総合上位に名を連ねるという、まさに「盤石」と呼ぶにふさわしい布陣です。チッコーネ自身も現在総合7位、デルトロから2分11秒差と、まだまだ射程圏内ではありますが、このUAEの層の厚さは脅威に他なりません。

このUAEのチーム内力学については、現地メディアでも盛んに議論されています。誰が真のリーダーなのか？デルトロか、それともアユソか？チッコーネは、この点について非常に冷静な分析をしていました。「UAEは有利な状況にある。まだ、彼らのヒエラルキーがどうなるか、誰が最も強いかを言うのは時期尚早だと思う。最終的には、道が全てを語るだろう。しかし、デルトロが最も強いことを示しているのは確かだ。今後の上り区間でどうなるか、注目だね」と。

彼はフアン・アユソの実力を高く評価しており、「アユソのレベルには驚いていない。彼はレースで最も強力なライバルだ」とまで言っています。そして、今回のジロにタデイ・ポガチャルが不在であることについては、「彼がいないとレースの展開が全く違う。よりオープンな展開になるね。彼は世界で最も支配的なサイクリストだから、彼の存在が全てを左右するんだ」と、正直な感想を漏らしていました。ポガチャルの不在が、他の選手たち、特にチッコーネのようなクライマーにとっては、総合表彰台を狙う絶好のチャンスとなっているのは間違いないでしょう。この「ポガチャル効果」は、グランツールの戦術を大きく変える要素であると私も分析しています。

イタリアンサイクリングの「世代交代」の波

長らくイタリアのサイクルロードレース界は、「新しいヴィンチェンツォ・ニバリ」の出現を渇望してきました。ニバリ引退後、総合優勝を狙えるクライマーがなかなか現れず、ティフォージは寂しい思いをしてきたのも事実です。私も多くのイタリア人ジャーナリストから、この「ポスト・ニバリ」問題について聞かされてきました。

しかし、近年、アントニオ・ティベリやジョナタン・ミラン、そしてジュリオ・ペリッツァーリといった若手選手たちが次々と頭角を現し、イタリアのサイクリング界は再び活気を取り戻しつつあります。彼らの活躍は、国内リーグの盛り上がりだけでなく、国際レースでのイタリア勢の復権を予感させます。チッコーネは、この世代交代の波について、「サイクリングやスポーツにおいては、常に世代交代が起こるものだ。イタリアは数年間、低迷期があったが、今は多くの競争力のある若手が育っており、非常に高いレベルに戻りつつある」とポジティブに捉えています。

彼自身の世代が、この過渡期に位置していたことは否めません。しかし、チッコーネは「私自身の世代はその間に挟まれてしまったが、今、私はかつてないほど強いと感じている」と語り、若手の台頭を刺激と捉え、自身の成長に繋げているようです。彼のようなベテランが若手を牽引し、共にイタリアサイクリングの黄金期を築いていく。そんな未来が、私には見えてきました。

チッコーネの「トレードマーク」と今後の展望

ジュリオ・チッコーネといえば、ステージ優勝後にサングラスを宙に投げ飛ばすパフォーマンスが有名です。このユニークな「トレードマーク」について尋ねると、彼は笑いながら「2019年にモルティローロで勝った時に初めてやって、それから私のサインになったんだ」と教えてくれました。商業的な意図はないそうですが、彼の勝利への喜びと、その奔放なキャラクターを象徴するジェスチャーとして、多くのファンに愛されています。

ジロ・デ・イタリアは、ロヴィーゴからヴィチェンツァへの第13ステージを終え、いよいよ山岳ステージが本格化します。チッコーネの真骨頂は、ここから発揮されることでしょう。彼の「今、かつてないほど強い」という言葉が、単なる強がりではないことを、今後の大山岳で証明してくれるはずです。UAEチームエミレーツのGC陣との戦いは熾烈を極めるでしょうが、チッコーネは彼らの「力学」を冷静に見極め、自身のチャンスを最大限に活かす戦略を立てているはずです。

締め

ジロ・デ・イタリアの舞台は、いよいよ大山岳へと突入します。ジュリオ・チッコーネが抱く「かつてない強さ」という自信が、果たしてイタリアのティフォージに歓喜をもたらすのか。UAEチームエミレーツの盤石な体制を崩し、表彰台の頂点に迫ることができるのか。彼の走りが、このジロの物語をさらに熱く、ドラマチックなものにしてくれることでしょう。彼の「モルティローロの再来」となるような走りを期待せずにはいられません。目が離せませんね！...