強豪はスケルモセという名の難敵に苦戦

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは！ジャーナリストの松崎 愛です。今日も世界中のレース情報に張り付いている私ですが、先日オランダで開催されたアムステル・ゴールドレース、あれは本当に痺れましたね！「怪物」と称されるあの二人が、まさか、まさか...。思わず唸ってしまいました。

アムステル・ゴールドレース：怪物たちが沈黙した日

日曜日にオランダ、マルテ・ベルグエドセス（Terbljit）で幕を閉じたアムステル・ゴールドレースは、レースを追いかける者たちの度肝を抜く結末を迎えました。優勝候補筆頭と目されていたあのTadej Pogacarと、対抗馬とされたレムコ・エヴェネプール。この「二大巨頭」を差し置いて、勝利を掴んだのはデンマークの24歳、マティアス・スケルモースだったのです。最終盤の息詰まる攻防の末、彼がスプリントで勝利を飾った瞬間、世界中のサイクルファンが「えっ？！」と声を上げたのではないでしょうか。

「怪物」たちの誤算：早すぎたアタック？それとも疲労？

レースはまさに、Tadej Pogacarが主導する形で動いていきました。残り48km地点、ジュリアン・アラフィリップの動きに反応して飛び出したTadej Pogacar。いつもの彼なら、ここから独走態勢に持ち込み、後続を寄せ付けないままフィニッシュへなだれ込む...そんな絵が描かれていたはずです。事実、ジュリアン・アラフィリップはすぐに脱落しましたが、Tadej Pogacarは「パンチ力だけは衰えていない彼についていくのが良い戦略だと思った。でも、彼が落ちてしまって、途端に最善の戦略ではなくなった」と後に語っています。それでも、世界チャンピオンジャージを輝かせ、そのステータスを保つために、彼は単独での逃げを続行しました。

しかし、今回は違いました。あのパリ～ルーベでの過酷なデビュー戦からわずか一週間。Tadej Pogacarがいつものような「燃えるような」走りを維持できなかったのは明らかでした。向かい風も味方せず、残り20kmを切ってからの彼のタイム差は見る見るうちに縮まっていきます。頭を振り、何度も後ろを振り返る姿は、普段の揺るぎない「怪物」の姿とはかけ離れていました。「少し興奮しすぎたかもしれない。一人で持ちこたえようとしたが、追走の二人は非常にモチベーションが高かった。特に、私に追いつくことにかけてはね」と、謙虚に敗因を語っています。

執念の追走劇：スケルモースとエヴェネプールの共闘

絶望的とも思われたTadej Pogacar追走の狼煙を上げたのは、イスラエル・プレミアテックのマティアス・スケルモースでした。メイン集団から抜け出し、決して諦めない走りを続けます。そして、そこに合流したのが、オリンピックチャンピオンのレムコ・エヴェネプールです。当初は非現実的と思われた二人の追走でしたが、ここにドラマが生まれます。マティアス・スケルモースは、レムコ・エヴェネプールが合流した時の安堵感を隠しませんでした。「正直、もう限界だった。Remcoは今日、最高のチームメイトだったと言える。仕事の分担をまとめると、彼が80%、私が20%だった。一人では絶対にTadejに追いつけなかっただろう」と、レムコ・エヴェネプールの貢献を称えています。

レムコ・エヴェネプール自身も、レース序盤にワウト・ファンアールトも巻き込まれた集団落車に巻き込まれ、回復に時間を要したと語っています。「誰も無敵ではない。そうでなければ今日のスタートラインには立っていない」といつもの強気な姿勢を見せつつも、「あの落車がなければ、勝つチャンスはもっとあっただろう」と、不運を悔やんでいます。それでも、彼は諦めずに追走に加わり、マティアス・スケルモースとの協調によって、Tadej Pogacarを射程圏内に捉えることに成功したのです。

スプリント勝負：意外な勝者の誕生、そして次への伏線

コーベルク手前の平坦区間で、ついに追走の二人がTadej Pogacarに追いつきました。そのまま3人でのスプリント勝負に持ち込まれることになります。Tadej Pogacarは「あの二人が同じ目的、つまりコーベルクをクリアして2.5km先のスプリントに賭けていると分かった時、希望が湧いた」と言います。「彼らの後ろについて観察し、何をしようとしているか推測しようとした。どちらも動かなかったので、これで大丈夫だと思った」。

しかし、彼はこの二人とのスプリント経験がなかったことを認め、「彼ら相手にスプリントしたことがなかった」と語っています。一方、レムコ・エヴェネプールは、Tadej Pogacarを警戒しすぎた節がありました。「確かに、誰もMattiasが今日勝つとは思っていなかっただろう。だが、260kmの厳しいレースの後では、160kmや平坦ステージとは常に違うものだ」と、レースの厳しさを強調しています。そして、この3人の中で、最も冷静に、そして最も力を温存していたマティアス・スケルモースが、見事なスプリントで二人の「怪物」を打ち破ったのです。

敗れたTadej Pogacarは、落胆の色を隠しきれませんでしたが、「人生最悪の日ではない。クラシックシーズンはすでに成功しているし、来週の日曜日（リエージュ）も残っている」と、すでに次を見据えたコメントを残しました。この一言は、来たるリエージュ～バストーニュ～リエージュでの再戦を予感させますね。

「無敵」と思われたTadej Pogacarが敗れたことで、他の選手たちに希望の光が灯ったかもしれません。そして、マティアス・スケルモースという新たな才能がビッグレースでその名を刻みました。サイクルロードレースの面白さは、まさにこの「不確実性」にあると改めて感じさせられた一日でした。リエージュでは、またどんなドラマが待っているのでしょうか？今から待ちきれませんね！