リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 注目選手

皆さん、こんにちは！ 世界中のロードレースを追い続けるジャーナリスト、松崎 愛です。 今回は、クラシックシーズンの掉尾を飾る「ラ・ドワイエンヌ（最古参）」、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュの展望をお届けします。

111回目のラ・ドワイエンヌへ！ ポガチャル、エヴェネプール、そして挑戦者たち

いよいよクラシックシーズンのクライマックス、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュが目前に迫ってきました。日曜日に開催されるこの第111回大会は、やはりタデイ・ポガチャルが最大の優勝候補であることに疑いの余地はありません。しかし、直近の過密なレース日程による疲労が、スロベニアの怪物を襲う可能性もゼロではない。もし彼に隙が生まれるとしたら、そのチャンスを虎視眈々と狙っている実力者は何人もいるのです。

絶対王者か、疲労か？ タデイ・ポガチャルの現在地

先週末のアムステルゴールドレースでマティアス・スケルモースに敗れ2位となったことで、ほんのわずかですが「あれ？」という声も聞こえたタデイ・ポガチャル。しかし、水曜日のフレーシュ・ワロンヌ、あの悪名高きミュール・ド・ユイの頂上で、彼は世界の常識を再び塗り替えました。まるで次元が違うかのような、まさに「圧倒的」という言葉しか見当たらない独走勝利。ライバルたちにリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでの勝利を夢見る時間すら与えなかった、そんな強さでしたね。

タデイ・ポガチャルは、2021年、2024年と既にこのレースを2度制しています。今大会で3勝目となれば、また一つ歴史に名を刻むことになります。確かに、このクラシックキャンペーン終盤、彼の体には疲労が蓄積していることでしょう。しかし、フレーシュ・ワロンヌで見せたパフォーマンスを見る限り、「勝利を譲る気は毛頭ない」という彼の強い意志が伝わってきます。もし、彼が本来の調子を100%維持できていれば、他の選手が彼に土をつけるのは至難の業である、と言わざるを得ません。

地元で輝くか？ レムコ・エヴェネプールの逆襲

対抗馬の筆頭は、やはりベルギーの至宝、レムコ・エヴェネプールでしょう。先週末の復帰戦となったフレーシュ・ブラバンソンヌでの勝利、そしてその2日後のアムステルゴールドレースでの3位と、彼は着実にコンディションを上げてきています。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、彼にとってまさに庭のようなもの。2022年、2023年とタデイ・ポガチャルと同様に2連勝しており、このレースへの思い入れは誰よりも強いはずです。

水曜日のフレーシュ・ワロンヌのミュール・ド・ユイでは、タデイ・ポガチャルの爆発力には及ばなかったものの、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのコースは彼の得意とするアップダウンが連続するレイアウトであり、より彼向きと言えます。「美しい戦いになることを願っている」とタデイ・ポガチャルとの直接対決に言及するなど、彼は勝利を掴むために、万全の準備をしてこのレースに臨んできます。地元の声援を背に、王座奪還なるか、注目です。

注目の挑戦者たち：隙を突くのは誰だ？

もちろん、この二強以外にも、勝利の可能性を秘めた選手たちは多数います。

• マティアス・スケルモース：先日のアムステルゴールドレースでタデイ・ポガチャルとレムコ・エヴェネプールをスプリントで破ったことは、彼の存在感を大きく高めました。彼がカウベルフで見せた鋭い走りは、ライバルたちに強烈な警告となったはずです。調子が良い時の彼は、決してチャンスを逃しません。唯一の懸念は、フレーシュ・ワロンヌでの落車がどれだけ影響するか、という点でしょう。

• トム・ピドコック：このブリティッシュパンチャーは、大目標に向けて着実に調子を上げてくるタイプです。フレーシュ・ブラバンソンヌ11位、アムステルゴールドレース9位、そしてフレーシュ・ワロンヌ3位と、ここ10日間でパフォーマンスは右肩上がり。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは2023年にレムコ・エヴェネプールに次ぐ2位、昨年もタデイ・ポガチャルに次いで10位と、相性の良さを見せています。しかし、彼が優勝するには、二強にとって非常に不利な、何か特別な状況が必要になるかもしれません。

• ベン・ヒーリー：アイルランドの「掴みどころのない」選手。彼の予測不能で、ある意味「昔ながら」とも言える直感的な走りは、相手にとって非常に読みにくいものです。 conventionalな戦術から外れた彼の仕掛けは、しばしば大きなリザルトに繋がります。彼を過小評価するのは非常に危険です。

• ロマン・グレゴワール：アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌともに7位。この若きフランス人クライマーは、この結果に満足していません。昨年の24位から大きく順位を上げ、トップレベルに近づいていることを証明しています。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは2回目の出場。レースの状況次第で、表彰台争いに絡む可能性も十分にあります。地元フランスのファンにとっては、彼の活躍に期待がかかりますね。

• ケヴィン・ヴォークラン：昨年のフレーシュ・ワロンヌで2位に入った後、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでの落車が響き、力を発揮できませんでした。今年もタデイ・ポガチャルに次ぐフレーシュ・ワロンヌ2位と、状況は似ています。しかし、世界最強の選手に肉薄したことは、彼に大きな自信を与えているはずです。「ポガチャルの後ろで2位なんて、信じられないよ！」と語っていた彼の言葉からは、その手応えが伝わってきます。

• サンティアゴ・ブイトラゴ：2023年に3位に入り、レムコ・エヴェネプール、トム・ピドコックと共に表彰台に上がった経験を持つ、イスラエル・プレミアテック所属のコロンビア人クライマー。コロンビア人としてこのレースで初めて表彰台に上がったという快挙も成し遂げています。彼のクライミング能力と、長距離レースでの粘り強さは、このリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで重要な役割を果たすでしょう。フレーシュ・ワロンヌでの6位も、彼が良い状態にあることを示しています。

鍵となるのは、やはりあの坂？

コース中盤に登場する有名な激坂、ラ・コット・ド・ラ・レドゥート（レドゥートの坂）。ここは、例年、勝負を動かす重要なポイントとなります。アタックを仕掛ける選手、それに反応する選手、そして遅れてしまう選手…。ここで集団が大きく絞り込まれ、優勝争いの構図が見えてくることが多いですね。果たして、今年もここでドラマが生まれるのでしょうか？

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、本当に予測不能な展開が魅力のレースです。二強の戦いになるのか、それとも挑戦者たちが意地を見せるのか。選手たちのコンディション、チームの戦術、そして何よりもレース当日の状況が、勝敗を分けます。

世界中のロードレースファンが固唾を飲んで見守るリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。私もリアルタイムで、この手に汗握る戦いを追いかけます！ 皆さんもぜひ、日曜日は画面の前で熱い応援をお願いしますね！