ラパルティアン、ギア比制限テスト実施を認める
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速度か、安全か。UCI会長が明かした「ギア比制限テスト」の行方
世界中のレース情報を追い続ける私、松崎 愛のもとに、また一つ興味深いニュースが飛び込んできました。自転車ロードレースの統括団体であるUCI（国際自転車競技連合）のデイヴィッド・ラパルティアン会長が、ついにギア比制限のテスト実施を認めたというのです。この問題、実は長年くすぶっていた議論の的。選手の安全を守るための切実な願いと、レースの本質に関わる難しい判断が交錯する、まさに現代ロードレースが直面する課題の一つと言えるでしょう。
安全対策として浮上した「ギア比制限」
近年、ロードレースの平均速度は驚くほど上昇しています。機材の進化はもちろん、選手のトレーニング方法や戦術の高度化が相まって、集団のスピードはかつてない領域に達しています。しかし、それは同時に落車のリスクを高め、一度発生すればより深刻な結果を招くことにも繋がっています。選手の安全確保は、自転車界全体にとって喫緊の課題なのです。
そんな中、安全対策の一つとして議論されているのが「ギア比の制限」です。特に下り坂や高速で突入するコーナーなど、高い速度域でのコントロールが求められる場面で、より大きなギアを使えなくすることで、意図的に最高速度を抑えようという発想です。これに対し、選手の側からも具体的な声が上がっていました。例えば、クラシックレースで度重なる落車に見舞われているワウト・ファンアールトは、2024年のア・トラヴェル・ラ・フランダーズでの落車後、その必要性を訴えています。彼はカノワリエベルフの下りを例に挙げ、「ギア比が制限されていれば、誰も無理な動きはできなくなる。（現状の）ギア比が大きすぎるから、まだ追い越せると思ってしまうんだ」と語っていました。選手の切実な経験に基づくこの意見は、多くのファンの心に響いたのではないでしょうか。
UCI会長の「イエス」と「しかし」
こうした議論が続く中、UCI会長のデイヴィッド・ラパルティアン氏がフランスのメディアの取材に対し、ギア比制限のテストをシーズン終盤に実施することを認めたのです。「シーズン末に、ある競技でテストが計画されている」と、彼は明言しました。これは大きな一歩と言えるでしょう。長らく議論されてきたアイデアが、ついに具体的な検証段階に進むわけですから。
しかし、話はそう単純ではありません。ラパルティアン会長はテスト実施を認めつつも、自身の個人的な見解としては、この制限に「非常に懐疑的である」と付け加えています。彼の懸念はこうです。「速度を下げることは、一般的に自転車レースとは相容れない」「ギア比制限は、軽いギアで高ケイデンスを維持できる選手と、重いギアを踏み込める選手という、選手の特性そのものを変えてしまう可能性がある」。なるほど、確かに一理あります。自転車レースの魅力の一つは、限界まで速度を追求するスリルであり、選手の個性や得意なペダリングスタイルもまた、レースを面白くする要素です。安全性とレースの根幹、この二つのバランスをどう取るのか、会長自身も悩んでいる様子が窺えます。さらに、たった1回のテストだけで結論を出すのは難しいだろう、とも彼は現実的に見ています。
ギア比だけじゃない、広がる安全対策の議論
安全対策はギア比制限だけに留まりません。UCIは他にも様々な角度から選手の安全向上策を模索しています。その一つが、ウェア、特にスキンスーツやショーツの素材や構造の進化です。落車時の衝撃を和らげ、擦過傷を軽減するためのプロテクション機能を持つウェアの開発が進められています。これは非常に現実的で、すぐにでも効果が出そうな対策ですね。
選手の怪我の深刻さは、最近のレースでも改めて浮き彫りになっています。例えば、アクセル・ジングレはツール・デュ・ペイ・バスクでの下りでの高速落車により、アルデンヌクラシックを欠場せざるを得ませんでした。彼だけでなく、多くの選手が落車による怪我でシーズンを棒に振ったり、キャリアに影響を受けたりしています。こうした現実を目の当たりにすると、何らかの対策が必要であることは間違いありません。コメント欄などを見ても、ギア比制限だけでなく、無線やパワーメーターの使用制限、さらには電動アシスト疑惑やドーピング対策など、安全や公平性に関する様々な意見が飛び交っており、ファンの関心の高さが伺えます。
試される自転車界の未来
シーズン終盤に実施されるというギア比制限のテスト。これが具体的にどのレースで行われるのか、そしてその結果がどう評価されるのか、今はまだ分かりません。ラパルティアン会長自身が懐疑的であるように、このアイデアがそのまま採用されるとは限りませんが、テストが行われること自体に大きな意味があります。
安全性は、選手はもちろん、ファンにとっても最も重要な要素の一つです。しかし、レースの魅力や選手の個性を損なうことなく、どうやって安全性を高めていくのか。これは自転車界全体が知恵を絞って取り組むべき課題です。ギア比制限テストはその答えを探す旅の一歩となるでしょう。果たして、このテストはどんな結果をもたらし、今後のロードレースにどんな影響を与えるのでしょうか？ 私たちファンも、その行方から目が離せませんね！
