イヴァン・ロメオ：「このステージを1ヶ月前から考えていた」

21歳の新星、イバン・ロメオがドーフィネで掴んだ栄光！若きTT王者が語る勝利への執念と秘策

クリテリウム・デュ・ドーフィネ第3ステージ、フランス中部のシャラントネをゴールとする181.7kmの平坦ステージで、我々は驚くべき光景を目にしました。Movistarの21歳、イバン・ロメオが鮮烈なアタックで勝利を掴み取り、そのままマイヨ・ジョーヌまで獲得したのです。ステージ優勝、そして総合リーダー。彼の表情には、若者らしい喜びと、それを上回る確かな自信が漲っていました。まさに「なるほど！」と膝を打つような、綿密な計画と準備の賜物だったのです。

「狙い定めた勝利：若きTTスペシャリストの綿密な計画」

この日のステージは、一見するとスプリンター向きにも見えましたが、ゴール手前には細かなアップダウンがあり、特に最後の6kmはルーラータイプの選手に有利な緩やかな上りが続きます。まさにイバン・ロメオのために誂えられたかのようなコース設定でした。

「1ヶ月前からこのステージを狙っていたんだ」と、ロメオはレース後に語ってくれました。この言葉に、彼の勝利が偶然ではないことが集約されています。パリ〜ニースを終えた後、彼は1週間休養を取り、その後は遥かアメリカ、アルレニス・シエラ・ネバダでの高地トレーニングキャンプに打ち込んだそうです。他のクラシックレースやツール・ド・ロマンディといった重要なレースを「少し犠牲にして」まで、このドーフィネ、特にこの第3ステージと第5ステージに照準を合わせていたというのですから、その執念には驚かされます。

この日の逃げ集団には、マチュー・ファンデルプールという大物も含まれていました。彼のような圧倒的な存在感を持つ選手と同じ集団で、しかも最終盤まで競り合うのは、並大抵の精神力ではできません。しかし、ロメオは冷静でした。「マチュー・ファンデルプールやリポヴィッツと一緒にいるのは本当に厳しかったけれど、彼らもまた、それぞれの責任を果たしてくれた。それが僕を助けてくれたんだ」と、彼は振り返ります。そして、最後の10kmが自分に有利だと確信していたと。彼のタイムトライアル能力、つまりルーラーとしての資質が、ここで最大限に発揮されたのです。ゴールまで6kmという絶妙なタイミングで仕掛けたアタックは、まさに完璧な戦術でした。

「『チャンピオンズリーグ』ドーフィネでの覚醒：マチュー・ファンデルプールとの共演」

「この勝利は僕のキャリアで最高の瞬間だよ」と、ロメオは喜びを爆発させました。しかし、彼の視線は既に次へと向かっています。翌日の個人タイムトライアルについて問われると、「もちろん、マイヨ・ジョーヌを守るのが目標だ。全力を尽くすよ」と力強く語りました。彼はU23（アンダー23）の世界タイムトライアルチャンピオンであり、翌日のTTではエリート世界チャンピオンであるレムコ・エヴェネプールとの直接対決が待っていました。この若き才能が、世界のトップランカーと肩を並べる瞬間を、誰もが固唾を飲んで見守ったことでしょう。

「彼はチャンピオンだ。僕の個人的な夢でもあるから、間違いなくインスピレーションになる」と、ロメオはエヴェネプールへの敬意を示しました。ドーフィネというレースは、ツール・ド・フランスの前哨戦として、世界のトップ選手たちが集う「チャンピオンズリーグ」のような場です。ロメオ自身も「UAEチームエミレーツ・XRGツアーの時とはレベルが違う。あの時は僕が100%で、他の選手が80%だったけれど、ここでは皆が100%だ」と、そのレベルの高さを実感しているようでした。そんな最高峰の舞台で、マチュー・ファンデルプールのようなスーパースターと逃げを共にする経験は、21歳のロメオにとって何物にも代えがたい財産になったに違いありません。

「チームへの献身と語学力：ロメオの多面的な魅力」

ステージ優勝という自身の目標を達成したロメオは、早くもチームへの献身を誓いました。Movistarの総合エースであるエンリック・マスをサポートするため、今後は山岳ステージで彼のために尽力すると明言したのです。個人としての栄光を掴んだ直後にも関わらず、チームのために働くことを躊躇しないその姿勢は、チームメイトやスタッフ、そしてファンからも高い評価を得ることでしょう。若くしてこれほどのプロ意識を持つ選手は、そう多くはありません。

そして、彼のインタビューを聞いていて驚かされたのは、その流暢なフランス語でした。「あなたのフランス語は素晴らしいですね！」という記者の問いかけに、ロメオは少しはにかみながらその理由を語ってくれました。なんと、彼のお母様がフランス語の先生だというのです。さらに、幼い頃から毎年夏にはピレネー山脈へ家族旅行に行き、ツール・ド・フランスを観戦していたとのこと。グルノーブルでの交換留学経験もあるそうで、フランスとの深い縁が感じられます。普段は英語を使うことが多く、少し忘れてしまっていたそうですが、今回のフランス語での記者会見が良い復習になったと笑っていました。この語学力は、ヨーロッパの多国籍なプロトンで活躍する上で、間違いなく大きなアドバンテージとなるでしょう。現地メディアやファンとのコミュニケーションもスムーズに行え、彼の人間的魅力もより一層伝わるはずです。

新時代の到来を告げるサインか？ロメオの未来

21歳でクリテリウム・デュ・ドーフィネのステージ優勝とマイヨ・ジョーヌ獲得。これは、ロードレース界に新たなスターが誕生したことを示す、非常に力強いサインであると私は感じています。彼の強みであるタイムトライアル能力は、現代のステージレースにおいて総合争いを有利に進める上で不可欠な要素です。今はまだ「山岳では彼ら（トップクライマー）には及ばない」と謙遜していますが、この若さでこれほどのポテンシャルを秘めていることを考えると、将来的にグランツールで総合上位を狙う選手へと成長していく可能性は十分にあります。

SNS上でも、彼の才能と、何よりもその語学力に多くのファンが驚きと期待の声を上げていました。スペインの若き才能が、マチュー・ファンデルプールやレムコ・エヴェネプールといった現役のトップスターたちと堂々と渡り合う姿は、まさに新時代の幕開けを予感させます。

さて、このドーフィネ、ロメオがマイヨ・ジョーヌをどこまで守り抜けるのか、そして総合エースのエンリック・マスをいかにサポートするのか。今後の展開から目が離せませんね。私も引き続き、現地から熱いレポートをお届けしていきますので、どうぞご期待ください！