リポヴィッツ、元バイアスロン選手としての存在感増す

「予測可能な」表彰台を覆すか？ フロリアン・リポヴィッツの鮮やかな一手

今シーズンのクリテリウム・デュ・ドーフィネ、特に序盤のステージで、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのフロリアン・リポヴィッツが見せた動きは、多くのファンを驚かせたのではないでしょうか。火曜日の第3ステージ、彼はチームの当初のプランとは異なり、自ら積極的にアタックを仕掛け、有力なエスケープに加わりました。このステージではイヴァン・ロメオ（モビスター）が勝利を掴みましたが、リポヴィッツは総合のライバルたちから54秒ものタイムを奪うことに成功しました。

彼はこう語っています。「最終的な表彰台はかなり予測可能です（彼曰く、ポガチャル、ヴィンゲゴー、エヴェネプールといった面々が並ぶと）。だから、私は他のチャンスを探さなければならないのです」。 この発言、実に彼らしいですよね。24歳にして、すでにパリ〜ニースで総合2位という実績を持つ彼が、グランツールの前哨戦とも言えるドーフィネで、既成概念を打ち破ろうとしている。この貪欲さこそが、彼の急成長の原動力だと私は見ています。

雪上からアスファルトへ：異色の転身がもたらす「エンジン」

フロリアン・リポヴィッツのキャリアは、ロードレース選手としては異色中の異色です。彼は元々、バイアスロンのトップ選手でした。12歳から14歳の頃にはドイツチャンピオンに輝いたというから驚きです。しかし、膝の大きな怪我に見舞われ、競技生活を一時中断せざるを得なくなります。そんな中、彼は夏季のトレーニングで取り組んでいた自転車に本格的に転向していくのです。

「ワールドツアー選手になれるとは夢にも思っていませんでした。でも、今なら言えます、バイアスロンよりも自転車の方が才能があったと（笑）」と、彼は笑顔で語ってくれました。16歳の時には、両親と共にジュネーブからニースまで800kmを走破したというエピソードには、「へぇ～」と唸ってしまいますね。アルプスの峠を何日もかけて走り抜く中で、彼の身体が持つ「エンジン」の強靭さを自覚したのでしょう。その後、グランフォンドのような長距離イベントにも挑戦し、時には8時間にも及ぶ激戦を制することもあったと言います。「どうやって勝てたのか、今でも分からない時があるんです。でも、とにかく最後まで持ちこたえるエンジンは持っていました」。 このバイアスロンで培われた心肺機能と、長距離ライドで鍛えられた持久力こそが、彼のロードレースにおける強み、すなわち「エンジン」の核となっているのは間違いありません。

試練を乗り越え、覚醒へ：内向的な若者の成長

しかし、彼のロードレースキャリアは決して順風満帆ではありませんでした。初めてのレースでは何が起きるか分からず、2度3度と落車も経験したと言います。さらに、パンデミックによるロックダウン、そして何よりも彼を悩ませたのは、度重なる健康問題でした。「冬から春にかけて、流行しているウイルスはほとんど全てにかかってしまうんです。バイアスロン選手だった頃もそうでした」。 この言葉を聞くと、彼のこれまでの苦労が目に浮かぶようです。しかし、彼はこの課題にも真摯に向き合い、今では2、3日休めば回復できるようになるなど、着実に改善を遂げています。

昨シーズン、ツール・ド・ロマンディで総合3位、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合7位という驚くべき成績を残したことで、彼のキャリアは大きく飛躍しました。「昨年は全く期待されていなかったので、自分がこれほどできるとは思っていませんでした」。しかし、実績を積み重ねるにつれて、彼自身へのプレッシャーも増したと語ります。「パリ〜ニースや今回のドーフィネの前は、もっとプレッシャーを感じます。自分が再びできることを証明したいからです」。 彼はまた、自身の性格についても触れています。「私はシャイで内向的で、あまり話すタイプではありません。人と親しくなるのは簡単ではないでしょうね（笑）」。なるほど、これは意外な一面です。しかし、リーダーとしての役割を担うにつれ、チームメイトとのコミュニケーションの重要性を痛感し、努力していると言います。スポーツディレクターやコーチ、さらにはチームのメンタルコーチとも連携し、日々のレースを通じて成長している彼の姿には、「そうだったのか！」と深く頷かされます。

グランツールへの夢：プレッシャーを恐れない新星

さて、多くのファンが最も注目しているのは、彼のツール・ド・フランスへの出場でしょう。彼は「ツールへの参加はまだ未定で、ドーフィネの結果次第で決まります」と語っています。しかし、その視線はすでにグランツールでの活躍へと向いています。「今後2、3年のうちに、総合系選手になりたいと思っています。もちろん、大きなレースでステージ優勝もしたいですが」。 グランツールで総合優勝はまだ「大きすぎる」と謙遜しつつも、「全てがうまくいけば、表彰台も可能」と語る彼には、並々ならぬ自信が感じられます。

「プレッシャーは恐れません」――この力強い言葉に、彼の覚悟が表れています。ロードレースを始めてまだ6年目。学ぶべきことは山積していると自覚しながらも、パリ〜ニースでの成功体験が彼に自信を与え、苦しみを乗り越える原動力となっているのです。 フロリアン・リポヴィッツが、このドーフィネで、そして来るべきグランツールで、どんなサプライズを巻き起こしてくれるのか。彼の今後の動向から、ますます目が離せませんね！

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