マルティネス「どこまで行けるか誰に分かる？」

若きレニー・マルティネス、「後悔なし」のロマンディ総合2位と高まる野心

皆さん、こんにちは。グランツールを中心に追いかけている山田健一です。

先日閉幕したツール・ド・ロマンディ、熱い一週間でしたね！ 特に、最終日まで総合優勝争いを演じた若きフランス人クライマー、レニー・マルティネス（Bahrain-Victorious）の走りは、多くのファンの心を掴んだのではないでしょうか。最終的には個人タイムトライアルでJoao Almeida（UAEチームエミレーツ・XRG）に逆転を許し、総合2位という結果に終わりましたが、彼の言葉からは敗北感よりも、確かな手応えと、そして計り知れないほどの大きな野心が感じられました。今回は、この21歳の逸材の「今」と「これから」について、じっくりと紐解いていきましょう。

総合2位という結果、それでも「後悔はない」

ツール・ド・ロマンディ最終日、ジュネーブの街を舞台に行われた個人タイムトライアル。山岳ステージでJoao Almeidaを下し、マイヨ・ジョーヌを掴み取っていたレニー・マルティネスは、タイムトライアルを得意とするAlmeidaを相手に、26秒差で総合優勝を逃しました。しかし、レース後、彼に電話で話を聞いたという記事を読むと、「後悔はない」と語っていたそうです。

これは一体どういうことでしょうか？ 最終日、まさに目の前まで来ていたワールドツアーでの総合優勝を逃して、ですよ？ 彼の言葉からは、タイムトライアルでのAlmeidaとの差は、ある程度織り込み済みだったという冷静さが感じられます。父親は「ものすごくストレスを感じていた」そうですが、レニー本人は驚くほどリラックスしていたとか。「このコースでJoao Almeidaに勝つのは難しいだろう」と、彼は現実をしっかりと見据えていたのです。それでも総合 podium に上ることを強く望んでいたというあたりに、彼の秘めた闘志が垣間見えますね。「30秒差でフィニッシュしたタイムトライアルで、これ以上速く走るのは難しかった」という言葉は、今の自分の限界を知りつつも、その中で最善を尽くしたという自負の表れでしょう。この若さで、この冷静さ。なるほど、ただ者ではないですね。

経験を糧に、常に目標を上方修正

今回のツール・ド・ロマンディでの総合2位は、レニー・マルティネスにとって大きな経験となりました。ワールドツアーのステージレースで最終日までリーダーとして走る、というのは誰もができる経験ではありません。彼はこれを「経験を積んでいる」と捉え、「いつかまた最終日にリーダーとしてタイムトライアルを走る日が来るかもしれない」と、既に未来を見据えています。

フランス人選手がワールドツアーのステージレースで総合優勝から遠ざかって久しい中で、彼が最終日までその可能性を見せたことは、フランスのサイクリング界にとっても大きな希望です。本人は「ワールドツアー総合優勝は目標ではないが、実現できたら素晴らしいだろう」と語りつつも、「タイムトライアルがなければ勝てただろうが、まだ21歳。総合優勝に手が届きそうだった。今後数年でさらに近づけるだろう」と、明確に総合優勝を「達成可能なこと」と捉えています。

シーズン当初、彼の目標はパリ〜ニースでの区間優勝だったそうです。それを達成したことで、「思っていたよりも達成可能だった。でも一歩ずつ進まなければ」と感じたと言います。今回のツール・ド・ロマンディでの podium も、シーズン初めには考えていなかったこと。彼は「レースごとに、勝利ごとに、目標が上方修正されていく」と語っています。そして、「いつかどこまで行けるか、誰にわかる？」という言葉で締めくくりました。この言葉を聞いたとき、ゾクゾクっとしませんでしたか？ 彼の底知れぬポテンシャルと、天井知らずの野心が伝わってきます。そうだったのか、彼は常に自分自身に挑戦し続けているんだな、と改めて感じさせられました。

ドーフィネ、そしてツール・ド・フランスでの役割

ツール・ド・ロマンディを終えたレニー・マルティネスは、数日間の休息の後、スペインのテネリフェで2週間の高地合宿に入る予定です。その後の主要目標は、クリテリウム・デュ・ドーフィネ（6月8日〜15日）とツール・ド・フランス（7月5日〜27日）です。

クリテリウム・デュ・ドーフィネでは、チームメイトのサンティアゴ・ブイトラゴと共同リーダーとして臨む可能性があるとのこと。「サンティアゴも素晴らしいクライマーだから、一人じゃないのはクールだ」と、チーム内の良好な関係性も伺えます。ドーフィネでは、区間優勝と良い総合順位を目指すようです。

そして、多くのファンが最も注目するであろうツール・ド・フランス。彼はここで総合優勝を狙うか、という問いに対し、「ツールは全く別の話だ。総合を狙うとは思わない」と明言しました。その理由を「3週間のレースだし、まだ若いから」と説明しています。これは、確かに！ と思わせる現実的な判断です。グランツール、特にツール・ド・フランスは、ステージレースの中でも別格の厳しさがあります。若手がいきなり総合優勝争いに絡むのは至難の業ですし、無理をすればその後のキャリアに影響することも少なくありません。彼は「通常はサンティアゴが総合、僕は区間優勝狙いになるだろう。それでいい」と語っています。

ツールでの区間優勝。これもまた、レニー・マルティネスにとっては大きな目標となるでしょう。逃げに乗っての勝利か、あるいは山頂フィニッシュでのエースアシストからの飛び出し、はたまた有力選手たちとの少数精鋭でのバトルか。彼のクライミング能力があれば、ツールでの区間優勝は十分に射程圏内です。

未来を担う逸材のこれからに注目！

ツール・ド・ロマンディでの活躍で、レニー・マルティネスの存在感はさらに増しました。若手らしからぬ落ち着きと、内に秘めた強い野心。そして、一歩ずつ着実にステップアップしていく戦略的な考え方。彼の言葉を聞いていると、これから世界のトップシーンで彼の名前を聞く機会が間違いなく増えるだろう、と確信できます。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ、そしてツール・ド・フランスでの彼の走りから、目が離せません。特に、サンティアゴ・ブイトラゴとの連携や、ツールでの区間優勝に向けたアタックには注目したいところです。彼が「いつかどこまで行けるか」――その答えを、私たちはこれから彼の走りを通じて見届けることになるでしょう。次もぜひ、山田健一の視点でお届けする記事を読んでいただけると嬉しいです。