サインツ、4日目の審理も進展なし

「ドクター・マブゼ」ことベルナール・サインツの控訴審、膠着状態

フランスのサイクルロードレース界で長年にわたり暗躍してきたベルナール・サインツ、通称「ドクター・マブゼ」の控訴審。その4日目は、決定的な進展を見せることなく終わりました。一体何が争点となっているのでしょうか？

サインツ邸の金庫と若いサイクリストの日記

2017年秋、サインツの城への家宅捜索で発見された金庫。そこには、彼を追い詰める証拠が隠されていると期待されました。しかし、見つかったのは古銭と50フラン紙幣のみ。また、彼が指導していた若いサイクリストの日記には、「EPO」「テストステロン」「コルチコイド」といった言葉が並んでいましたが、本人は「プロになる夢が遠のき、妄想に囚われていた時期の落書きだ」と主張。ドーピングとの直接的な関連を示す証拠は見つかりませんでした。

「状況証拠の積み重ね」vs.「絶対的な証拠」

サインツの弁護士であるエクトル・ベルナルディーニは、訴追は単なる「状況証拠の積み重ね」に基づいていると主張します。ドーピングの助長、違法な医療行為、違法な薬物販売。これらの罪に対する有罪判決を裏付ける「絶対的な証拠」は存在しない、と。サインツ自身も、「私は追いかけられるのが好きだ」と語り、まるで自分が劇場にいるかのように、この状況を楽しんでいるかのようです。

「私は不当な罰金を払うつもりはない」

過去に4度、合計5,000ユーロの罰金と執行猶予付きの懲役刑を科せられているサインツ。しかし、彼は罰金を支払うことを拒否しています。「私は不当な罰金を払うつもりはない。執行官にも会ったことがない」と彼は主張します。彼の質素な生活ぶりも強調され、938ユーロの年金と、自家製ハーブチンキの販売で月200～300ユーロの収入があるのみだと述べています。

真相は闇の中？

フランス自転車連盟の法務ディレクターであるクリストフ・ラヴェルニュは、「網の目はますます細かくなっているが、依然として網だ」と表現しました。30年にわたりサインツを追ってきた彼も、決定的な証拠を掴むことはできていません。サインツは本当に「ただの怪しいおじいさん」なのでしょうか？それとも、巧妙に法を掻い潜る「ドクター・マブゼ」なのでしょうか？ 彼の裁判は、フランスの自転車界に巣食う闇を映し出す鏡なのかもしれません。