トロンション「狂ったように楽しんだ」

「狂ったように楽しんだ」勝利！ バスティアン・トロンションがトロ・ブロ・レオンで掴んだ最高の瞬間

皆さん、こんにちは！世界中のサイクルロードレースを追いかける松崎 愛です。先週末、フランスのブルターニュ地方で開催されたトロ・ブロ・レオン。このレースで、デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのバスティアン・トロンション選手が、まさに「エピック（叙事詩的）」と呼ぶにふさわしい劇的な勝利を飾りました。道間違いにパンク2回…普通なら心が折れてしまうようなアクシデントに見舞われながらも、彼はこう語っています。「狂ったように楽しんだ」と！その言葉の裏にある、彼の強さ、そしてこのレースの特別な魅力に迫ってみましょう。

波乱万丈の道のり、それでも折れない心

トロ・ブロ・レオンは、「リバン」と呼ばれる未舗装路がコースに組み込まれており、まるで春のクラシックのような混沌とした展開になりやすいことで知られています。今年のレースも例外ではありませんでした。バスティアン・トロンション選手は、レース中に道を間違え、さらに前輪のパンクに2度も見舞われるという不運に見舞われます。集団から遅れ、トップとの差は40秒。多くの選手がここで勝負権を失うような状況です。

しかし、彼は驚くほど冷静でした。「怒っても何も変わらない」。かつてストラーデ・ビアンケのような荒れたレースで良い感触を持ちながらもアクシデントに見舞われた経験が、彼に「自分のレースをする」ことの大切さを教えてくれたのかもしれません。さらに、この日はお父様の誕生日だったそうで、「楽しめ」という言葉を胸に、家族への思いが彼に力を与えたといいます。まさに、心技体の「心」の部分が試される瞬間でしたね。

チームの勢いと「仲間」との勝利

デカトロン・AG2Rラモンディアール チームは、この週末、驚異的な強さを見せていました。トロ・ブロ・レオンに先立ち、チームはツール・デュ・フィニステールでオーバン・スパルフェル選手が優勝、グランプリ・デュ・モルビアンではブノワ・コスヌフロワ選手が3度目の勝利を挙げていたのです。チーム全体に勝利への強い自信と勢いがあったことは間違いありません。

バスティアン・トロンション選手も、レース前には表彰台を目標としていたものの、チームの好調ぶりを見て「勝利を狙える」と感じていたそうです。そして、終盤にはチームメイトのピエール・ゴーテラ選手と共に抜け出し、二人でフィニッシュを目指しました。「仲間と一緒にゴールしたかった。写真も二人のほうが良い」という言葉からは、勝利の喜びを分かち合えるチームメイトの存在が、彼にとってどれほど大切だったかが伝わってきます。個人競技でありながら、チームの力、そして仲間との絆が勝利を引き寄せた好例と言えるでしょう。

雨とリバンが呼んだ「楽しさ」

トロ・ブロ・レオンの最大の難所であり魅力でもあるのが、ブルターニュ地方特有の泥道や砂利道、草地などが混じる「リバン」です。そして、この日の悪天候（雨）が、レースをさらに予測不能な「大工事現場」へと変貌させました。モトが転倒したり、車が道を塞いだり…。まさにサバイバルレースの様相を呈したのです。

普通なら避けたいような悪コンディションですが、バスティアン・トロンション選手は違いました。「雨が降るって知って、本当に嬉しかった」と言うほど、彼は混沌とした状況をむしろ楽しんでいたのです。集団の中で罵り合いが起こるような緊迫した場面でも、彼は一人冷静に笑っていたと語っています。「ラペ（削り合い）のようなコースでは、落ち着いていることが大切だ」。確かな技術と経験、そして何より「楽しむ」というメンタリティが、彼を勝利へと導いたのでしょう。この、逆境を楽しむ姿勢、見習いたいものですね！

感情が溢れ出した最高の瞬間

フィニッシュラインを越えた後、バスティアン・トロンション選手は指を頭に当てるジェスチャーを見せました。そして、インタビューでは声が震え、感情を抑えきれない様子でした。これまで秘めていたポテンシャル、高い目標を達成できるという確信がありながらも、なかなか結果に繋がらない日々。それが、このトロ・ブロ・レオンでの勝利で一気に報われたのです。

道を間違え、パンクを繰り返しても、「死んだ」とは一度も思わなかった。「勝てる」とも思わなかったが、「最後まで戦い続ける」ことだけを考えていた。その強い意志が、不可能を可能にしました。特に道を間違えたリバンでは、冷静に「後ろの集団に追いつかれないように」と考え、そこまでに築いたリードを活かそうとしていたとのこと。こうした状況判断能力も、彼の強さの一因でしょう。

「これまでのキャリアで最高の勝利」。そう言い切る彼の言葉には、この勝利が単なる一勝以上の意味を持つことが伺えます。SNSでも、彼の「粘り強さ」や「本物」の走り、そしてレースの「壮大さ」「ストラーデ・ビアンケのよう」といった声が多数見られました。多くのファンが、彼の走りに感動し、共感したのです。

この劇的な勝利を糧に、バスティアン・トロンション選手が今後どのような活躍を見せてくれるのか、本当に楽しみですね！そして、トロ・ブロ・レオンのようなユニークなレースが、これからも多くのドラマを生み出してくれることを期待しています。