マデュアス、勝利は逃したが豚を持ち帰る

皆さん、こんにちは！モナコから中村 リサです。

週末のレース、皆さんはどのようにご覧になりましたか？私は選手たちのSNSを追いながら、彼らの小さな呟きや写真に込められた想いを読み解くのが日課なのですが、今回はフランスで行われたあるレースの結果と、その後の出来事に思わず「へぇ～！」「そうだったのか！」と声が出てしまいました。

特に注目したのは、Groupama-FDJのヴァランタン・マドゥアス選手です。

勝利を逃すも、最高の「地元愛」を証明したヴァランタン・マドゥアス

ブルターニュ地方で開催されたワンデーレース、「トロ・ブロ・レオン」。このレースは「西フランスのパリ〜ルーベ」とも呼ばれるほど、未舗装路（リズィエール）が多く含まれる過酷なコースが特徴です。今年のレースも、選手たちは泥と埃にまみれながら、文字通り道を切り拓いていきました。

ヴァランタン・マドゥアス選手にとって、このトロ・ブロ・レオンは特別なレースでした。彼はブルターニュ地方フィニステール県の出身で、コースの一部は日頃の練習で走り慣れた道。初めての出場でしたが、まさに地元中の地元を走る凱旋レースだったのです。

熱戦の末、表彰台へ

レースは序盤から激しい展開となりました。地元の大声援を受けるヴァランタン・マドゥアス選手は、集団の中で常に前を伺い、勝負どころでは力強い走りを見せました。最後まで優勝争いに絡みましたが、最終的にはデカトロン・AG2Rラモンディアール チーム-AG2Rのバスティアン・トロンション選手、ピエール・ゴーテラ選手に先行を許し、3位でフィニッシュ。

勝利こそ逃したものの、初出場で表彰台に上るというのは素晴らしい結果です。レース後の彼の表情からは、悔しさとともに、走り切った達成感と地元への感謝が感じられたように思います。

トロ・ブロ・レオン名物！「最優秀ブルターニュ人」の賞品

さて、ここからがトロ・ブロ・レオンを特別なものにしているユニークな伝統のお話です。このレースでは、優勝者とは別に、ブルターニュ出身者の中で最上位だった選手に特別な賞が贈られます。そして、今年の「最優秀ブルターニュ人」は、もちろん地元の英雄、ヴァランタン・マドゥアス選手でした！

そして、その賞品が何だと思いますか？ 実は、小さな可愛い子豚なんです！

レースの公式Xアカウントには、トロフィーの隣で子豚を抱きかかえるヴァランタン・マドゥアス選手の写真と動画が投稿されていました。子豚の名前は、レース名にちなんで「レオン」。彼の腕の中でちょこんと収まっている様子は、レースの泥臭さとは対照的な、何とも微笑ましい光景でした。

ウェスト・フランス紙の取材に対し、ヴァランタン・マドゥアス選手は「どうするか考えないと。可愛いといいんだけど」とコメントしています。この一言に、突然家族が増えた戸惑いと、新しい命への少しの愛情が入り混じっているように感じられて、思わずクスリとしてしまいました。

SNSのコメント欄も大盛り上がりで、「今日の自転車は獣的だ。イタリアにはヤギ、ブルターニュには子豚」なんてコメントも見かけました。「イタリアのヤギ」というのは、ジロ・デ・イタリアの山岳賞ジャージがマリア・ローザならぬ「マリア・アズーラ」で、イタリア語でヤギを意味する「Capra」がクライマーを指す隠語であることにかけたジョークでしょうか。レースの厳しさの中に、こんなユーモアが生まれるのも面白いですね。

レースの伝統と選手の人間味

トロ・ブロ・レオンのような、地域に根ざしたユニークな伝統を持つレースは、ロードレースの魅力の一つです。勝利を目指すアスリートとしての顔と、子豚を抱いて少し困ったような顔を見せる一人の人間としての顔。その両方を見せてくれたヴァランタン・マドゥアス選手に、改めて親近感を覚えました。

子豚のレオンが今後どうなるのか、気になりますよね？ きっと、ヴァランタン・マドゥアス選手の新しい家族として、大切にされることを願っています。そして、彼がこのユニークな経験を力に変え、今後のレースでさらに活躍してくれることを楽しみにしています！