ジロ・デ・イタリア

ジロ・デ・イタリア第3ステージ：ヴァローナの海岸線で繰り広げられる駆け引き、逃げとメイン集団の攻防を山田健一が読み解く

皆さん、ボンジョルノ！グランツール担当の山田健一です。

前日、アルバニアの首都ティラナを舞台に行われた個人タイムトライアルは、まさに息をのむ展開となりましたね。「トルペド・ブリタニコ」ことジョシュア・ターリング（イネオス・グレナディアーズ）が圧倒的なパワーで勝利を飾り、ジロ史上最年少の個人TT勝者という新たな歴史を刻みました。そして、総合争いではプリモシュ・ログリッチ（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）が最終走者として登場し、劇的な逆転でマイヨ・ローザを獲得。わずか1秒差でのリーダー交代劇は、今年のジロが最後まで目が離せない戦いになることを予感させました。落車のアクシデントがありながらも、フアン・アユソ（UAEチームエミレーツ・XRG）が優勝者から17秒差と粘りを見せたのも特筆すべきでしょう。

さて、今日はいよいよ第3ステージ。舞台はアルバニア南部の美しい海岸都市、ヴァローナです。スタートもゴールもヴァローナという周回コースに近いレイアウトで、距離は160km。序盤は平坦基調ですが、レース中盤にはカテゴリー山岳が登場し、そして最後は海岸線沿いの平坦フィニッシュ。逃げ切りか、それとも集団スプリントか。前日のタイムトライアルで総合が大きく動いた後だけに、各チームの戦術的な駆け引きが非常に興味深い一日となりそうです。

序盤から形成された6名の逃げ集団

レースはスタート直後から活発な動きを見せました。いくつかアタックが試みられた後、落ち着いて形成されたのは6名の逃げ集団です。その顔ぶれはこちら。

ドリース・デポーテル Bondt（デカトロン・AG2R・ラモンディアル）
ロレンツォ・ジェルマーニ（グルパマ・FDJ）
ジョシュア・ターリング（イネオス・グレナディアーズ）
マーク・ドノヴァン（Q36.5プロサイクリングチーム）
クリス・ハミルトン（チューダー・プロサイクリング）
アレッサンドロ・トネッリ（ポルティ・ヴィジトマルタ）

このメンバーを見て「なるほど！」と思った方もいるのではないでしょうか。前日勝利のジョシュア・ターリングが再び逃げに乗っています。TTスペシャリストの彼がなぜ平坦混じりの逃げに？これは、中間スプリントポイントや山岳ポイントを狙いつつ、レースのペースをコントロールしたいイネオス・グレナディアーズの意図が見え隠れしますね。また、ジロでのステージ優勝経験を持つドリース・デポーテル Bondtや、積極的に動きを見せるマーク・ドノヴァン、アレッサンドロ・トネッリといった曲者も含まれており、この逃げが単なる「消化レース」にならない可能性を示唆しています。

中間スプリントとメイン集団の牽引

最初の主要ポイントである中間スプリント地点、ジョルム（34.5km地点）では、逃げ集団内でポイント争いが展開されました。結果は以下の通りです。

アレッサンドロ・トネッリ（ポルティ・ヴィジトマルタ） - 12 pts
マーク・ドノヴァン（Q36.5プロサイクリングチーム） - 8 pts
ドリース・デポーテル Bondt（デカトロン・AG2R・ラモンディアル） - 5 pts
ロレンツォ・ジェルマーニ（グルパマ・FDJ） - 3 pts
クリス・ハミルトン（チューダー・プロサイクリング） - 1 pt

逃げ集団は、この中間スプリントを通過後もメイン集団に対し3分以上のリードを保っています。メイン集団では、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエとリドル・トレックがペースをコントロールしている模様です。ログリッチのマイヨ・ローザを守りたいレッドブル・ボーラ・ハンスグローエと、スプリントでの勝利を狙うリドル・トレック。それぞれの思惑が一致し、タイム差が極端に広がることはなさそうです。しかし、前日のタイムトライアルでマッズ・ピーダスン（リドル・トレック）やマティアス・ヴァチェク（リドル・トレック）がログリッチに迫る走りを見せたように、リドル・トレックの勢いには注目すべきでしょう。

前日のタイムトライアルを改めて分析

前日の個人タイムトライアルは、本当に見応えがありました。特に21歳のジョシュア・ターリングの走りは圧巻の一言。「へぇ～」と思われた方もいるかもしれませんが、彼はジロの個人TTで勝利した最年少記録を更新したのです。彼のパワーデータを見ると、平均480ワット、ピーク960ワット、平均速度55.6km/hという驚異的な数字が並びます。これはTTスペシャリストとして世界トップクラスの実力であることを証明しています。「確かに！」、あの圧倒的な走りはデータにも裏付けられていたのですね。

そして、総合リーダーの座はプリモシュ・ログリッチの手に渡りました。彼がティラナのフィニッシュラインを越えた時の表情は、安堵と達成感に満ちていたように見えました。落車で怪我を抱えていたフアン・アユソが、それでも上位に食い込んだのは、彼のポテンシャルの高さを改めて示すものです。総合順位はログリッチを筆頭に、以下のようになっています。

プリモシュ・ログリッチ（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）
マッズ・ピーダスン（リドル・トレック）
マティアス・ヴァチェク（リドル・トレック）
ブランドン・マクナルティ（UAEチームエミレーツ・XRG）
フアン・アユソ（UAEチームエミレーツ・XRG）
イサーク・デル・トロ（UAEチームエミレーツ・XRG）
マックス・プール（チームピクニック・ポストNL）
アントニオ・ティベーリ（バーレーン・ヴィクトリアス）
マイケル・ストーラー（チューダー・プロサイクリング）
ジュリオ・ペリツァーリ（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ）

UAEチームエミレーツ・XRGが総合トップ10に3名も送り込んでいるのが印象的ですね。彼らの層の厚さが、今後のレースでどう活かされるのか、注目が集まります。

ヴァローナの難コースと終盤のシナリオ

今日のステージの最大の難所は、カファ・エ・リョガラセ峠でしょう。距離11km、平均勾配7%超というこの登りは、逃げ集団にとってはリードを広げるチャンス、メイン集団にとってはスプリンターやパンチャーを振り落とすポイントとなり得ます。「そうだったのか！」、海岸沿いの平坦だけではない、意外と厳しい山岳が潜んでいるのです。

この峠を越えた後の長い下りと、フィニッシュ手前の1200mの直線が、今日のステージをさらに面白くします。もし逃げ集団が十分なリードを保てれば、彼らの中から勝者が出るでしょう。特に逃げメンバーにはTTやスプリント力のある選手も含まれており、スリリングな展開が予想されます。一方、メイン集団がタイム差を縮めてきた場合、強力なスプリンターチームが牽引を開始し、最後は集団スプリントに持ち込まれる可能性が高いです。ログリッチがマイヨ・ローザを守るために積極的に集団をコントロールするのか、それとも温存して後続の山岳ステージに備えるのか、彼の判断もレース展開に影響を与えるでしょう。

余談ですが、アルバニア出身のレジェンド、ヴィンチェンツォ・ニバリが「戦略的なサイクリングが懐かしい、今はすべてワットだ」と語っていたのが心に残ります。現代のロードレースはデータ分析が非常に重要ですが、それでも選手の直感や経験、そしてチームワークが勝敗を分ける瞬間は必ず訪れます。今日のヴァローナのコースは、まさにそうした戦略とパワーがぶつかり合う場になるのではないでしょうか。

締めくくり：ヴァローナの勝者は誰だ？

ヴァローナの美しい海岸線が、今日のステージのゴール地点。逃げ切りのドラマか、それとも集豪快な集団スプリントか。プリモシュ・ログリッチはマイヨ・ローザを守れるのか。ジョシュア・ターリングは再び輝きを見せるのか。目が離せません！

レースはまだ序盤ですが、すでに様々なドラマが生まれています。明日以降、本格的な山岳ステージや再びの平坦ステージが控えており、総合争いもステージ優勝争いも、さらに熱を帯びていくことでしょう。

さあ、ヴァローナの勝者は一体誰になるのか。最後までしっかりと見届けていきましょう！次のレポートもお楽しみに！

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