ジロ・デ・イタリアのクライマーたち

ジロ・デ・イタリアにまさかの珍客！ 山岳から現れた“ヤギ”がペロトンを震撼させた瞬間

ジロ・デ・イタリアは、常にドラマとサプライズに満ちたレースですが、今年の第3ステージでは、想像だにしなかった珍客が登場しました。なんと、レース集団のど真ん中にヤギが乱入！ 一瞬、コース上が騒然となり、関係者の誰もが肝を冷やしたことでしょう。幸い、大きな事故には繋がらず、レースは続行されましたが、この出来事は今年のジロのハイライトの一つとして語り継がれるに違いありません。グランツール担当として、これほど予想外のシーンに立ち会うのは初めてかもしれません。

アルバニアの山岳で何が起こったのか？

この衝撃的な出来事は、アルバニアのヴロラ近郊、ゴールまで残り約120km地点で発生しました。レースは穏やかな流れで山岳地帯を進んでいたのですが、突如、コース脇の斜面から一頭のヤギが飛び出してきました。一体何が起こったのか？ カメラが捉えた映像は、まさに決定的瞬間でした。ヤギは躊躇なくペロトンに突っ込み、選手たちは咄嗟に回避行動をとります。特に、チーム Intermarché の選手は、ヤギと衝突寸前でした。数センチの差で難を逃れた様子は、見ているこちらもヒヤリとさせられました。

幸いなことに、このヤギ乱入による落車や選手の負傷は報告されていません。集団後方だったこと、そして選手たちの卓越したバイクコントロール能力が、最悪の事態を回避したと言えるでしょう。しかし、もしこれが集団前方や、より高速で密集した状況で起こっていたら…考えるだけでも恐ろしいことです。「まさか、ヤギにアタックされるとは！」選手たちの心中は、きっとそんな感じだったのではないでしょうか。

ヴロラ周辺のテクニカルコースと“あの山岳”

第3ステージは、ヴロラ発着の160km。アルバニアでの最終日となるこのステージは、単なる平坦ではありませんでした。中盤にはカテゴリー2の山岳、クァファ・エ・ロガラセス（10.5km、平均勾配7.4%、最大14%）が待ち構えています。この山岳はゴールまで約40kmという位置にあり、今日のレース展開において非常に重要なポイントとなる可能性を秘めていました。登坂力のあるパンチャーや、下りが得意な選手にとっては絶好のアタックポイントです。

レースはヤギ乱入のアクシデント以前から、4人の逃げ集団が形成され、中間スプリントも行われるなど、動きのある展開となっていました。クァファ・エ・ロガラセスをどう攻略するか、そして山岳後の下りやフィニッシュまでの平坦区間での位置取りが、ステージ優勝を左右するカギとなる、そう分析していました。そんな戦術的な駆け引きが繰り広げられる中での、まさかのヤギ登場。レースの緊張感を一瞬で吹き飛ばす、ある意味での“和み”を提供してくれたのかもしれません。

予期せぬ出来事とグランツールの魅力

サイクルロードレース、特にグランツールでは、コース脇の観客や車両、あるいは路上の障害物によるアクシデントは時折発生します。しかし、今回のような野生動物の、しかもヤギの乱入というのは、非常に珍しいケースです。過去にも、犬や猫、あるいは鳥がコースに迷い込むことはありましたが、集団に突っ込んでくるほど大胆なヤギは初めて見ました。「自然の中を走る」というロードレースの特性を改めて実感させられる出来事であると同時に、常に何が起こるか分からない、というグランツールのスリリングな一面を象徴しているようにも感じます。

選手たちは、このような予期せぬ事態にも瞬時に対応する能力が求められます。今回のIntermarchéの選手の反応を見ても、日頃から培われた危機回避能力の高さがうかがえます。このヤギ乱入劇は、SNSでも大きな話題となっており、「今年のジロはヤギも走るのか！」「選手が無事でよかった」「まさかこんな光景を見るとは」といった驚きと安堵の声が多く見られます。レースの勝敗だけでなく、こうしたハプニングもまた、ロードレースの大きな魅力の一つであると、私は考えます。

この後、レースはイタリアへと舞台を移します。ヤギに驚かされた選手たちが、次のステージでどんな走りを見せてくれるのか。そして、クァファ・エ・ロガラセスを越えた後の展開はどうなったのか。引き続き、ジロ・デ・イタリアから目が離せません。