レース終盤にバイクが妨害

まさか… ジュニア版リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで起きた衝撃のアクシデント！

ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアといったグランツールはもちろん、クラシックレースからマイナーレースまで、世界中の自転車レースを文字通り24時間365日追い続ける松崎 愛です。今日も地球の裏側で起きているレースの鼓動を感じながら、日本のファンの皆さんにお届けしたいホットなニュースがあります。

先日開催された「自転車界のモニュメント」の一つ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのジュニアカテゴリーで、信じられないようなアクシデントが発生しました。優勝争いの真っ只中、フィニッシュラインを目前にして、なんとコース上のオートバイが選手たちの進路を妨害するという前代未聞の事態が起きたのです。これはもう、「まさか…」としか言いようがありませんでした。リアルタイムでこのシーンを目にした時、思わず画面に向かって叫んでしまったほどです。

最終決戦、ラ・ルドゥートの激闘

舞台は、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを象徴する最も有名な上り坂、「ラ・ルドゥートの丘」。ここで勝負を決める、というのはまさにこのレースの伝統であり、多くの伝説が生まれてきた場所です。ジュニアレースとはいえ、その重要性は変わりません。この日、最終盤のラ・ルドゥートで、優勝をかけて激しいデッドヒートを繰り広げていたのは、Cannibal-バーレーン・ヴィクトリアス U19所属のベルギー人選手、Leander De Gendtと、Fensham Howes-Mas Designのイギリス人選手、Harry Hudsonでした。

二人とも若き才能の塊で、未来のプロトンを担うであろう注目の存在。特にLeander De Gendtは、来季にはBahreïn-バーレーン・ヴィクトリアスの下部組織であるCannibal-バーレーン・ヴィクトリアスのエスポワール級への昇格が決まっている期待の星です。そんな二人が、クラシックの聖地で火花を散らしている。その緊迫感たるや、シニアのレースに勝るとも劣らないものがありました。

勝利は目前、その時…！

ラ・ルドゥートの頂上に設けられたフィニッシュラインがすぐそこに見えている、まさにその瞬間でした。Harry HudsonとLeander De Gendtが最後の力を振り絞り、ハンドルを投げ合うような勢いでスプリントを開始しようとした刹那、コース脇を進んでいた警察のオートバイが、突如として右へ急旋回したのです。

このオートバイの動きは、まさにLeander De Gendtの進路を遮る形となりました。彼のラインは完全に塞がれ、避けようとして大きく減速し、コースを変えざるを得ませんでした。その隙を突いて、Harry Hudsonが先にフィニッシュラインを駆け抜け、勝利を掴みました。もし、あのオートバイがいなければ… Leander De Gendtがそのまま真っ直ぐスプリントできていたら… 結果は全く違ったものになった可能性が極めて高い。勝利の女神が、思わぬ形でLeander De Gendtから遠ざかってしまった瞬間でした。

監督の怒り、そして運営への提訴

このアクシデントに対し、Leander De Gendtが所属するCannibal ジュナヤ・フランシのジュナヤ・フランシ van Mechelen監督は怒りを露わにしています。彼はDirectVéloの取材に対し、「警察官はフィニッシュ地点がラ・ルドゥートの頂上にあるチャペルだという書類を持っていたらしい。だから、彼は選手たちに非常に接近していたんだ。フィニッシュラインがあそこにあることを知らなかったんだよ。右に行かなければならないと理解したときには、もう遅すぎたんだ」と説明しました。

そして、「あのようなインシデントは、リエージュのようなビッグレースでは決して起きてはならないことだ」と、運営側の準備不足、特にコース上の安全管理体制に対する強い不満を表明しました。チームはすぐにコミッセール（審判団）に対し、Harry HudsonとLeander De Gendtの同着優勝とするよう訴えを起こしましたが、残念ながらこれは却下されたとのこと。ルールの壁は厚い、ということでしょうか。しかし、選手の努力が外部要因で簡単に覆されてしまう現状には、サイクルロードレースファンとして、そしてジャーナリストとして、非常に複雑な感情を抱かざるを得ません。SNSでもこの件は大きな波紋を呼び、「なぜ事前にコースを完全に把握しておかないのか」「同着にすべきだった」といった声が多く見られました。読者の皆さんも、きっと同じように感じたのではないでしょうか？

若き才能の未来は輝く

今回のインシデントは、Leander De Gendtにとって非常に悔しい経験となったことは間違いありません。しかし、この一件が彼のキャリアに暗い影を落とすかと言えば、それは全く違うでしょう。彼はまだ17歳という若さでありながら、すでにトップチームの下部組織であるCannibal-バーレーン・ヴィクトリアスのエスポワール級への昇格を決めている、将来を嘱望されるタレントです。

ラ・ルドゥートであれほどの力強い走りができること、そして優勝争いに絡める実力があること自体が、彼のポテンシャルの高さを証明しています。今回の経験を糧に、さらに強くなっていくはずです。過去には、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ ジュニアで優勝したポール・セクサスのような選手が、その後プロの舞台で活躍しています。Leander De Gendtもきっと、この悔しさをバネに、いつかプロのリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで、最高の栄光を掴んでくれると信じています。

今回のインシデントは、レース運営における安全管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。特にジュニアカテゴリーでは、将来のスター選手たちが走っています。彼らが安全に、正当な競争の中で力を出し切れる環境を整えることは、レース主催者にとっての最優先事項であるべきです。この一件が、今後のレース運営改善につながることを切に願います。そして、Leander De Gendt、Harry Hudson、そして3位に入ったMax Hindsといった若者たちの今後の活躍に、ぜひ注目していきましょう！