ユニベット・ティテマ・ロケッツ、ジロ初山岳逃げに勝機？さて誰？

日本のサイクルロードレースファンの皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田健一です。

いよいよジロ・デ・イタリアも序盤戦のヤマ場を迎えますね。第7ステージは、この大会最初の本格的な山岳フィニッシュ。総合争いが大きく動く可能性を秘めた一日です。しかし、今回注目したいのは、ブックメーカーUnibetが示すオッズ。彼らは、意外にも総合勢ではなく「逃げ切り」に大きなチャンスを見出しているようです。これは一体、何を意味するのでしょうか？ 私の視点から、この興味深いオッズの裏側を探ってみたいと思います。

最初の山岳は逃げ切り舞台となるか？

第7ステージは、タリアコッツォへと向かう山岳コースです。道中には2級山岳のモンテ・ウラーノ（4.5km、平均勾配9.4%）と、距離の長いヴァード・デッラ・フォルチェッラ（21.6km、平均勾配3.6%）が待ち構え、フィナーレは1級山岳のタリアコッツォへの登り（12.6km、平均勾配5.4%）となります。特に、最後の3kmは勾配が2桁に跳ね上がる区間があり、見た目の平均勾配以上に厳しい登りであることは確かです。

現在のマリアローザはマッズ・ピーダスンが着用していますが、純粋なクライマーではない彼がこの山岳ステージで集団に残るのは難しいでしょう。したがって、このステージでリーダージャージが別の選手へと渡ることはほぼ確実視されています。さて、そのジャージは誰の手に渡るのか？ そして、ステージ優勝は？

総合筆頭はPrimoz Roglic、だがその思惑は？

総合優勝候補の筆頭と目されるPrimoz Roglic（レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ Bull-BORA-hansgrohe）は、Unibetのオッズでもステージ優勝の最有力候補とされており、最も低い4.50倍という数値がついています。これは、彼がこの登りでも十分に勝負できる力を持っていることの証明でしょう。

しかし、キャリアを通じて何度もグランツールを戦ってきたPrimoz Roglic が、大会序盤のこの段階で敢えてマリアローザを着たいかどうか、というのは非常に興味深い点です。リーダージャージは名誉である一方、チームにレースコントロールの責任を負わせる重荷でもあります。特に、この先の長いジロを考えると、チームのリソースを温存したいと考えるのは自然なことです。UnibetがPrimoz Roglic に低いオッズをつけているのは、彼の絶対的な力を見込んでいるからであり、彼が本気で狙えば勝てる、と見ているからかもしれません。

一方で、フアン・アユソ (23倍)、アダム・イェーツ (34倍)、アントニオ・ティベーリ (34倍)、Simon Yates (41倍) といった他の総合上位候補たちのステージ優勝オッズは、Primoz Roglic に比べてかなり高くなっています。これは彼らの調子が悪いということではなく、チームとしてこのステージで無理にステージ優勝を取りに行かず、ライバルを牽制しつつ総合でタイムを失わないことを優先するだろう、というUnibet側の読みがあるからだと推測できます。総合勢が互いの出方をうかがう展開になれば、ステージ優勝は別の選手に転がり込む可能性が高まる。Unibetのオッズは、この「総合勢の静観」というシナリオを強く示唆しているように見えますね。

Unibetが推す「逃げ」の顔ぶれに見る可能性

そして、Unibetがこのステージで最もチャンスがあると見ているのが「逃げ」です。なんと、51倍以下のオッズがついている選手が16人もいます。これは異例とも言える多さで、いかに逃げ切りが有力視されているかが分かります。

逃げ候補の中でも特に低いオッズがついているのは、Tom Pidcock (10倍)、クリスティアン・スカローニ (13倍)、ワウト・プールス (19倍) といった選手たちです。Tom Pidcock はオールラウンダーとしての能力が高く、テクニカルな下りもこなせるため、逃げ集団に入れば強力な存在となるでしょう。クリスティアン・スカローニやワウト・プールスも、過去に山岳での逃げ切り勝利経験があり、このコースプロフィールには合っています。

さらにオッズは上がりますが、ロマン・バルデ (81倍)、ゲオルグ・シュタインハウザー (51倍)、マルコ・フリーゴ (51倍)、そして我らが日本のファンも注目するクーン・ボウマン (51倍) といった選手たちも、逃げに乗れば十分にチャンスがあります。特にクーン・ボウマンは過去のジロでも山岳での逃げ切り勝利を経験しており、このコースは彼のような選手にとって絶好の機会となり得ます。Unibetが彼に51倍というオッズをつけているのは、「大穴」ではあるものの、その可能性を完全に否定していないということでしょう。

山田健一の視点：オッズの裏側にあるもの

グランツールを長年追いかけてきた私の経験から言えば、このような序盤の本格山岳ステージで、総合勢が互いに牽制し合って「逃げ」が決まるケースは少なくありません。特に、フィニッシュが超級山岳のように明確な総合決戦の場ではなく、中級山岳で勾配が分散しているような場合、総合勢は温存を選択しがちです。タリアコッツォの登りは確かに厳しいですが、超級山岳ほどではない。そして、その後の長いジロを考えれば、ここで消耗するよりも、逃げを容認して体力を温存し、より重要な山岳ステージやタイムトライアルに備えたい、というチームの思惑が働く可能性は高いと見ています。

Unibetのオッズは、単なる数字の羅列ではありません。そこには、各チームの戦略、選手のコンディション、コース特性、過去のデータ、さらにはレース中の空気感といった、様々な要素が複合的に織り込まれています。彼らがこれだけ多くの選手に逃げ切りの可能性を見出しているということは、総合勢がこのステージで決定的な動きをしない、あるいはできないだろうという強い読みがある証拠でしょう。「なるほど！」と思わず膝を打ってしまいますね。

もちろん、レースは水物です。総合勢の誰かが果敢にアタックを仕掛け、一気にレースが動く可能性もゼロではありません。しかし、現時点でのUnibetのオッズは、「逃げ」に軍配を上げている。この「へぇ～」と思わせるような意外なオッズは、レースを観る上で非常に面白い視点を与えてくれます。

第7ステージ、あなたは誰に注目する？

ジロ・デ・イタリア第7ステージ、タリアコッツォへの道。総合勢の静かなる戦い、それとも逃げ集団の熱き攻防か。Unibetのオッズは逃げ切りを強く示唆していますが、蓋を開けてみなければ分かりません。Primoz Roglic が貫禄を見せるのか、フアン・アユソやアダム・イェーツらが動くのか、あるいはTom Pidcock やクーン・ボウマンといった逃げ巧者が栄光を掴むのか。

この最初の本格山岳ステージが、今後の総合争いにどんな影響を与えるのか。「そうだったのか！」という驚きと、「次も読みたい！」という期待が入り混じる一日となりそうです。皆さんは、このステージで誰に注目しますか？