ポガチャル、リエージュ～バストーニュ～リエージュ3勝目で春を飾る

ポガチャル、ラ・ドワイエンヌを三度制圧！圧倒的な力を見せつけたリエージュ

2024年4月21日、ベルギーのアルデンヌ地方を舞台に繰り広げられた「ラ・ドワイエンヌ」、リエージュ～バストーニュ～リエージュ。この日、サイクルロードレース界に君臨する一人、タデイ・ポガチャル（UAEチームエミレーツ・XRG）が、その圧倒的な力をもってこのクラシック最古参のレースを三度制圧しました。世界中のレースをリアルタイムで追い続ける私から見ても、その走りは次元が違いましたね。

真のチャンピオンが魅せる、計算し尽くされたレース運び

今年のリエージュは、冷たい雨と風が選手たちを苦しめる厳しいコンディションとなりました。しかし、そんな悪天候すら、ポガチャルにとっては舞台装置に過ぎなかったようです。レース序盤から逃げ集団が形成され、メイン集団とのタイム差は一時大きく開きましたが、UAEチームエミレーツ・XRGは常にコントロール下においているように見えました。他のレース、例えば同時期に行われていた別のカテゴリのレースなども見ていると、この手のクラシックでは、チームの連携と判断力が何よりも重要になることが分かります。UAEチームエミレーツ・XRGは、まさにその点を完璧に遂行していましたね。

勝負所、ラ・レッドゥットでの超絶アタック

レースが動き出したのは、終盤に差し掛かる勝負所、ラ・レッドゥットの上りでした。ここは平均勾配8.9%、最大勾配は20%を超える難所中の難所。ここで、満を持してタデイ・ポガチャルがアタックを仕掛けたのです。その加速は異次元でした。まるで、他の選手たちがスローモーションで見えるかのようなスピードで、あっという間にメイン集団を引き離していきます。この一発で、多くのライバルたちは彼の背中を見送るしかありませんでした。過去のレースデータと照らし合わせても、ラ・レッドゥットでの決定的なアタックはリエージュの定石ではありますが、ここまで鮮やかに、そして圧倒的に決める選手はそうそういません。

独走態勢へ、追走を許さない絶対王者

ラ・レッドゥットで飛び出したポガチャルは、そのまま独走態勢に入りました。後方では、懸命な追走が試みられましたが、彼のペースは衰えることを知りません。むしろ、タイム差は開く一方でした。今年のリエージュは、マチュー・ファンデルプール（アルペシン・デクーニンク）が欠場したこともあり、ポガチャルにとっては最大のライバルが不在という状況ではありましたが、だからといって彼の勝利の価値が下がるわけでは決してありません。むしろ、プレッシャーの中で自身の力を最大限に発揮し、ライバル不在の中でも一切の隙を見せなかったその精神力こそが、真のチャンピオンたる所以でしょう。

ゴールへ、そして歴史へ

リエージュの街へ戻ってきたタデイ・ポガチャルは、独走のままフィニッシュラインを通過。両手を広げ、声援に応える姿には、達成感と王者の風格が漂っていました。これでリエージュ～バストーニュ～リエージュ3勝目。エディ・メルクスやモレーノ・アルジェンティンといったレジェンドたちも複数回勝利しているこの「ラ・ドワイエンヌ」で、ポガチャルはまた一つ、自身の名を歴史に深く刻み込みました。2位にはロマン・グレゴワール（グルパマ・FDJ）が入りましたが、その差は1分39秒。この大差が、いかにポガチャルの走りが圧倒的だったかを物語っています。

クラシックシーズンを締めくくる一戦が示唆すること

リエージュ～バストーニュ～リエージュは、春のクラシックシーズンの締めくくりとなるレースです。このレースでのポガチャルの圧倒的な勝利は、来るグランツール、特に彼がターゲットとしているジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスに向けて、最高の弾みとなるでしょう。彼のコンディションは間違いなく絶好調であり、チームのサポート体制も万全です。果たして、この勢いは夏まで続くのか？ ポガチャルが世界のサイクルロードレースシーンをどこまで支配するのか、目が離せませんね。次なる彼の挑戦が、今から楽しみでなりません。