ポガチャルが見せた誇りの反応

皆さん、こんにちは！ジャーナリストの松崎 愛です。今日も地球上のどこかで繰り広げられる熱い戦いを追いかけ、皆さんにお届けします。

今回のターゲットは、クラシックレースの真ん中、ベルギーで開催された「フレッシュ・ワロンヌ」。特に、あのタデイ・ポガチャルが見せた走りは、ただの勝利とは一味も二味も違う、彼の「誇り」と「復讐」が詰まったものだったんです。

アムステルでの「屈辱」を晴らす、ユイの壁での咆哮！

今年のフレッシュ・ワロンヌは、過去数年とは少し違う空気感がありました。例年、集団スプリントや少人数での駆け引きの末に決着することが多いユイの壁ですが、今回は違った。まるで時間を歪めるかのような、強烈なアタックが炸裂したのです。主役はもちろん、タデイ・ポガチャル。

雨に打たれ、泥にまみれたユイの壁を、彼はまるで別次元の生き物のように駆け上がりました。その顔は疲れ果て、まるで何十年も生きた老亀のようだった、なんて表現もありましたが、その目に宿る光は、紛れもないチャンピオンのそれでした。アムステル・ゴールドレースでの敗北という「屈辱」を、このユイの壁で晴らしてやる、そんな強い意志を感じさせる走りだったのです。

「屈辱」からの反撃：アムステル・ゴールドレースの敗北がポガチャルに与えたもの

タデイ・ポガチャルは、今シーズンここまで、決して楽な勝利ばかりではありませんでした。ストラーデ・ビアンケでの独走劇も、落車からの立て直しというドラマがありましたよね。そして、アムステル・ゴールドレース。マティアス・スケルモースとのスプリント勝負に敗れ、さらにレムコ・エヴェネプールの仕掛けについて行けずに遅れるという、彼にとっては考えられないような展開でした。

特に、ジュリアン・アラフィリップの早仕掛けに乗ってしまい、自分のリザーバーを使い果たしてしまったこと。これは、普段冷静沈着なポガチャルにしては珍しい、感情的な判断ミスだったと言われています。あの敗北は、彼の「誇り」を深く傷つけたに違いありません。だからこそ、フレッシュ・ワロンヌでは、何としても勝利を、それも圧倒的な形で掴み取る必要があったのでしょう。まるで、UAEチームエミレーツ・XRGのリーダーとしての威厳を取り戻すかのように。

ユイの壁を「再定義」したアタック：過去のレースと比較分析

ユイの壁、正式名称「ミュール・ド・ユイ」。最大勾配26%という激坂は、まさにクライマーたちの審判の場です。しかし、近年はフィニッシュライン間際でのアタック合戦になりがちでした。ところが、タデイ・ポガチャルは違った。

フィニッシュまで残り400m、ユイの壁の最も勾配がきつい部分、クローディ・クリキエリオンのカーブで、彼はアタックを開始しました。これは、通常の「勝負所」よりも遥かに早いタイミングです。ベン・ヒーリーが一度は彼に並びかけましたが、ポガチャルが振り返ってライバルたちが苦しんでいるのを見ると、さらにケイデンスを上げた。サドルにがっしり座り込み、骨盤を固定したまま、圧倒的なパワーで加速するその姿は、まさに「規格外」の一言。

結果、2位に入ったケビン・ヴァウクランに10秒もの大差をつけました。ユイの壁の短い距離で10秒差というのは、2003年にイゴール・アスタルロアが見せた独走以来、22年ぶりの大差だそうです。「ユイの壁はこう登るものだ」という常識を、彼は自らの力で塗り替えたと言えるでしょう。このアタックを可能にしたのは、ヤン・クリステンやブランドン・マクナルティといったチームメイトたちが、それまで彼をしっかりと守り、最適な位置に送り届けたことも忘れてはなりません。

強さと謙虚さの融合：なぜ彼はアムステルと違う走りを見せたのか

アムステル・ゴールドレースでの敗北後、タデイ・ポガチャルはきっと多くのことを考えたはずです。彼の強さは誰もが認めるところですが、時にはその「強さ」ゆえに、無謀なアタックや感情的な判断をしてしまう側面もあります。しかし、今回のフレッシュ・ワロンヌでは、アムステルでの失敗から多くを学んだように見えました。

彼は序盤から無駄な動きをせず、チームメイトを信頼し、自身のエネルギーを「ユイの壁」のその一点に集中させました。アムステルでは「ビールのケースを配るように」無駄に力を使いすぎたという表現がありましたが、今回は「ビールの缶を一本ずつ、ミリ単位で」使うように、効率的かつ破壊的なアタックを仕掛けたのです。

この勝利には、彼の「圧倒的な強さ」というエゴの部分と、「失敗から学び、修正する」という謙虚さの部分、その両方が表れているのではないでしょうか。レムコ・エヴェネプールが雨で動きを封じられたという側面もあるかもしれませんが、ポガチャルは自身の力を最大限に発揮できるタイミングを待ち、そして完璧に遂行しました。

リエージュへのメッセージ：次の「モニュメント」はどうなる？

フレッシュ・ワロンヌは終わりましたが、アルデンヌ・クラシックはまだクライマックスを残しています。そう、「ラ・ドワイエンヌ（最古参）」ことリエージュ～バストーニュ～リエージュです。

今回のフレッシュ・ワロンヌの結果は、リエージュでの戦いに少なからず影響を与えるでしょう。タデイ・ポガチャルは、アムステルで失った心理的な優位性を、ユイの壁での圧勝によって取り戻しました。一方、アムステル覇者のマティアス・スケルモースはフレッシュ・ワロンヌで落車。彼のコンディションが気になるところです。レムコ・エヴェネプールも9位と振るいませんでしたが、リエージュの地形はユイの壁よりも彼に有利に働く可能性があります。

リエージュは、ユイの壁のような一発の爆発力だけでなく、長距離での持久力、そして度重なる登坂への対応力が試されます。今回のフレッシュ・ワロンヌでポガチャルが見せた「賢さ」と「爆発力」の融合は、リエージュでも大きな武器となるはずです。

アムステルでの敗北、フレッシュ・ワロンヌでの圧勝。この一連の流れは、ポガチャルにとって最高の「目覚まし時計」となったのかもしれません。リエージュでは、再び彼とレムコ・エヴェネプール、そして他の強豪たちが、まさに「犬のように」お互いを牽制し合い、そして決定的な一撃を狙う、手に汗握る戦いが繰り広げられるでしょう。

さあ、次の日曜日が待ちきれませんね！リエージュの戦いも、世界中のレース情報と共に、リアルタイムでお届けしますので、どうぞお楽しみに！