デル・トロ、未知の領域へ：これほど高低差のある1週間は未経験

デルトロ、未知の山岳へ挑む：ジロ・デ・イタリア、真の試練の時

イサーク・デルトロがマリアローザを堅守するジロ・デ・イタリア。しかし、大会は今、これまで彼が経験したことのない“未知の領域”へと突入します。メキシコ人ライダーの真価が問われる、息をのむような山岳ステージが幕を開けようとしているのです。まさに、このイタリアの地で、彼のキャリアにおける最大の試練が始まると言っても過言ではないでしょう。

マリアローザの重みとチームの思惑

「マリアローザはイサーク・デルトロが着用しているが、我々の真のリーダーはフアン・アユソだ」。UAEチームエミレーツ・XRGのこの揺るぎない声明は、ジロ・デ・イタリアが本格的な山岳に突入する今も、微塵も変わることがありません。先日、スロベニアへの道中で発生した大規模な落車混乱の際も、デルトロは不思議なほど無傷で切り抜け、さらにボーナスタイムを獲得して総合リードを広げました。この一連の出来事は、彼の「強運」と「実力」のどちらが彼をこの位置に押し上げたのか、多くのファンや関係者の間で議論を呼んでいます。チームとしては、フアン・アユソを温存しつつ、デルトロのマリアローザを最大限に活用したいという思惑が透けて見えますが、果たしてこの戦略が、これから始まる過酷な山岳でどう作用するのか、注目せざるを得ません。

“エル・トリート”のキャリア最大の試練

「エル・トリート（小さな雄牛）」の愛称で親しまれるイサーク・デルトロは、これまでプロキャリアで、今回のジロ・デ・イタリア第3週のような本格的な山岳の連戦を経験したことがありません。昨シーズンのブエルタ・ア・エスパーニャでグランツールデビューを果たしたものの、落車やCOVID-19感染に見舞われ、本来の力を出し切ることはできませんでした。それでも、ラゴス・デ・コバドンガのステージでは、チームメイトのマルク・ソレルと連携し、153kmに及ぶ逃げから見事6位に入賞するなど、その片鱗を見せています。また、2023年のツール・ド・ラヴニールでは、ピオトル・ウグルモフの指導の下、コル・ド・ラ・ローズでリッチテッロ、ピガンゾーリ、ペリッツァーリといったライバルたちを圧倒し、わずか65kmのステージで衝撃的な勝利を収めました。しかし、U23世代の育成レースと、グランツールの最終盤の山岳ステージでは、その過酷さも求められる経験値も全く異なります。特に今大会の第3週は、4000m以上の獲得標高を持つステージが3つも待ち構えており、第16ステージに至っては4800mに迫るという、まさに「未知の領域」なのです。

安定感の裏に潜む未知数

イサーク・デルトロは、このジロ・デ・イタリアで7日間もの間、マリアローザを着用し続けています。これまでのステージでは、彼はあらゆる困難を乗り越え、最も安定した走りを披露してきました。まるで「チャンピオンの証」とでも言うべきか、パンクも落車もなく、たとえアクシデントに見舞われても何事もなかったかのように走り続けるその姿は、見る者を驚かせました。しかし、これまでのステージは、本格的な山岳ステージとは言えません。今から始まるのは、本当の意味での「山岳の戦い」であり、デルトロがこれまで経験したことのない、長時間にわたる登坂力が問われるステージが続きます。若き才能がグランツールで突然覚醒し、歴史を塗り替えるケースはこれまでにも多くありました。しかし同時に、経験不足から脆さを見せる選手も少なくありません。果たしてイサーク・デルトロは、この未知の山岳でその輝きをさらに増すことができるのでしょうか。

さあ、いよいよジロ・デ・イタリアは“真の戦い”へと舞台を移します。イサーク・デルトロは、この未知の山岳地帯でその輝きをさらに増すのか、それともフアン・アユソというもう一人のリーダーの影に隠れることになるのか。イタリアの山々が、彼の運命を、そして今年のジロの覇者を決めることでしょう。日本のロードレースファンの皆さん、この歴史的な瞬間にぜひご注目ください！