ルーデフーフト：マチュー・ファンデルプールのドーフィネ出場はツールに向け極めて重要

まさか！マチュー・ファンデルプール、驚異の回復でドーフィネ出場へ

先日のMTBワールドカップ、チェコのノヴェー・メストでのあの落車事故。マチュー・ファンデルプールが手首の骨折という診断を受けた時、私も含め、多くのファンが「これはツール・ド・フランス出場も危ういのではないか…」とハラハラしたことでしょう。彼が予定していたトレーニングキャンプに参加できなかったというニュースが追い打ちをかけ、正直、今シーズンのツール・ド・フランスでの活躍は厳しいかもしれない、とさえ思いました。

しかし、昨日飛び込んできたのは、驚くべき吉報でした。なんと、マチュー・ファンデルプールが今週末から始まるクリテリウム・デュ・ドーフィネに出場するというのです！これはまさに、彼の驚異的な回復力と、ツール・ド・フランスにかける執念の証だと言えるでしょう。

彼の所属するアルペシン・ドゥクーニンクのチームマネージャー、クリストフ・ロートホーフトがスポルザに語ったところによると、「マチューはドーフィネに出場するために、あらゆる手を尽くすことに非常に意欲的だった」とのこと。痛みのある手首を抱えながらも、彼がトレーニングを積んできたその精神力には脱帽です。「メンタルが非常に強かった」というロートホーフトの言葉は、彼の並々ならぬ覚悟を物語っていますね。想像してみてください、あの痛みの中でペダルを回し続けるマチューの姿を。まさに超人です。

ツール・ド・フランスへの「必然」のステップ

なぜ、手首に怪我を負ってまで、クリテリウム・デュ・ドーフィネへの出場がこれほどまでに重要だったのでしょうか。ロートホーフト監督の言葉に、その答えが隠されています。彼は「昨年（2024年）のツール・ド・フランス序盤で、マチューはレースリズムをやや欠いていたと感じた」と語っています。その反省から、今年は異なるアプローチを試みたかった、つまり、ツール・ド・フランス前に「追加の競争」を経験させることが不可欠だと判断したのです。

グランツールのような長丁場のレース、特にツール・ド・フランスの序盤は、集団内での位置取りや、瞬時の判断が求められる場面が多く、独特の「レースハードネス」（レースでの体力、判断力、集中力といった総合的な耐久性）が要求されます。ドーフィネというハイレベルなレースで、その「レースハードネス」を取り戻すことは、ツール・ド・フランスで最高のパフォーマンスを発揮するための“必須科目”と言えるでしょう。

私が見るに、今回のドーフィネ出場は、単なる調整レース以上の意味を持っています。ツール・ド・フランスでの「勝利」という明確な目標を見据え、そのために必要なすべての要素を逆算して準備を進めている、アルペシン・ドゥクーニンクとマチュー・ファンデルプールの戦略的決断なのです。

勝利への嗅覚と過去の栄光：ミュール・ド・ブルターニュの記憶

クリテリウム・デュ・ドーフィネで、マチュー・ファンデルプールに何を期待すべきでしょうか？ロートホーフト監督は「すぐに成功を収めるかどうかは別問題だが、レースハードネスを失わないために参加する」としつつも、「最初のステージでチャンスがあれば、彼はそれを逃さないだろう」と付け加えています。えぇっ？やはり、勝負師マチューは、例え調整レースであっても、勝利への嗅覚を研ぎ澄ませているのですね！

ここで皆さんに、2021年のツール・ド・フランスを思い出していただきたい。あのミュール・ド・ブルターニュの頂上で、マチュー・ファンデルプールが放ったあの感動的な勝利。ツール・ド・フランス初出場にして、祖父レイモン・プーリドールが果たせなかったマイヨ・ジョーヌを獲得した瞬間でした。その時の彼は、涙を流しながら空を見上げ、亡き祖父に勝利を捧げたのです。

RIDE Magazineの2025年夏号では、このミュール・ド・ブルターニュでの高揚感を巡る特別記事が掲載されるとのこと。彼の母親であるコリーヌ・プーリドールと、ガールフレンドのロクサーヌ・ベルテルスも登場し、家族にとってあの勝利がいかに大きな意味を持ったかが語られるそうです。このような過去の輝かしい瞬間が、マチューの今のモチベーションを支えているのかもしれません。

ドーフィネが告げるツール・ド・フランスの序章

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、ツール・ド・フランスの重要な前哨戦です。今年はマチュー・ファンデルプールの他に、タデイ・ポガチャル、ヨナス・ヴィンゲゴー、レムコ・エヴェネプールといった錚々たる顔ぶれが揃うとの情報もあり、彼らの仕上がり具合を測る上でも、非常に見どころの多いレースとなるでしょう。

手首の怪我を乗り越え、驚異的な回復力でドーフィネに挑むマチュー・ファンデルプール。彼の走り、そしてそこから見えてくるツール・ド・フランスでの戦略に、私は今からゾクゾクしています。皆さんも、ぜひ彼の動向に注目し、今シーズンのグランツールをさらに楽しんでいきましょう！