クリテリウム・デュ・ドーフィネ

ツール・ド・フランスへの前哨戦、ドーフィネ開幕！

フランス中央部、オーヴェルニュ地方を舞台に、今年もクリテリウム・デュ・ドーフィネが幕を開けました。このレースは、夏のビッグイベントであるツール・ド・フランスを前に、世界のトップ選手たちが自らのコンディションを測り、チームの連携を確認する重要な舞台となります。今年の第1ステージは、ドメラからモンリュソンまでの195.8km。一見すると平坦基調に見えますが、終盤に控えるナーバスなレイアウトが、スプリンターチームにとっては頭の痛い展開を予感させました。

スタートリストには、ツール・ド・フランスの総合優勝候補たちがずらり。ジロ・デ・イタリアでの圧倒的なパフォーマンスを終えたばかりのタデイ・ポガチャル、そして昨年のツール王者であるヨナス・ヴィンゲゴー。彼らの直接対決は、このドーフィネ最大の注目点となるでしょう。加えて、レムコ・エヴェネプール、マチュー・ファンデルプール、カルロス・ロドリゲス、エンリク・マス、レニー・マルティネスといった強豪たちが、この「ミニ・ツール」での勝利を目指して虎視眈々とチャンスを窺っています。

逃げ集団と追走の攻防、チームの思惑が交錯する序盤

レース序盤、積極的な動きを見せたのはポール・ウルスラン（コフィディス）とピエール・ティエリー（アルケア・B&Bホテルズ-B&B Hotels）の二人でした。彼らはすぐにメイン集団から3分以上のリードを築き、逃げを形成。しかし、メイン集団を牽引したのはリドル・トレックでした。彼らの狙いは明確。ジロ・デ・イタリアで6勝という圧倒的なスプリント力を見せつけたジョナタン・ミランのステージ優勝です。ミランはパリ〜ルーベ以来のレースとなりますが、ツール・ド・フランスでのスプリントステージ制覇に向け、このドーフィネでその脚を試したいところでしょう。

一方で、逃げに入ったコフィディスとアルケア・B&Bホテルズ-B&B Hotelsの動きには、単なるステージ優勝狙い以上の意味合いが見て取れます。ご存知の通り、現在のUCIポイントランキングはプロチームにとって死活問題。特にコフィディスはジロ終了後、ピクニックやアスタナに抜かれ、アルケアと共に降格圏に位置しています。彼らにとっては、どんな小さなポイントでも積み重ねたい。だからこそ、逃げに選手を送り込み、わずかながらでもポイント獲得の可能性を探るという、チームの切羽詰まった状況が垣間見えます。「なるほど！」と膝を打つような、チームの戦術的背景がそこにはあるのです。

勝負を分ける最終局面の読み解き

ドメラからモンリュソンへの195.8kmは、決して平坦ではありませんでした。特に終盤は、モンリュソン市街を2周する周回コースに突入し、その中でビュフォン峠とドメラ峠という2つの4級山岳を2度通過します。中でも注目すべきは、残り6.7km地点に設定された2度目のビュフォン峠。わずか600mと短いながらも、平均勾配8.6%という急坂は、スプリンターにとっては非常に厳しい壁となります。

このビュフォン峠が、まさに勝負を分ける鍵となるでしょう。純粋なスプリンターはここでふるい落とされ、パンチャータイプの選手や、登坂力のあるルーラーがアタックを仕掛ける可能性も十分に考えられます。「確かに！」と頷けるのは、ドーフィネのようなツール前の調整レースでは、メイン集団のコントロールが緩む瞬間があり、そうした隙を突いてサプライズが生まれることも少なくないからです。ナーバスな終盤で、果たしてどんなドラマが待っているのか、目が離せません。

ドーフィネの歴史が語る、ツールとの深い繋がり

クリテリウム・デュ・ドーフィネは、ツール・ド・フランスの重要な指標として機能してきました。過去の優勝者リストを見れば、その繋がりは一目瞭然です。2023年のヨナス・ヴィンゲゴー、2018年のゲラント・トーマス、そして2015年と2016年のクリストファー・フルームと、ドーフィネを制した選手がその年のツール・ド・フランスでも総合優勝を飾るケースが頻繁にあります。「そうだったのか！」と驚く方もいるかもしれませんが、これは偶然ではありません。ドーフィネで最高のコンディションを作り上げ、自信を掴んだ選手が、そのままツールの頂点へと駆け上がるというパターンなのです。

今年のドーフィネには、タデイ・ポガチャルが2度目の参戦。まだドーフィネでは総合優勝のタイトルがありません。彼がジロの疲労を乗り越え、どれほどのコンディションで臨んでいるのか。そして、手首の怪我から復帰したマチュー・ファンデルプールの走りも気になります。彼はツールでの活躍を見据えているはず。彼らがドーフィネでどのような走りを見せるのかは、今年のツール・ド・フランスの行方を占う上で、非常に重要な手がかりとなるでしょう。

ドーフィネはまだ始まったばかり。これから8日間、平坦、丘陵、そして高山ステージと、様々なタイプのステージが選手たちを待ち受けます。それぞれのステージで、チームの思惑、選手のコンディション、そして勝利への執念がぶつかり合うことでしょう。このドーフィネで何が起こるか、そしてそれがツール・ド・フランスにどう繋がるのか。今年の夏も、目が離せないサイクルロードレースのドラマが繰り広げられそうです。「次も読みたい！」と思っていただけるよう、私も引き続き現地からの情報を深く掘り下げてお伝えしていきますので、どうぞご期待ください！