ジリオリ氏語る：コッピの電話、メルクスとの友情、2位の誇り

万年2位、その誇り高き戦い 〜レジェンド、ジリオーリが語る「銀メダリスト」たちの物語〜

サイクルロードレースの歴史には、勝利と同等、あるいはそれ以上に人々の記憶に残る「2位」がある。それは、頂点への挑戦の厳しさ、そして栄光を掴み損ねた者の誇りを物語る。今回は、1960年代から70年代にかけて活躍し、ジロ・デ・イタリアで3度も2位に輝いたイタリアのレジェンド、イタロ・ジリオーリの言葉から、「銀メダリスト」たちの特別な輝きに迫る。現代のスター、ワウト・ファンアールトにも通じる、その「万年2位」という称号に込められた意味とは？

「コッピーノ」と呼ばれた男のデビュー

1963年、彗星のごとく現れた若者は、「コッピーノ（小さなコッピ）」と呼ばれたという。その名はイタロ・ジリオーリ。史上最高のサイクリストの一人、ファウスト・コッピになぞらえられるほど、彼のデビューは鮮烈だったのだろう。当時のレース界は、まさにレジェンドたちがしのぎを削る時代。そんな中に飛び込んだジリオーリは、すぐに頭角を現す。

彼の名前を特に印象づけているのが、ジロ・デ・イタリアでの連続2位という記録だ。1964年から1966年にかけて、彼は3年連続で総合2位の表彰台に立った。これは、単なる偶然ではない。彼の圧倒的な実力と、グランツールという長丁場を戦い抜くタフさの証である。しかし、同時に、あと一歩、頂点に届かなかったという事実もまた、彼のキャリアを語る上で欠かせない要素となっている。

レジェンドたちとの戦い

ジリオーリがジロで2位になった相手は、ジャック・アンクティル、ヴィットリオ・アドルニ、そしてフェリーチェ・モッタという、いずれも歴史に名を刻む偉大なチャンピオンたちだ。彼らと互角に渡り合いながらも、最後の最後で勝利を譲る。その悔しさは想像に難くないが、彼らの強さがあってこその、ジリオーリの「2位」の価値でもあったと言える。

彼はジロやツール・ド・フランスでのステージ優勝、トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネやジロ・デッラッペンニーノといったイタリアの権威あるワンデイレースでの勝利も含め、キャリアで58勝を挙げている。これは決して「勝てない選手」ではないことを示している。それでも、彼のキャリアを語る際に、グランツールでの2位が特にクローズアップされるのはなぜだろうか。それは、グランツールという舞台の持つ特別な重みと、そこで何度も頂点に肉薄した彼のドラマが、人々の心に深く刻まれているからだろう。

また、ジリオーリはエディ・メルクスとイタリアで一番の親友だったという。ライバルでありながら深い友情で結ばれていたというエピソードは、当時のプロトンにおける人間関係の温かさを感じさせる。

「万年2位」に宿るプロフェッショナリズム

ジリオーリ以外にも、サイクルロードレースの歴史には「万年2位」と呼ばれる選手たちが存在する。Tano Belloni、Poulidor、そして現代であればワウト・ファンアールトも、そのように評されることがある。彼らは確かに多くの勝利を挙げているにも関わらず、特定のビッグレースで、あるいは特定のライバルに対して、何度も2位に甘んじる経験をしている。

メカニックとして、彼らの機材に思いを馳せることもある。最高の性能を持つバイク、完璧に調整されたコンポーネント。我々メカニックは、選手がそのパフォーマンスを最大限に引き出せるよう、あらゆる努力を惜しまない。しかし、彼らの「2位」は、機材の限界ではなかったはずだ。それは、ライバルの驚異的な強さ、レース中の不測の事態、あるいは単に運命のいたずらだったのかもしれない。

彼らが「万年2位」と呼ばれるのは、単に勝利を逃したからではない。それは、彼らが常に最高レベルで戦い続け、何度も頂点のすぐそばまで到達したことの証なのだ。ウノエックス・モビリティのような現代のトップチームにも、頂点を目指し続ける選手たちのドラマがあります。彼らは皆、プロフェッショナルとして、勝利を目指し、その過程で最高のパフォーマンスを見せている。その結果が2位であったとしても、そこには紛れもない価値と、誇りがある。

「2位の誇り」が教えてくれること

イタロ・ジリオーリが語る「2位の誇り」は、単なる敗北ではない。それは、最高レベルでの戦いを続けた証であり、多くの勝利よりも記憶に残る輝きだ。ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスといったグランツール、あるいはクラシックレースの歴史を振り返る時、私たちは優勝者だけでなく、彼ら「万年2位」たちの存在を決して忘れることはできない。彼らの存在が、レースのドラマをより深く、より感動的なものにしているのだから。

現代のレースを見ても、頂点に立つ選手だけでなく、その次を争う選手たちの懸命な戦い、そして彼らの背後にあるチームやメカニックの努力に目を向けることで、サイクルロードレースの奥深さがより感じられるのではないだろうか。次にレースを見る時は、ぜひ「2位」の選手にも注目してみてほしい。彼らの走りの中に、イタロ・ジリオーリが語る「誇り」が見えるはずだ。