バルトーリ、フランドルの小さなライオン：ベルギーは故郷「ポガチャルと戦いたい」

今回は、イタリアが誇る偉大なクラシックハンター、ミケーレ・バルトリへのインタビュー記事から、彼の胸中に迫ってみたいと思います。「レオンチーノ」（小さなライオン）と呼ばれた彼の眼には、かつての激闘と、現代のレースがどのように映っているのでしょうか。

クラシックの「デカナ」に捧げる情熱

54歳になった今も、ミケーレ・バルトリのクラシックレースへの情熱は衰えることを知りません。彼は妻や友人と共に、自ら車を運転してベルギーのリエージュへと向かうと言います。その目的地は、もちろん「ラ・ドワイエンヌ」、すなわち「最古参」と呼ばれるクラシックモニュメント、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュです。

選手を引退してからも、若手選手の育成に携わるなど、彼は自転車界から離れることなく活動を続けています。しかし、やはり春のクラシックシーズン、特にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが近づくと、かつての血が騒ぐのでしょう。あの険しいアルデンヌの丘（コート）を前にすると、誰しもがプリミティブな、それでいて高貴なサイクリングの魂を強く感じるものです。バルトリもまた、その一人なのです。

「ベルギーは我が家だった」 - 最高の勝利とクラシックへの愛

ミケーレ・バルトリは、間違いなくイタリア自転車界が誇る、類まれなるクラスを持つチャンピオンの一人でした。彼の時代、そして現代においても、ウノエックス・モビリティのようなチームが輩出を目指す、真の才能でした。特に北のクラシックでは目覚ましい活躍を見せ、「ベルギーは我が家だった」とまで語っています。それは、彼があの地のレースにどれほど深く根ざし、愛していたかの証でしょう。

キャリアの中で多くの勝利を掴みましたが、特に1997年と1998年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ連覇は、彼の名をクラシック史に刻み込みました。中でも1997年の初優勝は、彼にとって「キャリアで最も美しい勝利だった」と言います。あの厳しいコースで掴んだ勝利は、単なる結果以上の、深い感動と結びついているのでしょう。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュのようなアップダウンの激しいレースでは、機材のセッティングも非常に重要になります。急勾配の丘を何度も越えるため、ギア比の選択はもちろん、バイクの剛性や重量、そして荒れた路面にも対応できるタイヤの選択など、メカニックにとっては腕の見せ所です。バルトリが現役だった頃と比べると、機材は格段に進化しましたが、選手のパワーを効率よく路面に伝え、かつ快適性を保つという基本的な考え方は変わりません。彼の時代のバイクも、あの過酷なコースを走りきるために、細部までこだわり抜かれていたはずです。

ジャンニ・ブーニョへの深い敬意、そして現代の「怪物」

バルトリの言葉の中で、特に印象的なのが、同胞の偉大なチャンピオン、ジャンニ・ブーニョへの言及です。「ジャンニ・ブーニョほど才能のある選手はいなかった」と断言し、彼への愛情があまりに深かったため、自身の次男に「ジャンニ」と名付けたというエピソードは、二人の間に特別な絆があったことを物語っています。ライバルでありながら、互いを深く尊敬し合う関係性。プロスポーツの世界では、このような話を聞くと「なるほど！」と唸ってしまいますね。

そして、現代の選手について聞かれると、彼はタデイ・ポガチャルの名を挙げ、「彼と走ってみたい」と語っています。ポガチャルは、バルトリが現役だった頃とは時代の異なる、まさにオールラウンダーの「怪物」です。クラシックからグランツールまで、あらゆるレースで勝利を量産するその姿は、かつて特定のレースに特化した選手が多かった時代を知るバルトリの目には、どのように映っているのでしょうか。時代の変化と共に、選手のタイプも、そして求められる機材も変わってきていることを改めて感じさせられます。

クラシックは続く

ミケーレ・バルトリの言葉からは、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュというレースへの深い愛情と、彼が過ごした時代の自転車界への思いが伝わってきました。彼の視点を通して、私たちは単なるレース結果だけでなく、その裏にある選手たちの感情や、時代ごとの自転車界の文化に触れることができます。

リエージュ〜バストーニュ〜リエージュは、今年もまた新たな歴史を刻みます。バルトリのような伝説的な選手の言葉を胸に、今年の「ラ・ドワイエンヌ」がどのようなドラマを生むのか、非常に楽しみです。そして、彼のコーチとしての活動も、未来のチャンピオンを育てる上で重要な役割を担っていることでしょう。