ポガチャル、リエージュで圧巻の勝利！モニュメント9勝目、チッコーネが2位

タデイ・ポガチャル、モニュメント9勝目！リエージュ～バストーニュ～リエージュを独走で制圧！ ジュリオ・チッコーネが2位の快挙

皆さん、こんにちは。グランツール担当の山田健一です。春のクラシックシーズンを締めくくる「ラ・ドワイエンヌ」、リエージュ～バストーニュ～リエージュは、やはりこの男の独壇場でした。タデイ・ポガチャル（UAEチームエミレーツ）が、圧倒的な力を見せつけ、自身3度目、そしてキャリア通算9度目となるモニュメント制覇を達成。その強さには、ただただ舌を巻くばかりです。

そして、日本のサイクルロードレースファンにとって、さらに嬉しいニュースが飛び込んできました。イタリアの ジュリオ・チッコーネ（リドル・トレック）が、見事2位表彰台を獲得したのです。彼のこれまでのキャリア、そしてコンディションを考えれば、これは本当に素晴らしい結果だと言えるでしょう。現地で彼のゴールを見届けた時、思わず「ブラボー！」と叫んでしまいましたよ。

ポガチャル、歴史に名を刻むモニュメント9勝目

プロとして活動を開始してわずか7シーズン目。まだ26歳という若さで、タデイ・ポガチャルはモニュメント9勝という、信じられない記録を打ち立てました。これは、往年の名選手であるショーン・ケリー、コスタンティ・ジラルデンゴ、ファウスト・コッピといったレジェンドたちと肩を並べる数字です。現代において、これほどのペースでモニュメントを積み重ねている選手は他にいません。

彼の前には、ロジェ・デ・フラーミンクの11勝、そしてサイクルロードレース界の「怪物」エディ・メルクスが持つ19勝という、さらに大きな壁が立ちはだかっています。特にメルクスの記録は、長らく破られることはないだろうと言われてきました。しかし、ポガチャルの現在のパフォーマンスを見ていると、「もしかしたら」という期待を抱かずにはいられません。彼のキャリアにおける最大の挑戦は、間違いなくこのメルクス超えになるでしょう。これから彼が自転車に乗っている限り、この挑戦から目が離せませんね。

一方で、昨年の覇者である レムコ・エヴェネプール は、この日は主役の座を完全に譲ってしまいました。ポガチャルが勝負を仕掛けたレドゥートの登りでは、すでに集団の後方に位置しており、反応する力すら残っていなかったように見えました。最終的に3分以上遅れてのフィニッシュ。彼にとっては、厳しい一日だったに違いありません。

ジュリオ・チッコーネ、ジロへ弾みをつける2位

ポガチャルから1分01秒遅れてフィニッシュラインに飛び込んできたのは、 ジュリオ・チッコーネ でした。アイルランドの ベン・ヒーリー（EFエデュケーション・イージーポスト）との激しいマッチスプリントを制しての2位は、本当に価値あるものです。イタリア人選手としては、2019年に ダヴィデ・フォルモロ が2位になって以来のリエージュでのポディウム。彼の力強い走りは、多くのイタリアファンを熱狂させたことでしょう。

昨年秋の ジロ・ディ・ロンバルディア でも、ポガチャル、 レムコ・エヴェネプール に次ぐ3位に入っている ジュリオ・チッコーネ。彼は以前から、グランツール、特に ジロ・デ・イタリア での総合上位を目指している選手です。今回のリエージュでの結果は、5月9日にアルバニアのドゥラスで開幕する第108回 ジロ・デ・イタリア に向け、最高の弾みになったことは間違いありません。彼の今年の ジロ での活躍に、ぜひご注目ください。

驚異的なポガチャルの今シーズン

今回の勝利で、タデイ・ポガチャルのキャリア通算勝利数は95に到達しました。そして、彼の今シーズンの成績は、まさに驚異の一言に尽きます。2月にUAEでシーズンをスタートさせて以来、UAEツアー、ストラーデ・ビアンケ、ツール・デ・フランドル、フレッシュ・ワロンヌ、そして今回のリエージュ～バストーニュ～リエージュと、出場したステージレース、ワンデイレースで勝利を量産しています。

さらに驚くべきは、彼が今春出場した全てのモニュメント、そしてクラシックレースでポディウムを獲得しているということです。ミラノ～サンレモでは3位、パリ～ルーベとアムステル・ゴールドレースでは2位。そして、ツール・デ・フランドルとリエージュ～バストーニュ～リエージュでは優勝。これほどの安定感と勝負強さを兼ね備えた選手は、エディ・メルクスの時代以降、現れたでしょうか？

特に、ツール・デ・フランドルとリエージュ～バストーニュ～リエージュという、性質の異なる2つのモニュメントを同一シーズンに制覇したのは、1969年と1975年にエディ・メルクスが達成して以来のことです。これは本当に歴史的な快挙であり、「脱帽」としか言いようがありません。

勝負を決めたレドゥートのアタック

今年のリエージュも、勝負のハイライトはやはりコテ（登り）でした。特に、残り約35km地点にある象徴的な登り、コート・ド・ラ・レドゥートがカギを握りました。Poggioがミラノ～サンレモ、Oude Kwaremontがツール・デ・フランドル、アレンベルグの森がパリ～ルーベの象徴であるように、レドゥートはリエージュの魂とも言える登りです。距離1600m、平均勾配9.5%、最大勾配は15%にも達する激坂です。

UAEチームエミレーツの強力な牽引によって、集団は猛烈なスピードでレドゥートに突入しました。そのスピードは、平坦路かと思うほど。そして、残り34.8km地点、まさにこのレドゥートで、タデイ・ポガチャルがアタックを仕掛けました。彼の加速は尋常ではなく、瞬く間に後続を引き離していきます。他の選手たちは、誰も反応することができませんでした。 レムコ・エヴェネプール は、この時すでに集団の中ほどにおり、この決定的なアタックに対応する力は残っていませんでした。

ポガチャルが単独で突き進む中、後方からは ジュリオ・チッコーネ、トム・ピドコック（イネオス・グレナディアーズ）、ジュリアン・アラフィリップ（スーダル・クイックステップ）、 ベン・ヒーリー といった選手たちが追走グループを形成しました。彼らは懸命にポガチャルを追いましたが、その差は開く一方。最後のコテ、ロッシュ・オ・フォーコンの登りでは、 ジュリオ・チッコーネ と ベン・ヒーリー が抜け出し、2位争いはこの二人に絞られました。結局、 ジュリオ・チッコーネ が粘り強いスプリントで ベン・ヒーリー を振り切り、見事2位を獲得したのです。

春から夏、そして秋へ。ロードレースは続く

リエージュ～バストーニュ～リエージュのフィニッシュをもって、春のクラシックシーズンは一つの区切りを迎えました。タデイ・ポガチャルが圧倒的な強さを見せつけた今年の春。彼のパフォーマンスは、今後のレース展開にも大きな影響を与えることでしょう。

そして、いよいよ視線はグランツールへと移ります。特に、5月9日から始まる ジロ・デ・イタリア は、今年の大きな注目ポイントです。 ジュリオ・チッコーネ の地元イタリアでの活躍、そしてタデイ・ポガチャルが ジロ に初出場し、総合優勝を目指すのかどうか。まだ確定ではありませんが、もし彼が ジロ に出てくるとなれば、さらに熱い戦いが繰り広げられることは間違いありません。

春の興奮冷めやらぬまま、サイクルロードレースの物語は続いていきます。皆さんも、どうぞ熱い声援をお願いします。また次のレースでお会いしましょう！