🇫🇷L'Équipe

フォスが第2ステージで圧勝、パテルノステルが首位交代

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雨と落車が荒らしたバルセロナ、女王マリアンヌ・フォスが貫禄の勝利!

前日の個人タイムトライアルで、スタート順を巡る前代未聞の混乱があったブエルタ・ア・エスパーニャ女子。メカニックとして、あの状況で選手を送り出すチームスタッフの心労を思うと胸が痛む。機材の準備は完璧でも、ああいう外部要因で全てが狂う可能性がある。まさにレースは何が起こるか分からない。

そんな騒動の翌日、第2ステージはバルセロナ近郊を巡る99kmの短いコースで行われた。平坦基調とはいえ、油断は禁物。特にこの日は雨が降り、路面は滑りやすかった。メカニックにとっては、タイヤ選択や空気圧の調整が非常に難しいコンディションだ。グリップを確保しつつ、転がり抵抗も考慮しなければならない。選手たちの機材への信頼も、こうした細かい部分で決まる。

スタートから大きな逃げは決まらず、集団は比較的まとまって進んだ。しかし、静かな展開は長く続かなかった。雨で濡れた路面、そしてテクニカルなコーナーやラウンドアバウト(環状交差点)が選手たちに牙を剥く。

女王の貫禄、マリアンヌ・フォスの圧勝劇

レース終盤、残り15kmを切ってから複数の落車が発生し、集団は分断された。雨天時の落車は、機材へのダメージも大きい。フレームやホイールへの衝撃はもちろん、特にディレイラーハンガーやコックピット周りは一発でアウトになることもある。幸い、多くの選手はすぐに復帰できたようだが、中にはタイムを失った選手もいた。

そんな混沌とした状況を、冷静に切り裂いたのがマリアンヌ・フォス(37歳)だった。フィニッシュ手前は緩やかな上りで、しかも曲がりくねったコース。ここで真価を発揮したのが、彼女の経験と圧倒的なスプリント力だ。

集団スプリントに持ち込まれた局面で、マリアンヌ・フォスはライバルたちを文字通り「なぎ倒す」ような加速を見せた。後続を2車身も引き離しての圧勝。今季初勝利が、キャリア通算256勝目という数字にはただただ驚くばかりだ。春先は2位が多かった彼女だが、ここ一番でしっかり勝利を手にした。メカニック視点で見ると、悪条件の中でも機材を完全にコントロールし、路面の状況を読み切った走りはまさに匠の技。彼女のバイクは、きっとこの日最高のパフォーマンスを発揮したことだろう。

荒れた展開が生んだサプライズリーダー

この荒れた展開は、総合争いにも大きな影響を与えた。落車に巻き込まれたり、集団分断で遅れたりする選手が続出。特に、リーダージャージを着ていたエレン・ファンダイク(リドル・トレック)が、集団から遅れてしまい、約30秒を失ったのは大きかった。

その一方で、巧みに落車を回避し、ボーナスタイムも獲得したのがレティツィア・パテルノステルだった。彼女はステージ2位に入り、ボーナスポイントとファンダイクの失速によって、総合リーダージャージを獲得した。これはレティツィア・パテルノステルにとっては嬉しいサプライズとなったに違いない。

落車は他にも、ダブル世界チャンピオンのアンナ・ファンデルブレッヘン(SDワークス)や、キャニオン・スラムのリーダーであるニーヴ・ブラッドバリーを襲った。ファンデルブレッヘンはタイムロスなく済んだようだが、ニーヴ・ブラッドバリーは2分以上を失ってしまった。メカニックとしては、落車した選手のバイクがどれだけダメージを受けているか、すぐにチェックし、修理や交換の判断を下す必要がある。特に総合を狙う選手の場合、ここで機材トラブルが許されないのは言うまでもない。

フランス人選手では、EFエデュケーション・オートリーのセドリーヌ・ケルバオルが9位に入り、健闘を見せた。

機材への試練、そして明日の平坦

今日の雨と落車は、選手だけでなく機材にとっても大きな試練だった。泥や砂がチェーンやギアに噛み込みやすくなるし、ブレーキ面も濡れて効きが悪くなる。メカニックはレース後、バイクの徹底的な洗浄と点検に追われることになるだろう。特に落車したバイクは、フレームのクラックやホイールの歪みなど、入念なチェックが欠かせない。

さて、明日の第3ステージはバルバストロからウエスカまでの130km。再び平坦基調のコースだ。今日の落車による疲労やダメージが残る選手もいるだろう。そして、平坦ステージで鍵となるのは、やはり「風」と「アクシデント」だ。風向きによっては集団がバラバラになる可能性もあるし、ちょっとした不注意や路面の変化で落車が起こることもある。メカニックとしては、選手の体調はもちろん、機材のコンディションを最高の状態に保ち、どんな状況にも対応できるよう準備しておかなければならない。

マリアンヌ・フォスの連勝なるか、それとも新たなスプリンターが台頭するのか?そして、レティツィア・パテルノステルはリーダージャージを守れるのか?波乱含みのブエルタ・ア・エスパーニャ女子、明日も目が離せませんね。皆さんはどう見ましたか?


松田 翔太

松田 翔太

機材メカニックテクノロジー

プロチームのメカニックとして培った経験を持つ機材のスペシャリスト。自転車の微細な振動から素材の声を聴き分け、チームメカニックたちの匠の技に宿る物語を言葉で紡ぐ。近年は台湾や中国の新進気鋭の自転車/パーツメーカーを訪ね歩き、対話を重ねている。世界中のレースで使用される機材の個性を、まるで生き物のように理解し、その魅力を丁寧に読み解いていく。技術の進化と伝統の調和を追求した解説は、機材への深い愛情が伝わると評価が高い。