PFP、再びツールへ

ポーリーヌ・フェラン=プレヴォ、クラシックの激闘を経てヴエルタ・フェミニーナへ 「鉄人」の挑戦とライバルたちの思惑

グランツールを中心にヨーロッパ各地を取材する山田健一です。春のクラシック戦線が終わり、女子ロードレースは早くも次の大きな舞台、ヴエルタ・フェミニーナへと突入しました。今年のクラシックで圧倒的な輝きを放った一人の選手が、間髪入れずにこのスペインのステージレースに挑んでいます。そう、パリ～ルーベでの歴史的な勝利を含む、素晴らしい春を過ごしたポーリーヌ・フェラン=プレヴォです。彼女のこの強行軍が何を意味するのか、そして総合優勝を巡るライバルたちの動向を、現場の空気も交えながら読み解いていきましょう。

クラシック連戦の疲労、そしてヴエルタへの挑戦

バルセロナで開幕したヴエルタ・フェミニーナ。多くの選手がクラシックシーズンを終えて一息つく中、ポーリーヌ・フェラン=プレヴォは短い休息を挟んだだけで再び戦いの場に立ちました。これは、7月末のツール・ド・フランスに向けての重要なステップであると同時に、彼女の「鉄人」ぶりを改めて示すものです。しかし、春のクラシックキャンペーンは、パリ～ルーベでのフランス人女子選手初の勝利という歴史的快挙をはじめ、輝かしい結果を残した一方で、非常に厳しい連戦であったことは間違いありません。

彼女自身も、チーム ヴィスマ・リースアバイク からの声明で「驚くべき期間だったが、同時に非常に厳しい期間でもあった」と語っています。クラシックレースは一発勝負の集中力と瞬発力が求められますが、ステージレースは日々の積み重ねと回復力が鍵となります。春の激闘で消耗した体が、7日間にわたるヴエルタのステージ、特に山頂フィニッシュを含む山岳ステージをどう消化するのか。これは大きな注目点です。彼女は「春は期待は少なく、全てが可能という心境で臨んだ。ヴエルタにも同じ心持ちで臨む」と語っていましたが、その言葉の裏には、未知数への挑戦という意味合いも含まれているように私には聞こえました。

チーム ヴィスマ・リースアバイク の戦略とフォスの視点

ポーリーヌ・フェラン=プレヴォを擁するチーム ヴィスマ・リースアバイク は、このヴエルタ・フェミニーナで明確な野心を抱いています。単にステージ優勝を狙うだけでなく、総合争いにも絡んでいく構えです。チームのベテランであり、自身も有力なステージハンターであるマリアンヌ・フォスは、「ステージ優勝に加えて、ポーリーヌを筆頭に総合でも野心を持っている」と明言しています。

これは、チームとして総合とステージ優勝の機会、この二つのバランスをどう取るかという戦術的な課題を突きつけられることを意味します。ポーリーヌ・フェラン=プレヴォが総合エースとして機能するのか、それともチーム全体で柔軟にチャンスを伺うのか。マリアンヌ・フォスの経験と勝負強さが、チームの戦略遂行において重要な役割を果たすことは間違いないでしょう。チーム ヴィスマ・リースアバイク がどのようにレースをコントロールしていくのか、その手腕に注目が集まります。

牙を剥くFDJ・スエズと強力なライバルたち

しかし、ヴエルタの総合優勝を巡る戦いは、チーム ヴィスマ・リースアバイク とポーリーヌ・フェラン=プレヴォだけのものではありません。最も強力なライバルとして立ちはだかるのが、FDJ・スエズです。昨年の覇者であるDemi ボディネ・フォレリングを筆頭に、ジュリエット・ラブース、Evita エヴィータ・ムジックという強力なトリオを揃えています。特にDemi ボディネ・フォレリングは、この冬にチームに加入し、早くもチームの顔として機能しています。

FDJ・スエズは、静かに総合優勝を狙っていると見られています。彼らの強みは、エースだけでなく周囲を固める選手層の厚さです。標高の高い場所での合宿を積んできたことも、この山岳が多いヴエルタでは大きなアドバンテージとなる可能性があります。さらに、他の有力チームにも動きがあります。2024年のツール覇者であるKatarzyna Newiadoma（キャニオン・スラム）が、若手のニーヴ・ブラッドバリーをサポートする役割に徹すると表明していることや、SDワークスのAnna Van der Breggenが体調不良から万全ではない状況であることなど、ライバルたちの状況は様々です。SDワークスの監督Christian Kosも、「（Anna Van der Breggenで）ヴエルタに勝てると言うのはおそらく大げさだ」と述べつつも、「良い総合順位を目指したい」と現実的な目標を語っています。こうしたライバルたちの思惑が複雑に絡み合い、レース展開はさらに予測不能なものとなるでしょう。

ヴエルタ・フェミニーナ、新たなドラマの幕開け

ポーリーヌ・フェラン=プレヴォの「鉄人」ぶりは健在なのか。春のクラシックで燃焼し尽くした疲労が、ステージレースの後半に影を落とすことはないのか。そして、昨年の覇者Demi ボディネ・フォレリング率いるFDJ・スエズが、その牙をどのように剥くのか。さらに、Anna Van der Breggenの復調具合や、その他の伏兵たちの台頭もあるかもしれません。

ヴエルタ・フェミニーナは、女子ロードレースにおける新たな戦術の探求と、選手たちの人間ドラマを見せてくれるはずです。特に、クラシック巧者がステージレースでどこまで通用するのか、その限界を見る上で、ポーリーヌ・フェラン=プレヴォの走りは非常に興味深いものとなるでしょう。この後の展開に、日本のサイクルロードレースファンの皆さんと共に、大いに注目していきたいと思います。