入手困難！XDS・アスタナの中国製バイクを揃える方法
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プロチームのバイク、その「市販価格」のリアル ～XDS・アスタナ チームのX-Lab AD9を深掘り～
皆さん、こんにちは。プロチームメカニックの松田 翔太です。いつもはレースの現場で選手たちのバイクと向き合っていますが、今日は少し趣向を変えて、皆さんが気になっているであろう「プロが乗るバイクって、結局いくらするの？」という疑問に迫ってみたいと思います。特に今回は、今シーズンからWorldTourに参入した中国ブランド「X-Lab」のバイク、XDS・アスタナ チームが使用するAD9に焦点を当ててみましょう。実はこのバイク、そのままの形では売られていないのですが、パーツを寄せ集めるとおおよその値段が見えてくるんです。「なるほど！」と思っていただける発見があるかもしれませんよ。
UCI規定の裏側で
WorldTourチームが使用する機材には、厳格なUCI規定が適用されます。その一つに、「プロがレースで使用する機材は、一般のサイクリストも購入可能でなければならない」というルールがあるのをご存知でしょうか？これは、プロとアマチュアの間にあまりにも大きな機材格差が生まれるのを防ぐための措置と言えます。しかし、「購入可能」の解釈は様々で、完成車としてそのまま販売されることもあれば、今回のようにフレームセットのみが市販されるケースも少なくありません。XDS・アスタナ チームのX-Lab AD9もまさにこのパターン。チームカラーの完成車は手に入りませんが、フレームセットは販売されているんです。ここに、プロ機材を取り巻くちょっとした「リアル」が隠されています。「へぇ～」と思われた方もいるのではないでしょうか。
パーツを積み上げて見えた価格
では、具体的にXDS・アスタナ チームの選手たち、例えばワウト・プールスやIde Schellingがレースで駆るX-Lab AD9を、市販パーツで再現するといくらになるのでしょうか？まずはフレームセット。これはオンラインで€2,807で手に入ります。フォークとエアロシートポスト込みの価格ですね。カラーはチームカラーではないものの、「Cloud」「Blue Cloud」「Black Silver」が選べます。
次にコンポーネント。チームは信頼のShimano Dura-Ace Di2を使用しています。これを個別で揃えると、ざっと€2,399。これにブレーキホースなどが加わります。ホイールはVision Metron RS。リムハイト45mmと60mmがありますが、今回は安価な45mmで計算すると€3,109です。Visionはコックピットも供給しており、Metron 5D EVOは€698。サドルはPrologoのNago R4 PASがよく使われており、これが€139。
さらに細々としたパーツも積み上げていきます。タイヤはContinental Grand Prix 5000が2本で約€110、バーテープ、ボトルケージ2個、サイクルコンピューターマウント、チューブレスバルブ、シーラントなどなど…。これらを全て合計すると、パーツ代だけで€9,418.98になります。これに自転車店での組み付け工賃が加わると、約€500程度。トータルで約€9,918.98、日本円で言えば150万円弱といったところでしょうか（為替レートによりますが）。「確かに！」と思った方もいるはずです。プロの機材はやはり高価ですが、想像していたよりは「手が届くかも？」と感じた方もいるかもしれません。
WorldTourバイクの中での立ち位置
この約1万ユーロという価格帯、WorldTourで使用されるバイク全体で見ると、実は比較的「安価」な部類に入ります。先日、WorldTourチームのバイク価格に関する興味深い記事を見ましたが、中には2万ユーロを超えるモデルも存在します。そう考えると、XDS・アスタナ チームのX-Lab AD9は、UCI規定を満たしつつ、コストパフォーマンスに優れる選択肢と言えるかもしれません。「そうだったのか！」と驚かれた方もいるのではないでしょうか。これは、中国メーカーが機材開発において急速に力をつけてきている現状を反映しているとも考えられます。かつては欧米ブランド一辺倒だったプロ機材の世界に、新たな風が吹き始めているのです。
機材トレンドの変革か
XDS・アスタナ チームのX-Lab AD9が示すのは、プロレベルのパフォーマンスが、必ずしも超高額な機材でしか実現できないわけではない、という可能性です。もちろん、機材の細部やチームによるチューニング、そして何より選手の能力が勝敗を分けますが、ベースとなる機材の選択肢が広がることは、サイクルロードレース界全体の発展にとっても良い兆候だと私は見ています。今後、中国メーカーがどのような革新的な機材を投入してくるのか、非常に楽しみです。機材スペシャリストとしては、彼らの動向から目が離せません。
次回の記事では、レースの現場で見た機材の「声」について、もう少し踏み込んでお話しできればと思います。お楽しみに！
