ジロ・デ・イタリア順位表

アルプスの猛威、試された脚力

第19ステージは、ビエッラからシャンポルクへと至る、全長約160kmの超山岳コース。獲得標高は驚異の5,000m近くに達し、まさに「タッポーネ（巨大なステージ）」の名にふさわしい一日でした。スタート直後からクローチェ・セッラで脚慣らしをさせると、そこからはコル・ツェコレー（平均勾配7.7%の15.8km）、コル・サン・パンタレオン（平均勾配7.2%の16.5km）、そしてコル・ド・ジュー（平均勾配6.9%の15.3km）と、一級山岳がこれでもかと連なる設定。ツール・ド・フランスのクイーンステージにも匹敵するような、過酷なプロファイルでしたね。

この日の天気は穏やかでしたが、それでも標高の高い峠ではひんやりとした空気が漂い、選手たちの呼吸が白く染まるのが見えました。序盤から形成された逃げ集団は、文字通り命を削るような走りで、一つ一つの峠をクリアしていきます。この時期のアルプスは、その美しさとは裏腹に、選手たちには容赦のない牙を剥く。そんな自然の厳しさを改めて感じさせるステージでした。

プロドムの輝きと山岳ポイントの攻防

この日、最も輝きを放った選手の一人が、デカトロン・AG2Rラモンディアール チームのニコラ・プロドムです。彼は逃げ集団から抜け出し、コル・サン・パンタレオン、コル・ド・ジュー、そしてコル・ツェコレーという三つの主要な山岳をトップで通過。山岳ポイントを大量に獲得するとともに、見事にステージ優勝を飾りました。

彼の走りは、まさに「虎視眈々」という言葉がぴったりでしたね。総合争いから離れた選手たちが、ステージ優勝や山岳賞を狙ってアタックを仕掛けるのはグランツールの常ですが、プロドムは特にそのチャンスをものにする嗅覚が鋭かった。彼にとって、このジロでのステージ優勝はキャリアにおける大きな節目となるでしょう。フランスのメディアも彼の活躍を大きく報じており、今後の彼の成長が非常に楽しみです。山岳賞ジャージ「マリア・アッズーラ」の争いも、これでさらに面白くなりました。

デルトロとカラパス、頂上決戦の予兆

そして、総合争いの行方を左右する決定的な瞬間は、ゴールまで残り7km、最後の登坂アンタニョードで訪れました。EFのリチャル・カラパスが、一気に加速してアタック！ 彼の強烈な加速に、集団は一瞬にしてバラバラになりました。しかし、ここで驚くべき粘りを見せたのが、総合リーダーのイサーク・デルトロ Toroです。彼はカラパスの背後をピタリとマークし、決して離れることはありませんでした。

この二人の一騎打ちのような展開は、まさに手に汗握るものでしたね。「Torito（小さな雄牛）」と称されるデルトロの粘り強さは、現地メディアでも度々話題になっていました。カラパスが何度か揺さぶりをかけても、デルトロは冷静に対応し、最終的には彼が加速してステージ2位を獲得。総合タイム差に変動はなかったものの、この二人の力関係、そしてデルトロのメンタルタフネスが改めて示された瞬間でした。彼の表情には、疲労の奥に確かな自信が宿っているように見えましたね。

最終決戦へ、フィネストレが待つ

第19ステージを終え、総合上位陣のタイム差に大きな変動はありませんでした。これは、イサーク・デルトロ Toroがマリア・ローザを守り抜いたことを意味します。しかし、安心はできません。なぜなら、次の第20ステージには、あの伝説の山岳、フィネストレ峠が待ち構えているからです。

フィネストレは、未舗装のグラベル区間を含む、まさに「地獄の登坂」として知られています。この峠で、過去には多くのドラマが生まれ、総合順位がひっくり返ることも珍しくありませんでした。2025年大会のフィネストレが、果たしてどのようなドラマを生むのか。デルトロにとっては、これまでのリードを守り抜く最後の試練となるでしょうし、ライバルたちにとっては、逆転のチャンスを掴む最後の牙城となるはずです。

このフィネストレでの戦いは、グランツールの歴史に新たな1ページを刻むことになるでしょう。デルトロがピンクのジャージをローマまで持ち帰ることができるのか、あるいは誰かが劇的な逆転劇を演じるのか。私は今からその展開に胸を躍らせています。皆さんも、ぜひ最後まで注目し、この偉大な戦いの目撃者となってください！