アユソ デル・トロ

チーム内での激突！「レッドブル・キロメートル」の真実

ジロ・デ・イタリア第13ステージは、一見すると大きな山場のない平坦基調のステージに見えました。しかし、終盤に設定されたボーナスタイム区間「レッドブル・キロメートル」が、思わぬドラマを生み出したのです。これは単なるタイムボーナスポイントではありません。ゴール手前の登坂区間に設けられたこの場所は、選手たちの瞬発力と戦略眼が問われる、まさに「ミニ・クライム」と言えるでしょう。

この区間で真っ先に仕掛けたのは、フアン・アユソでした。彼はチームメイトであり、総合リーダーであるイサーク・デルトロを振り切り、見事に4秒のボーナスタイムを獲得したのです。チーム内のライバルとはいえ、まさかここで直接対決を挑むとは。アユソのこのアグレッシブな走りは、彼が総合でリーダーの座を虎視眈々と狙っていることの明確な意思表示に他なりません。現地メディアも「チームメイト同士の激しい攻防」と報じ、その一挙手一投足に注目が集まりました。この一瞬の駆け引きが、今後のレース展開にどう影響するのか、へぇ～と唸ってしまいますね。

ヴィチェンツァの登りで明暗分かれる

しかし、レースはまだ終わりません。フアン・アユソが「レッドブル・キロメートル」で先制パンチを浴びせた後、ヴィチェンツァの市街地へと続く最後の登りが、さらなるドラマの舞台となりました。ここではマッズ・ピーダスンやワウト・ファンアールトといった強豪スプリンターたちが猛威を振るいましたが、イサーク・デルトロも負けてはいませんでした。

彼はゴール手前の登りで、リーダー集団から3秒のタイムを奪い、さらにゴール地点で獲得した6秒のボーナスタイムを加えました。これにより、イサーク・デルトロは「レッドブル・キロメートル」で失った4秒を補って余りあるタイムを稼ぎ出し、結果的にこのステージで総合リードを拡大することに成功したのです。このヴィチェンツァの登りでのイサーク・デルトロの走りからは、彼が単なる若手有望株ではない、真の総合リーダーとしての風格が漂っていました。チームメイトに一瞬の隙を見せながらも、最終的にはきっちりと自らの優位を確立する。確かに、強い選手とはこういうものですよね。

ピンクジャージを巡るチーム内の力学

今回のステージを経て、イサーク・デルトロの総合リードはさらに強固なものとなりました。現在、彼はチームメイトのフアン・アユソに38秒差をつけ、アントニオ・ティベリには1分18秒差、アダム・イェーツには1分20秒差、そしてプリモシュ・ログリッチには1分35秒差をつけています。ピサでのタイムトライアルを除けば、彼は常にタイムを稼ぎ続け、その安定感は驚くべきものです。

しかし、注目すべきは、チームメイトであるフアン・アユソとの関係性です。チームには「イゴール・アリエタが『アユソがローマでピンクジャージを着るために働く』と語った」という情報も聞こえてきています。これはチーム内で複数のエースを抱えるUAEチームエミレーツならではの複雑な力学を示唆しています。果たしてチームは、総合リーダーのイサーク・デルトロを全面的にサポートするのか、それともフアン・アユソにもチャンスを与えるのか。この内部の駆け引きは、今後のレース展開に大きな影響を与えるでしょう。そうだったのか！と膝を打つような、チーム内の生々しいドラマが繰り広げられているわけです。

若き才能たちの飽くなき挑戦、そして未来

イサーク・デルトロとフアン・アユソ。この二人の若き才能が、グランツールという最高峰の舞台で総合優勝を争う姿は、日本のサイクルロードレースファンにとっても大きな興奮を与えてくれます。彼らはまだ若く、その成長曲線は計り知れません。今回のジロ・デ・イタリアでの激しいチーム内競争は、彼らがお互いを高め合うための刺激になっているのかもしれません。

もちろん、チームとしては総合優勝が最大の目標であり、最終的には一人のリーダーに絞られることになるでしょう。しかし、この若き二人の火花散る戦いは、今後のグランツールをさらに面白くする要素であることは間違いありません。次なるステージでは、彼らがどのような走りを見せてくれるのか、そしてUAEチームエミレーツがどのような戦略でこの内部競争をマネジメントしていくのか、目が離せません。