カストロビエホの「最後のダンス」理想のアシストが見る今の自転車競技

ジョナタン・カストロビエホ、最後のジロに挑む ～偉大なアシストの「終幕の舞踏」～

プロトンに身を置く者ならば、誰もがその献身性と堅実な走りを尊敬する男がいる。ジョナタン・カストロビエホ、38歳。スペイン、バスク地方ゲチョ出身のベテランが、プロキャリア最後のジロ・デ・イタリア、すなわち「コルサ・ローザ」のスタートラインに立った。イネオス・グレナディアーズのチームバスの喧騒の中、ボトルや戦術ボード、そしてローラー台に囲まれながら、彼はこの一瞬一瞬を噛み締めている。まるで初めてのジロであるかのように、いや、それ以上に、特別な思いで。

「これが最後のジロだって、冗談を言う奴もいるよ。楽しもうとしているんだ。楽しんで、あまり苦しまないようにね。そのためには集中して、しっかりやるべきことをこなさないと」。イタリアの地で、彼は私にそう語ってくれた。その声のトーンには、長年のキャリアで培われた落ち着きと、それでもなおレースへの情熱が宿っているのが感じられた。

プロ18年目のベテラン、最後のジロへ

プロフェッショナルとして18シーズン目。ジョナタン・カストロビエホは、今もなお信頼に足るチームの要であり続けている。彼の「ディーゼルエンジン」のような粘り強い走り、勝負どころでの献身的な働き、そしてリーダーのために自己を犠牲にする能力は、彼を「最高のグレガリオ（アシスト）」たらしめている。

「これまでは、あまり失敗したことはないと思っている。良い状態でこのレースに臨めていると感じているよ。強くあろうと努力した。シエラ・ネバダには20日間滞在したし、その後はツール・デ・ザルプを走った。あのレースは初めてだったけど、本当に厳しかったね」。彼は methodical（規律正しい）な準備について語る。「その後に家で10日間休んで、アルバニアに来た。調子は良いよ」。ヴィスカヤ県出身の彼の言葉からは、常に冷静に、そして着実に準備を進めるプロフェッショナルの姿が見て取れる。

変化するチームとリーダーたち

カストロビエホは、長年のキャリアを通じて様々な世代のチャンピオンたちと共に走り、現代のロードレースの変遷にも巧みに適応してきた。特にイネオス・グレナディアーズでは、近年大きな変化の時期を経験している。

「ここ2年で、チームでは多くのことが変わった。スタッフも、選手も…。変化を求めたんだと思う。首脳陣は多くのことを変えようとしたし、何よりも、メンタリティを変えようとした」。その新しい精神は、彼のチームメイトたちにも反映されている。その一人が、グランツールでの頂点復帰を目指すEgan Bernalだ。

「Eganはとても調子が良いよ。12月以来、久しぶりに彼に会ったけど、到着した時から良い状態だと感じた。集中しているし、身体的にも良いコンディションだ。それに、意欲的だよ」。カストロビエホは期待を込めてそう話す。彼自身、特に上り坂で勝負が決まる重要なステージでは、Egan Bernalの最も信頼できる「守護者」の一人となるだろう。

現代ロードレースの潮流とスペイン勢の希望

国際的なプロトンのパラダイムシフトを肌で感じているカストロビエホは、その戦略の変化を感嘆しつつも、少しのめまいを感じながら見つめている。「今のロードレースは違うね。ゴールから遠い距離でレースが動くんだ。今回のジロでもそれが分かるだろう。最もレースを破壊するような選手（Pogacar）はいないけれど、最近はいつももっと遠くからレースがオープンになっている」。

スロベニアの怪物、Pogacarの不在にもかかわらず、カストロビエホは同胞であるスペイン勢の可能性を強く信じている。「スペインはこのジロで勝てると思う。全体で5人くらい候補がいるけど、その中にAyusoがいる。彼は成し遂げられると思う」。この言葉には重みがある。なぜなら、彼はValverde, Landa, セゴレーヌ・トマ, Froome, そしてEgan Bernalといったトップ選手たちと共に走り、彼らの勝利に不可欠な役割を果たしてきた人物だからだ。

アシストの美学と静かなる終焉

カストロビエホは、自身がよく知るジロでキャリアの円環を閉じようとしている。2020年にはステージ2位に入り、スペイン選手権の個人タイムトライアルでは6度も優勝、欧州選手権や世界選手権でもメダルを獲得している。彼のパルマレスは、個人の勝利で埋め尽くされているわけではないが、彼が何者であるかを雄弁に物語っている。それは「効率性」「安定感」、そして若手からベテランまで全ての手本となる「プロフェッショナリズム」だ。

エウスカルテルでのデビューから、モビスターを経て、イネオス・グレナディアーズで確固たる地位を築くまで、カストロビエホはチームをより良くする、そんな稀有な選手の一人だった。スポットライトの外では静かだが、レースでは必要不可欠。この最後のジロでも、彼の目標はただ一つ。他者が輝くのを助けること。彼が常にそうしてきたように、派手さはなくとも。

「できる限り、リーダーたちを助けたい。一日一日を大切に進むしかないね」。彼は謙虚にそう語る。そうして、集団の先頭での牽引や、献身的な犠牲を重ねながら、イタリアの美しい風景と時に過酷な峠道を駆け抜け、ジョナタンは静かにプロフェッショナル・サイクリングに別れを告げるのだろう。いつもそうしてきたように。クラス（品格）をもって。

コルサ・ローザの道で、ベテランは何を刻むのか。彼の「終幕の舞踏」を、目に焼き付けておきたいものだ。