ヴォクラン、2位は勝利の味

「ポガチャルの後ろでの2位は、完全にクレイジーだ」：ケヴィン・ヴォークラン、勝利に等しい名誉ある走り

ユイの壁頂上、フィニッシュラインを越えたケヴィン・ヴォークランの表情には、疲労の中に確かな手応えと誇りが宿っていました。昨年に続き、この難攻不落の急坂で2位。しかし、その「味」は昨年とは全く異なると彼は語ります。「今回は勝利に等しい」とまで言い切った彼の言葉の裏には、一体どんな思いがあったのでしょうか。欧州の現場から、山田健一が深掘りします。

表彰台の脇で交わされた言葉

レース後、表彰台の脇でプロトコール開始を待つケヴィン・ヴォークランは、誇らしさを隠せない様子でした。隣には、ようやく息を整え始めた勝者、Tadej Pogacarの姿。少し遅れて、3位のTom Pidcockも合流し、キャンピングカーで冷えた体を温め合ったといいます。そこで、アルケア・B&Bホテルズ-B & B Hotelsのケヴィン・ヴォークランは、世界チャンピオンから特別な抱擁を受けました。その抱擁は、単なる労い以上のものを意味していたように私には見えましたね。

23歳のケヴィン・ヴォークランは、このユイの壁で再び歴史を刻むために戦った、と後にその胸中を明かしました。昨年も同じ2位でしたが、あの時はスティーブン・ウィリアムズという、その後あまり目立つことのなかった選手に敗れ、悔しさが大きかったはずです。しかし、今回、彼の言葉は違いました。「今回の2位は勝利に等しい」と彼は断言しました。「だって、目の前にいたのは普通の選手じゃない、Pogacarですよ。彼の勝利数を数えることすらもうできないくらいなのに、その彼に次ぐ2位というのは、本当に大きな意味を持つんです」。

「ポガチャルがいないレースは簡単」？ その真意

少し舌が滑ったのか、「レースに勝つことは、それ自体簡単であることもあり得る」と彼は口にしましたが、すぐに訂正を加えました。「特にPogacarやRemco (Evenepoel)のような選手、そして今日のような『クレイジーな』メンバーがスタートラインにいないレースなら、勝つのはもっと簡単だ、ということです」。つまり、今日のフレーシュ・ワロンヌは、まさにその「クレイジーな」レベルの戦いであり、その中でPogacarに次ぐ2位に入ることの異常なまでの価値を強調したかったのでしょう。「彼の後ろで、他の選手たちの前で2位になるなんて、完全にクレイジーなことなんです」と、彼は興奮気味に語っていました。

プレッシャーと苦悩、そしてチームの支え

彼はまた、ここに至るまでの道のりが決して平坦ではなかったことを吐露しました。苦しい時期に「たくさん苦しんだ」家族や親しい人々に同情を寄せつつ、昨年のツール・ド・フランス（第2ステージ、チェゼナーティコ～ボローニャ間）でのステージ優勝という成功を収めた後、立ち直るのにどれだけ苦労したかを語ってくれました。「昨年の教訓を生かしたんです。振り返らず、自分自身のことだけを考えるべきでした」。

表面的な笑顔の裏で、ケヴィン・ヴォークランはシーズン序盤、厳しい時間を過ごしていました。2024年の成功を「証明」しなければならないという、彼自身にも課した大きなプレッシャーを感じていたのです。ティレーノ～アドリアティコやミラノ～サンレモの後には、自転車に乗っている最中に不安発作を起こすこともあったといいます。「頭を上げられるように、自分自身とたくさん向き合いました。その間ずっと、理学療法士からマッサー、ドクター、コーチまで、チーム全員が僕の後ろについていてくれたんです」。

フレーシュ・ワロンヌが近づくにつれて、彼にのしかかる重圧は増していきました。たとえ今年に入ってすでにベッセージュやペイ・ド・ラ・ロワール・ツールで勝利を挙げていても、彼は「期待されている」と感じていたのです。「この2位を再び取るなんて、信じられないくらいです。でも、ここまで戻ってくるためにやった全ての努力へのご褒美です。特にこのレースと、子供の頃から夢見てきたこのフィニッシュで、というのは」。

ユイの壁、その粘りの戦術

彼は、ユイの壁でのアタックをより遠くから仕掛けることで、この成功を収めるための明確な戦略を持っていたようです。「昨年の教訓を生かしたんです。振り返らず、自分自身のことだけを考えるべきでした」。Pogacarが加速した時、「Remco (Evenepoel)が少し苦しんでいるのを感じた」といいます。フィニッシュまでは長く感じたものの、彼は耐え抜くことに成功しました。ユイの壁での自身のパフォーマンスに、彼は心底驚いているようでしたね。

アラフィリップの轍を踏み、未来へ

もちろん、彼はフレーシュ・ワロンヌの歴代優勝者リストを知っています。ジュリアン・アラフィリップが2015年と2016年に2年連続で2位に入り、その後3度（2018年、2019年、2021年）このレースを制したことも。「それは確かに良いヒントになりますね」と彼は認めました。「もっと練習して、さらに成長し続けたいという気持ちが強くなります」。

昨年、スティーブン・ウィリアムズに次ぐ2位に入ったわずか4日後、リエージュ～バストーニュ～リエージュで期待されながらも、100km地点での落車によりリタイアを余儀なくされたケヴィン・ヴォークラン。彼の夢はその時、あっけなく潰えました。しかし、彼は今週末、再びリエージュのロードに戻ってきます。1年前と同じ精神状態で。「フレーシュ・ワロンヌよりもエネルギーを消耗するレースですが、臆することなく挑みたいです」。

レースの画像

（※画像は原文参照）

次なる舞台、リエージュへの期待

フレーシュ・ワロンヌでのケヴィン・ヴォークランの走りは、彼が単なる有望株から、トップレベルの選手へと成長しつつあることを如実に示しました。特に、精神的な苦境を乗り越え、再びこのレベルで戦えるようになったことは、彼の強靭なメンタリティの証でしょう。リエージュ～バストーニュ～リエージュは、またフレーシュ・ワロンヌとは全く異なるタイプのレースですが、ユイの壁で見せた彼の粘りと戦術眼は、必ずや活きるはずです。昨年のリベンジ、そして更なる飛躍へ。彼の走りに注目せずにはいられませんね。