BKOOL『A tumba abierta』：Yates、Finestreでチームを復活！

フィネストレの魔力、サイモン・イェーツ覚醒の時

2025年ジロ・デ・イタリアのクイーンステージ、第20ステージ。そのハイライトは何と言っても、荒涼としたグラベルが連なるフィネストレ峠でした。この日、メイン集団から飛び出したサイモン・イェーツの走りは、まさに鬼気迫るものがありました。彼はこのフィネストレで、キャリア最高のパフォーマンスを見せたと言っても過言ではないでしょう。

彼は、並み居る強豪たちを置き去りにし、独走態勢を築き上げました。そのアタックは、まるで長い冬眠から覚めた猛獣のようでしたね。「A tumba abierta by BKOOL」のマルコス・ベルナート氏らが語るように、まさに「イェーツがフィネストレでチーム ヴィスマ・リースアバイクを蘇らせた」という表現が的を射ています。この劇的な勝利によって、彼は最終的にジロ・デ・イタリアの総合優勝をほぼ手中に収めたのです。誰もが予想しなかったその展開に、現地メディアも「まさか、イェーツがここまでやるとは！」と驚きを隠せない様子でした。

イサーク・デルトロとリチャル・カラパス、明暗を分けた激闘

しかし、このステージのもう一つの主役は、マリア・ローザを巡るイサーク・デルトロとリチャル・カラパスの息詰まるデュエルでした。最終盤まで総合首位を守っていたイサーク・デルトロにとって、このステージはまさに試練の時。ベテランのリチャル・カラパスが執拗に彼を追い詰め、その牙城を崩しにかかったのです。

デルトロは若くしてグランツールのリーダーを背負う重圧に耐え、素晴らしい走りを見せてきましたが、フィネストレの最後の登り、そしてその後の下りで、ついに力尽きてしまいました。ゴール後、リチャル・カラパスはきっぱりと言い放ちました。「デルトロはジロを失った。うまく走れなかったのだ。」この言葉は、一見冷酷に聞こえるかもしれませんが、グランツールを制するために必要な、非情なまでの「勝者のメンタリティ」を物語っています。カラパスはデルトロの走りを間近で見て、彼の経験不足や、あるいは最終盤のプレッシャーに打ち勝つ精神力の欠如を感じ取っていたのかもしれません。

グランツール終盤戦のドラマと勝者のメンタリティ

グランツールの最終週、特に最終山岳ステージは、単なるフィジカルの勝負だけではありません。何週間にもわたる疲労の蓄積、そして総合優勝への期待とプレッシャーが、選手たちの精神を極限まで追い詰めます。この状況で、いかに冷静に、そして大胆にレースを進められるか。それが真のチャンピオンに求められる資質です。

サイモン・イェーツは、過去に様々なグランツールで苦い経験もしてきましたが、このフィネストレでの走りは、まさにその経験を糧にした「復活劇」でした。チーム ヴィスマ・リースアバイクの戦略、そして彼自身の並外れた精神力が、この奇跡的な逆転劇を可能にしたと言えるでしょう。一方、イサーク・デルトロもまだ若い。この苦い経験は、彼が将来、真のグランツールライダーとして成長するための大きな糧となるはずです。

次なるステージへ、期待を込めて

ジロ・デ・イタリアは、毎年私たちに数々の感動とドラマを与えてくれます。今年のレースも、サイモン・イェーツの劇的な勝利、イサーク・デルトロの悔しさ、そしてリチャル・カラパスのベテランとしての貫禄と、まさに人間ドラマの縮図でした。

このレースで得た経験を胸に、選手たちは次の目標へと向かいます。イサーク・デルトロがこの敗北をどう乗り越え、次のグランツールでどんな走りを見せるのか。そして、サイモン・イェーツは、この勝利を足がかりに、さらなる高みを目指すのか。今から次のグランツールが待ち遠しくてなりません。

サイクルロードレースの奥深さ、そして選手たちの人間ドラマに、これからも目が離せませんね。