クリテリウム・デュ・ドーフィネ 2025: ステージ、プロフィール、注目選手

ツールへの序章、ドーフィネのコース徹底分析

2025年のクリテリウム・デュ・ドーフィネは、全8ステージで総距離1,100km超という、非常にバランスの取れたコース設定となっています。序盤はパンチャーや逃げ集団にチャンスがあり、後半は純粋なクライマーたちが主役となる、まさにツール・ド・フランスの縮図と言えるでしょう。

序盤戦：狡猾な戦略が問われる平坦・丘陵ステージ

第1ステージはドメラからモンリュソンへの195.8km。終盤にコート・ド・ドメラの登坂を3度繰り返すトリッキーなレイアウトで、パンチャータイプの選手や、位置取りに長けた選手が有利です。続く第2ステージ、プレミヤからイソワールへの204.6kmも、長くはないものの三級・四級山岳が連続し、アルプスを前に選手たちの脚を確実に削っていくでしょう。特に終盤のコート・ド・ノネットの登り坂は、総合争いに向けた小さなタイム差を生むかもしれません。

第3ステージはブリオードからシャラントネイへの207.2kmで、今大会最長。6つのカテゴリー山岳が散りばめられ、逃げ集団が成功する可能性が高い一日です。最終盤のコート・デュ・シャトー・ジョーヌを越えてからの下り基調のフィニッシュは、勇敢なアタックを促すことでしょう。

そして、総合争いの最初の大きな節目となるのが第4ステージ、ガンナからサン＝ペライへの17.4kmの個人タイムトライアルです。完全に平坦ではないものの、スペシャリストに有利な緩やかな起伏が続くコースは、タイムトライアル能力の高い選手にとっては大きなアドバンテージとなります。ここで生まれるタイム差が、後の山岳ステージにどう影響するか、注目ですね。

第5ステージはサン＝プリエストからマコンへの183km。スプリンターやクラシックハンターにチャンスがあるステージですが、5つのカテゴリー山岳があり、危険な逃げも形成されやすいでしょう。最後のコート・デ・キャトル・ヴァンを越えてから30km以上平坦が続くため、集団スプリントになるか、それとも逃げ切りが決まるか、チームの戦略が問われる一日となりそうです。

終盤戦：アルプスの激闘、総合争いのクライマックス

いよいよアルプス山岳に突入する第6ステージ、ヴァルセルオーヌからコンブルへの126.7kmは、序盤から激しい展開が予想されます。特にコート・デュ・モン＝サクソネ（5.4km、平均勾配8.7%）は、本格的な山岳テストとなるでしょう。そして、コンブルのフィニッシュへ向かうコート・ド・ラ・クリ（2.7km、平均勾配8.2%）は、総合系選手たちの最初の試金石となるはずです。

そして、ドーフィネのクイーンステージと目されるのが、第7ステージのグラン＝エグブランシュからヴァルムニエ1800への131.6km。マドレーヌ峠、クロワ・ド・フェール峠という二つの超級山岳を越え、ヴァルムニエ1800への頂上フィニッシュという、まさにグランツール級の難易度です。132kmに満たない距離で獲得標高5,000m超という数字は、このステージがどれほど過酷であるかを物語っています。ここで総合のタイム差は大きく変動するでしょう。

最終第8ステージは、ヴァル＝ダルクからモン・スニ高原への133.3km。短いながらも5つの山岳が待ち構え、モン・スニ峠を越えて2,000m以上の標高にある高原でのフィニッシュとなります。総合優勝の行方は、この最終日、最後の登りまで予断を許さない展開になることは確実です。まさに、スタミナと戦略が問われる究極のバトルが繰り広げられるはずです。

頂上決戦！ポガチャル vs ヴィンゲゴー、その背景と戦略

今年のドーフィネの最大の注目は、やはりタデイ・ポガチャルとヨナス・ヴィンゲゴーの直接対決です。昨年のツール・ド・フランスで激しいバトルを繰り広げた二人が、今シーズン初めて同じスタートラインに立つわけですから、期待せずにはいられません。

タデイ・ポガチャルは、今シーズンも圧倒的な強さを見せつけています。ストラーデ・ビアンケ、ロンド・ファン・フラーンデレン、フレッシュ・ワロンヌ、そしてリエージュ～バストーニュ～リエージュと、春のクラシック戦線で次々と勝利を重ね、その勢いは止まるところを知りません。彼のコンディションは最高潮に達していると見ていいでしょう。ドーフィネでは、ツール・ド・フランスに向けての最終調整と、ライバルたちへの威嚇射撃を狙っているはずです。彼の表情には自信が満ち溢れており、ドーフィネでもその圧倒的なパフォーマンスを発揮する可能性が高いと私は見ています。

一方のヨナス・ヴィンゲゴーは、春の落車事故により厳しい時期を過ごしました。しかし、ヴォルタ・アオ・アルガルヴェでの勝利や、パリ～ニースでの健闘を見る限り、その回復は順調に進んでいるようです。パリ～ニースでは、苦しみながらも時折見せた切れ味鋭いアタックは、彼が本来持つレベルの高さを再認識させてくれました。ドーフィネは、彼にとってツールの総合優勝を狙う上で、自身のコンディションを測る、そしてポガチャルとの力の差を確認する絶好の機会となるでしょう。彼はドーフィネを2023年に制しており、このレースでの戦い方を知り尽くしているのも強みです。

この二人の対決は、単なるレースの勝利だけでなく、心理戦の側面も大きい。「あの時のヴィンゲゴーは本調子じゃなかった」「ポガチャルはクラシックで消耗しているはずだ」といった憶測を払拭し、ツールの覇権を巡る本格的な前哨戦が繰り広げられることでしょう。

豪華な脇役たち：エヴェネプール、ファンデルプール、そしてモビスターの思惑

総合優勝の最有力候補がポガチャルとヴィンゲゴーであることは疑いようがありませんが、彼らを脅かす存在、あるいはステージ優勝を狙う豪華な脇役たちにも注目です。

レムコ・エヴェネプールは、ブラバンツ・パイルで復帰戦を勝利で飾り、その才能を改めて見せつけました。しかし、彼がグランツールで総合優勝を狙う上で、いまだに課題とされるのが高山での安定性です。ドーフィネの厳しい山岳ステージで、彼がどこまで食らいつけるか、あるいは新しい戦術を見せてくるか、非常に興味深い点です。彼の果敢なアタックは、レースを大いに活性化させることでしょう。

そして、予測不能な天才、マチュー・ファンデルプールの存在も忘れてはなりません。ミラノ～サンレモ、パリ～ルーベ、E3サクソ・バンク・クラシックと、春のクラシックで圧倒的な強さを見せた彼ですが、MTBでの怪我からの復帰戦となります。彼のコンディションがどこまで戻っているかは未知数ですが、彼が好調であれば、どのステージでも単独アタックや驚異的なスプリントでレースをかき乱す可能性があります。彼が一度スイッチを入れたら、誰も止められない爆発力を持っていますからね。

また、モビスター チームの動きにも注目です。エースのエンリク・マスは、グランツールでの経験豊富なベテランであり、安定したクライミング能力を持っています。そして、ミケル・ランダもまた、山岳での強さを見せる選手です。彼らは総合優勝を狙うというよりは、ステージ優勝やトップ10入り、あるいはツールのためのチーム連携強化を目的としている可能性が高いでしょう。特に、エンリク・マスはドーフィネで良い成績を収め、ツールに向けて弾みをつけたいと考えているはずです。モビスター チームがどのような戦略でレースに臨むのか、チーム内の力学も読み解く楽しみがありますね。

このクリテリウム・デュ・ドーフィネは、単なる調整レースではありません。ツール・ド・フランスの覇権を巡る、最初の心理戦であり、力のぶつかり合いです。各チームの戦術、選手たちのコンディション、そして何よりもポガチャルとヴィンゲゴーの直接対決から目が離せません。今年のツール・ド・フランスが、どれほど歴史的な大会になるか、その序章をこのドーフィネでしっかりと見届けましょう！...